◇序章◇第2話◇
短剣を真上に放り投げた俺はその手をすかさず振り下ろして地面に向かって手のひらを広げて言葉を紡ぐ
「【大地の精よ・我が意に従い・威を阻む・四方の盾を現せ】」
足元に一瞬、魔法陣が浮かび上がるが即座に消失すると同時に襲いかかる男達の目の前に大地の壁が盛り上がる
「土の壁!?」
「こいつ…魔術師か!?」
「怯むな!たかが土の塊だ、このまま殺ってしまえ!」
「「「おう!」」」
(まぁ、力は有り余ってそうだしなぁ…即興の基礎魔術じゃ防げても一撃がせいぜいだろうな)
なので、次の手段を打つべく手を真上に向ける。
そこには先程、放り投げた短剣が空をまだ舞っていた。
「【砕】」
パキン!
「きゃっ!?」
「「「「!?」」」」
短剣は俺の一言で無造作に、鉄製とは思えない呆気ない音を響かせて柄を残して刀身の部分だけが砕け散る。
「【飛散】」
次の言葉に、砕けた刀身が反応し4つの土の壁に一斉に突き刺さるのを見届けると更なる言の葉を次々と紡いでいく。
「これ以上、おかしな真似をさせるんじゃねぇ!」
「おう!」
「魔術師風情が!」
「女もろとも死ね!」
「……っ!!」
余程の恐怖を感じてるのか俺にしがみつき震え続けるお嬢様…?まぁ、貴族の娘なのは間違い無さそうだ。
…なぜ判るか?そりゃあ、だって…
(さっきから良い匂いがする……………
はっ!?いやいや、俺は変態じゃない!至ってノーマルだからな!?)
「…【二種合一】・【変質】・【錬成】・【顕現】」
男達が振り下ろした斧がまず防壁を壊そうとするが、その期待はあっさりと裏切られる事になる。
ガキィィィン!!
「「「は!?」」」
「んだとぉ!?」
「…………ぇ?」
見事に屈強な男達が繰り出した斧による力任せな一撃を俺の即興防壁が簡単に防いだ事に周囲が驚き呆気に取られる…無論、お嬢様も驚いている。
(…さて、今のうちにとりあえず…この連中を大人しくさせようかね)
「……ッ…」
今の俺は魔力がほぼゼロである。
なぜならば……空腹状態だからである。
なので、俺は必要な分の魔力をとあるモノから変換すると4つの盾へ向けて魔術を発動させる。