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「有名になる」っていい意味と悪い意味がある

 僕は棚から絵筆を手に取った。この筆、 水彩画家(アクアレリスト) は確か、魔王軍の幹部全ての固有技能を再現できるとかいうぶっ壊れ性能だったはず。……これは来てしまったか、僕の時代が。そのまま筆を掲げて見上げると、それはなんだかきらきらと輝いているような気がした。


 ……あ、それはそうと。同じ倉庫にあったなら、僕の大剣の場所も知ってたりしないかな? これと大剣があったらもう無敵なのでは。


「あの、 海鳥(シーバード) ってどこにあるか知ってますか?」


『わたくしを手にした最初の一言がそれ……。どこにいるのかしら? あの子のことだし、寝てるんじゃない?』


 知らないらしい。そうか、そういえば最初に手に入れた時もあれって冬眠してたような気がする。……ふむ。


 僕はもう1度、見渡す限り棚が並んでいるごっちゃごちゃの倉庫を見回した。村の半分の面積はさすがに大げさだろうけど……ここから自力で探す自信はないな……。でも仕方ない。探し物を見つけるアイテムとか手に入ることがあったら、また戻って来よう。


 僕は倉庫を出て、そこにいた村長に絵筆を見せそれを貰うとともに。絵筆って武器とは言えなくない? というよくわからない理屈で、もう1つ武器をあらためて貰うことをごり押しで納得してもらった。村長はたぶんめんどくさくなったのか、いいですよ、と頷いてくれてはいたけど。……倉庫の並んでいる武器の中からなぜ僕がまず絵筆を選んだのか、彼は別れ際まで首を捻っていた。





 僕は村を出て、近くにあった人目のない原っぱに移動する。……さて。この筆をまずは使ってみよう。僕はリュックの中にしまっていた 水彩画家(アクアレリスト) を取り出した。


『そうそう。 海鳥(シーバード) より、わたくしに頼りなさいな』


 僕はとりあえず筆を天に掲げた。そういやこれって使ってるとこ見たことないけど、たぶんこんなので発動するんじゃなかろうか。どれがいいだろう。……ビームとか出したいなぁ。ロマンだよね。外れはハサミかな? あの人の固有技能は尖りすぎだ。


 ……しかしいつまで待っても当たり外れ以前に、何も起こらなかった。……使い方が違うのかな?


『あら……? おかしいわね、どうしてかしら』


 いや、合ってるらしい。でも何も起こらないけど。……ひょっとして、振り方が悪いとか?


 えいえい、と何度も筆を空中に向かって一生懸命振っていると、ふと背後から視線を感じたので振り返る。すると、村の子どもたちと思われる集団が、じーっと僕の方を見つめていた。僕も見つめ返すと、彼らも動かず、しばらくお互い見つめ合った時間が流れる。


 まさか、宙に向かって筆を振り回す怪しい人と思われてるのだろうか。……違うんだよ、これは魔王の必殺兵器の発動のための動作なんだよ。僕がそう視線で伝えると、子どもたちはそれをどう解釈したのか、黙って背を向け、一斉に走り去った。


「もしかして、何か誤解されたかもしれませんね」


『おそらく誤解ではないと思うわ』


 





「トアさん!! ちょっと相談したいことがあるんです!!」


「トアでいいですよ、めんどくさいですから。あとあなたには言いたいことがあります。変な客をよこすのは即刻やめてください」


 僕が魔法都市の表通りにある武器屋に飛び込むと、トアがカウンターの上に顎を乗せながら、こちらを恨めし気に睨んできた。……おお、あの3人組はここにちゃんと来たらしい。感心である。道に迷って来れない可能性もあると思ってたからね。……いや今はそれどころではない。


「そんなことより、この筆なんですけど!」


「そんなこと、で片付けられた」


「これはですね! 魔王軍の幹部全ての技能が再現できる筆なんですけど! 全然発動しないんです! ひょっとして壊れてるんでしょうか? もしくはポンコツとか」


 へーよかったですね、とだけ言ってトアは体を起こし、カウンターの上に置かれた筆を確認し始めた。絶対信用してない。


『失礼ね! いえ、でも、そうなのかしら……。確かに昔と比べて全然力が出ないわ……』


 やばい。発言がもう完全に老後のそれだ。魔王様が使った時もこうだったのかな。あの子はきっと能力を相手に解説してから使うタイプの人だから、何も発動しなかったらその場ってすごく気まずくなったんじゃないだろうか。けっこう繊細だからそんなことがあったら彼女は引きずってそう。ふと寝る前に思い出して枕に顔を埋めてしまうのが目に浮かぶ。





