プロローグ 2
ーーまた、失ってしまった。
守り抜くと誓ったのに彼女を殺させてしまった。俺の弱さが彼女を殺させてしまったんだ。俺の人間としての愚かさが嫉妬と傲慢とその他の欲望が彼女を殺させてしまった。
それは俺が彼女を殺したと一緒だ。
「リリィィィィィィィィィ!!」
悲痛な叫びは澄み切った空に儚く溶け、それが彼女の死を暗に示していた。涙が溢れて止まらない。自分の愚かさに吐き気がする。身体中を悪寒が駆け巡り、歪んだ視界の中で俺は血で真っ赤に染まるくらいに左腕を折れた愛刀で切りつけていた。とにかく自分を傷つけたかった。そうすることで償っているつもりになりたかった。なのに心の痛みは取れなかった。
*
ーー何度泣いただろう。指の感覚はもう無くなっている。空はすっかり日が落ちてきて電灯の一つもないこの草原は元の暗さを取り戻していた。
「 ……俺はどうすればいい」
不意に出た一言。その誰に言ったわけでもない言葉の返事が欲しくて、黙って待っていても在るのは静寂ばかりで、瓦礫の中に彼女を探す。
「君を失ったら俺はどうすればーー」
思わず声が上擦る。枯れたはずの涙が蘇る。
嗚咽も堪えれなくなりそのまま瓦礫の山に倒れた。
「グッ、俺はーー」
疲労と泣き疲れで目が次第にボヤける。その薄れる視界の端、瓦礫の中に一つ輝くものを見つけた。
「これは……」
それはリリィにあげた綺麗な髪飾りだった。
しかしすっかりと疲れていた俺は限界に達しーー
懐かしい景色を見ながら、ゆっくりと瞼を閉じた。