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 俺と暁の一斉射撃。

 拡散する衝撃音。

 それらはビルの壁面に反響し、重音は地を揺らした。

 その弾幕の如き飛び交う無数の武具の中を俺と暁は同時に飛翔する。

 時間にして一瞬。

 音速を超える両者の拳が激突し、衝撃波が空間を歪め、周囲のビル群のガラスを砕いた。

 続けて打ち出された両者の拳や蹴りは全て音を置き去りにした超速の応酬だ。


「ッ!」


 すると突然――俺の頭上に影が落ちる。

 それは暁が周囲に飛び交う砂塵の直刀の中から一刀を掴み取り、振り下ろしたのだ。

 俺の視界は辛うじてそれを捕え、頭より先に体が動く。

 俺は液鋼で具現化した蛮刀を具現化し、それで迎え撃った。

 振り下ろしの直刀と振り上げの蛮刀。

 両者の得物が激突して――均衡。

 互いの体は大きく弾かれ、再び距離が開いた。

 だが俺達は直ぐに動く。


「らッ、ぁぁぁぁッ!」/「ぐッ、ぉぉぉぉッ!」


 横なぎに振るわれる暁の直刀を俺は鋼の左腕で捌き、蛮刀を突刀に変えて突きを放つ。

 それを暁は左腕に生成した盾で防いだ。

 凄まじい空中での攻防。

 そんな中、俺達はほぼ同時に背中に翼を形成。俺は白銀で暁は純白。

 それさえも武器として行使し、打撃とも斬撃とも成り得る攻撃を振るう。

 また俺達はその翼で加速、減速、滞空、旋回と様々な動きを駆使して何度も激突した。

 暁が盾を槍に変化させて突く。その攻撃を捌き損ね、切っ先が俺の胸を掠る。


「ぐッッ!」


 俺の表情が苦悶に歪むも、体に傷はない。鎧が防いでくれた。

 俺は銀翼をはためかせて浮上。暁も白翼を使って後を追う。

 戦場は上空へと移動した。


「――――――ッアァ!」/「――――――ッァア!」


 両者の距離が近づき再び零へ。

 その瞬間、剣山の如き棘を生やした銀翼の振り下ろしと刃羽を逆立てた白翼のなぎ払い。両者の攻撃が交差する。

 振るわれた片翼はしかし互いの片翼に阻まれ粉砕。

 だがそれも直ぐに蘇生し、あぶれた細かな塵や滴も拡散して俺達を囲む形で急停止。

 数秒の間もなく散弾となって撃ち出された。

 空間を裂く純白の砂塵(サンド)に空間を穿つ白銀の液鋼(メタル)

 俺達を中心に逃げ場のない破壊の豪雨が吹き荒れる。

 しかしそれらも互いにぶつかり合い、絡み合うと相殺して大気中に溶けた。

 互いに一発たりとも当たらない。

 そもそも散弾の雨は音速を超え、音を置き去りにする俺達の戦闘における残滓でしか無く、外界に弾かれた過去の異物として戦場に取り残されるしかなかった。

 同時に周囲にこの攻防を視認出来る者もまた居ない。

 本気を出した暁のテレキネシス能力の空間支配力は凄まじく、広範囲に渡り二人以外の時間は止まっている。

 周囲の人間が認識できない零秒時間の間に俺と暁は数十発もの攻防を繰り広げた。

 無論世界では変わらず時間が流れているが、この状況で意識の無い人間が次に目を覚ました時、知らぬ間に時計が進んでいる事に気付く者など居ない。


 俺達は――今まさにこの世界の特異点なって戦っていた。

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