「何ですかこれ……どこでこんな……」


 僕が想像の中で魔王様のメンタルをどう回復させるか思案していると、横で絵筆を見たりいじったりしていたトアの顔がだんだん真剣になり。そしてしばらくして顔を上げた。


「わかりました。これはですね。言ってしまえば、自分の記憶を具現化するものです。こんなアイテム、存在するんですね……信じられない……」


 記憶……? あれ、僕が知ってるのとちょっと違うな。僕が首を傾げているのが分かったのか、トアはもう少し詳しく教えてくれる。


「確かに使いこなせば、会ったことのある全ての人の技も、姿も再現できるでしょう」


「……それで、どうして発動しないんですか?」


「起動するには少しの魔力操作がいるみたいですね」


 え、じゃあ魔力扱えない僕って使えないやん。ということはこれはただの絵筆? なら、相手と戦った時に顔に落書きするくらいしか戦闘だと使い道がないんだけど。……うーん、せっかく倉庫から見つけてきたんだけどな……。


 すると、トアが僕の様子を見て、あーしょうがないな、という顔になり。目を閉じながら溜息をついて、絵筆を手に取った。


「……わかりました。めんどくさいですが、何とかしてみせましょう」


「ありがとうございます!」






「……これでどうですか。柄に、呪文を血で書きました。ここに魔力を通すだけで起動のための魔力操作が自動的に起こります」


「え、痛くなかったですかすみません」


「大丈夫です。それで呪文ですが、私がこの世界にいる限り有効と言ってしまっていいでしょう」


 変な言い方だ。いなかったら死んでるじゃない。あ、でもこの人は世界を超えたい人だったか。


「私の血は私の存在がないと力を発揮しませんけど……この世界のどこにいても、この程度の呪文なら余裕で届きますから」


 この程度ができない僕の魔力を扱う才能のなさよ。でもこれで最強じゃないだろうか。……ところがそんな中、再びご本人から異議が唱えられた。


『起動はできるわ。けれど、……完全には動けないかも……』


「ん? どういうことでしょう?」


『本来なら記憶の中から自由に対象を選んで再現できるのだけれど。それは持ち主の魔力回路を利用するから……それで言いにくいけど、あなたに利用できる回路はないみたいなの……』


 なるほど、自由に選択できる機能は凍結、と。僕の魔法の才能の開花待ちということか。……ん?


「……ということはどういう能力なら発動できそうなんですか?」


『わからないわ。だってこれまでそんな持ち主いなかったから』


「……あ、そうですか……そうだ、いいこと思いつきました。ここで試しに使ってみていいですか?」


「即刻出て行ってください」


 冗談だったんだけど、真剣な顔をしたトアに店の外に叩き出された。……ひょっとして僕ならやりかねないと思われたのだろうか。……まさかだよね。まあ、僕は素手でもたぶん魔物には勝てるから、その時に使ってみたらいいか。駄目なら物理で戦うまでよ。




 その後、雪の都に行くついでに祭りの村に再び寄ったら、入り口の門の横にさっきまでなかった張り紙があるのにふと気がついた。なんだろ、と寄っていくと……怪しい3人組の似顔絵と、その横に説明書きが書いてある。なになに。……白昼堂々強盗を行った者、注意。見たら捕まえたのち、村長まで。


 あらら。あいつら指名手配されちゃってるよ、そりゃそうか。早く捕まってお勤めしていただきたい。早く村に平和が訪れるといいね。


 僕がそう村の平穏を祈っていると、村人がやってきて、もう1枚張り紙が追加された。……どれだけこの村は治安が乱れてるの……。どれどれ。……村の近辺の空き地で何かにとりつかれたように筆を振り回す不審者あり。見たら関わらず逃げること。……ふーん。


 似顔絵には、白ワンピースに金髪の少女が描かれていた。いや、この子が原っぱで筆を振り回してたらもっとファンシーに表現してもいいと思う。不審者は言い過ぎだよ。そう僕が憤っていると、なんだか周囲の視線がだんだんこっちに集まっているような雰囲気を感じた。ざわざわとどこか騒がしくなってきている気もする。


