第27話:今回のオレの切り札はどれか? 『ぇ? 僕?』
一方その頃――神崎晴彦は――
「我が渇望の輝きを喰らえ!」
叫びと共に晴彦は光線銃を乱射する。
その姿はさながら昔レトロゲームで一秒間十六ボタン連打を可能にしたという高橋名人もかくやという連射攻撃。しかし――
「それがリア充とBBAの死とは愚かじゃのう」
対峙する黒木翼には全く当たらない。
彼女の本気の移動速度は晴彦の予測の遥か上をいき、闇に紛れた姿は残像さえ残さず、今の声でさえ何処から聞こえてきたのかわからない。
「くっ、悪いか!!」
晴彦は連射をやめ、今度は光線を放射したまま銃を振り回す。
「それでは永遠に私を捉えられぬぞ?」
「――――っ!!?」
直後腹部に走る衝撃。晴彦の体は蹴り上げられ、宙を舞って樹木に激突した。
その際、手にした光線銃を落としてしまう。
「もらった!」
翼は追い打ちとばかりに飛翔。普通に考えればこれは絶好の好機。しかし――
「!!!」
危険――突如そう判断した翼は咄嗟に進行方向を横にずらし、左へ跳ぶ。
瞬間――空を切る音と共に翼の頬を何かが掠った。
続けて彼女の背後、すぐ後ろの樹木にそれは命中する。
それは――銃弾。
晴彦の右手には煙を吹く拳銃が握られていた。
「貴様…………」
晴彦が光線銃を手放したのはブラフ。
そうする事で翼は必ず自分までの最短経路を駆けてくる。
そう判断した晴彦はわざと武器を捨て、その一瞬を狙ったのだ。
もし翼が咄嗟に横に逃げず、そのまま踏み込んでいたのなら、今の一撃は確実に彼女の頭蓋を撃ち抜いていただろう。
晴彦は回避行動によって動きを止めた翼に向けて今度は左手を抜く。その手には新たな武器が――。
「――――っ!?」
翼は背中の翼を大きく広げ、続く攻撃に身構える。
彼女はどんな攻撃をされようと避けきる自信があった。
しかし続く現象は攻撃でも、避ける類のものでもなく――
「にィっ!?」
突如放たれるLED懐中電灯の光に彼女は視界を奪われる。
同時に晴彦は残りの銃弾を全て撃ち切った。
「小賢しィ――ッ!」
しかし翼はそれを急上昇で回避。見えずともそうする事で銃弾は擦りもしない。
「くッ!」
晴彦は毒付き、落とした光線銃を拾いに地を蹴る。
「愚かな」
だが翼にとってそれは笑ってしまう程大きな隙。
光線銃のある場所まではどう足掻いても距離が遠く、彼女が本気を出すまでも無く晴彦より先に銃を抑える事は容易だった。
しかしそこで彼女はある違和感を抱く。
先程の奇策を講じた程の男がこんな愚行を犯すのかと。
そして気付かされる。
この戦闘中に晴彦が最初に落とした筈のスタンロッド。それがなくなっている事に。
ならばそれは一体何処へ消えたのか……。
答えは晴彦の懐の中。
「ほぅ」
晴彦が光線銃を拾いに行った行動もまたブラフ。
彼は光線銃を取りに行く振りをして翼の行動を誘導していたのだ。
本命で隠し持ったスタンロッドの一撃を与える為に。
だがそれを翼は見抜いた。
翼は日傘の石突きで晴彦の背中――心臓の位置に狙いを定める。
その一撃で晴彦を仕留める為の力を込めた。
「中々の強者だった。世が世なら御主も【主人公】になれていたかもしれぬな」
そして今まさにその一撃が放たれようとしたその時――彼女の頭上に巨大な影が差す。
「!!」
反射で彼女が頭上を向くと、その視界は全身緑色の生命体に覆われた――――。
「何ッ!?」
「僕、ヘチマきゅぴ!」
「ヘチッ――なぁっ!?」
それは、この戦いにおける晴彦の真の切札。彼は自宅に武器を取りに戻った際、ワンボックスカーの収納スペースに伏兵としてこのヘチマアザラシを忍ばせていたのだ。そして――
「これは……」
見上げた先――そこには空中浮揚する一機のドローン。ヘチマアザラシはそこから翼目掛け降下してきたのだ。そしてそのドローンを操縦するのは――
『はっはっは――っ。作戦成功ですね♪ 御義父さん』
――ミア。
彼女はこの戦闘が始まった時からヘチマアザラシと共に上空に潜み、機を伺っていた。
ここまでの晴彦の行動は全てこの瞬間の為の布石。
光で視界を奪われた翼が弾丸を避ける為に急上昇する事は最早必然。
そして晴彦が光線銃を取りに向かえば彼女の意識は完全に地上へ向く。
結果、翼は反応が遅れ回避が間に合わず、ヘチマアザラシは翼の体に貼り付く事に成功する。
「くっ、離せぇ!」
翼は身悶えるもヘチマアザラシは彼女の羽をがっちりホールドして離さない。
そればかりかヘチマアザラシは体内に蓄えた大量のペリエを彼女の体に吹きかけた。
「!!?」
それにより自重が増し、身動きも取れない。
「な、ぁ…………っ!」
そうなった彼女は最早落ちる以外に道なく、そしてその先には――
「はははははっ、チェックメ――ィト!」
スタンロットを持った晴彦が。
「~~~~~~~~~~ッッ!!?」
彼の振りぬいた一撃は翼の腹部に炸裂した。