 僕は最近の世間の心の狭さに心を痛めつつ、急ぎ足でその場を後にした。







 そして今度こそ、僕は雪の都にやってきた。この街の先にある山の洞窟最深部に 意思(アルカセット) はあったはず。どの建物の屋根もとんがっている街中央の通りを抜け、僕は真っ白な雪に覆われた山の方に向かった。


 ざくざくと自分が雪を踏む音が辺りに響く。一応整備されてるからいいけど、雪道が滑りやすくて困るっていうか、既に何回か転んでるからね。痛くはないんだけど、ちょっと冷たい。さらに転んだ回数を何回か追加しながら、僕は山の中腹にある洞窟の入り口に辿り着く。よし、後は中に入って取ってくるだけ……あれ?


 僕が洞窟の入り口に近づくと、そこは門のようなもので閉鎖されており、3人の兵士が焚火に当たりながら見張りをしていた。……なにこれ?


「あの……この中に入りたいんですけど、どうしたらいいですか?」


「なんだお前!? この雪山でその軽装って頭おかしいのか!?」


 質問にきちんと答えないなんてそっちこそどうなんだろう。そう思いながら自分の服を見下ろすと、そういえばいつものワンピースだった。転んだせいか、所々が泥で汚れている。言われてみたら雪山に登る服ではないかもしれない。道理でちょっと涼しいと思った。


 そして、兵士の中で一番年長っぽい人が、背を屈めて僕に優しく話しかけてくれる。


「お嬢さん、ダンジョンには誰でも入れるわけではないんだ。魔物がうろつく危険な場所だから、君みたいな普通……の子が入らないよう、我々で警備しているんだよ」


 なんか今変な間がなかった? まあでもお勤めご苦労様です。


「そうなんですか、大変ですね……魔物が出てきたりはしないんですか?」


「いや、たまに外に出てくることもあるんだ。それを食い止めるのも我々の仕事だ」


「へえー。なんだか野生動物と間違っちゃったりしそうですね」


「まあ、魔物って言っても色んな姿のやつがいるからな。中には人間そっくりのやつがいた……り……」


 それまで笑顔で話してくれていた兵士のおじさんが、ふと言葉を止めてこちらをじっと見てくる。僕の後ろに何かいるのかな? と思って振り返ってみたけど、別に何もいなかった。そして僕と話しているおじさんの後ろで、兵士2人が何かひそひそと話をし始める。


 ……なんだろ? ひょっとして後ろの2人もそれ初耳だったとか? え、そうなのお前知ってた? みたいな。そうなら反省して今後に生かしてもらいたい。……あれ。でも……。


「じゃあ、人間そっくりの魔物ってどうやって人間と区別するんですか?」


「魔物なら、一見人間でも、明らかにおかしいところがあるもんさ。例えば雪山なのにワンピース一枚で平気そうにしてたり」


「なるほど、そりゃ変ですね」


 ふむふむ、と真面目な顔をして僕はうなずく。でも今わかった。この人は僕を魔物だと勘違いしている。……いや待てよ。勘違いされても別にいいんじゃ? だって魔物なら、中に入れるってことでしょ。……よし。


 やれやれ、と僕は首を振って両手を上にあげた。


「そう、私、実は魔物なんです。隠してましたがバレてしまっては仕方ありませんね。うっかり出てきてしまいました」


「実は……?」

「隠していた……?」

「でも確かにうっかり出てきそう」


 今日なんか3対1多くない? まあいいけど。でも数の暴力って駄目だと思う。そして僕は大人しく門の中に連れて行かれ、洞窟の入り口から中に放り込まれた。






 洞窟の中は外と比べて暖かく、どこか薄明かりが壁全体を覆っていた。……これも魔法なのかな? 中は、いくつもの枝道が広がっていて、天井は高い。でこぼこの岩の壁と狭い枝道の入り口が、ぼんやりした光の中で浮かび上がる洞窟内の風景は幻想的で。しばらくそれを眺めた後、僕は行動を開始する。えーっと、確か最深部は地下17階か……。まあ、1階5分で飛ばせば1時間半で着くな。よし。


 そしてダッシュで通路をいくつか曲がり、地下2階への下り道に差し掛かると、目の前に猿の魔物が現れた。……お、よし。僕はブレーキをかけて、その前で止まる。ふふ、今度こそ、この筆の錆にしてくれるわ。


 僕は筆を天に掲げ、えいや、ととりあえず魔力をめいいっぱい込める。


『そんなにいらないわよ待ちなさい馬鹿待ってやめて』


 すると筆が光って何かが起動するのがわかった。……で? ここからどうするんだろう。


『あら、やっぱりうまく拾えないわ……いえ、最初から順番に引っ張ってくるだけならいけるかしら……』


 なにやらぶつぶつ言っておられる。僕が筆を掲げたままじっとしていると、猿の魔物はなんだか不気味そうにこちらを見た。……いや違うんだよ。もうちょっと待って、これは魔王の必殺武器なんだよ。そう僕が視線で訴えたのが伝わったのか、猿は少し後ずさりするだけで、攻撃しては来なかった。……なんていい奴なんだ。村の子たちより話が分かる。……そしてやがて。


『よし、いけるわよ! 振って!』


 その言葉に従って僕が適当に筆を振ると、ポンと空中から角のあるウサギが出てきて、猿の方に物凄い勢いで突進していった。おおなんか出た! 魔法っぽい! ……でもなんでウサギ?


 そのまま猿の胴体に角で頭突きした後、ウサギは跡形もなく消えた。その場には胴体に穴の開いた猿の死骸だけが残される。……いや、ウサギ強くない? 一撃で死んどるやんけ。まあ僕が殴っても一撃で死ぬんだけど。ただ遠距離攻撃ができるようになったのは大きいよね。


「そういえばなんでウサギだったんですか?」


『一番記憶の中で引っ張ってきやすいのは、戦った敵なの。自由に選べないけれど……今まで実際に戦ったことのある敵を記憶の順番に引っ張ってくることならなんとかできるわ』


 実際に? ならさっきのって塔の前で首が飛んでいったウサギってことか。でもあのウサギって今出たのよりもうちょい小さかったような気が……。でもこれって悪くないかもしれない。なんだかポケモンマスターになった気分。





「いけっ! ポッポ!」


 僕が筆を振ると、目の前に立ちふさがる白いライオンに向かってウサギが現れ、突進していった。ライオンの肩に角を突き刺した後、ウサギは消える。ライオンは身を翻して洞窟の奥に逃げて行った。


「あの……さっきからウサギしか出ないんですけど」


 ウサギって最初の1匹しか倒してないはず。なのにこれで10匹連続でウサギ……。まあ、ライオンにダメージ与えるから十分強いんだけど、他のも見てみたい。


『おかしいわね……これで正しいはずだけれど』


 この台詞今日何度目だろう……。まあいいか。ちょっとこの筆も起きたばっかりで調子が悪いんだろう。温かい目で見守ってあげよう。


 ……でも今気づいてしまった。僕ってシャテさんが思っている、ウサギを次々に射出する存在になってしまったかもしれない。今度会った時にいきなり目の前で10匹連続で射出したらどうなるだろう。きっとびっくりするんじゃないだろうか。そのあと二度と近づいてきてくれない気がするのでしないけど。





 そして地下5階。ダッシュで洞窟内を走っていると、前の方から何やら言い合う声が聞こえてきた。


「もう帰ろうぜ……」


「いやでもあと少しだけ! 頼むよ! だってここまで来たんだぞ!」


 ……なんだろう? 僕が洞窟の壁に隠れ、ひょこっと顔だけ出して覗いてみると、なにやら青年2人が言い争いをしていた。しばらく聞いていると、なんでも彼らは洞窟の奥に隠された財宝がある、という伝説を聞いて来たらしい。あーそうだね。そんなのあったかも。僕は知ってるから直で来たけど。


 しばらく聞いていると、青年のうち1人がふとこちらに目を向けた。……あ。目が合った気がする。


 僕は壁に隠れるのを止め、彼ら2人に会釈しながら姿を現した。それと敵意がないのを示すために、めいいっぱいの営業スマイルでお辞儀する。これで敵意がないことが伝わるはず。


 ところが2人はこっちを見ると急に緊張した面持ちになり、後ずさりした後に背を向けて洞窟の奥に走り去っていった。


 ……うーん、なんだろう……。まるで夜中に森の中で斧を振り回す人にいきなり出くわしたみたいな表情だった。笑顔で挨拶するのってこの世界では良くないの? いやけどルート先輩っていっつも笑顔だし……。


 でもなんか怖がられてたっぽいから、走って追い抜いたら余計駄目かな? 




 僕は隠しルートである秘密の縦穴を使って下の階に降りることにした。ダンジョン攻略時はお互いの思いやりが大切なのだ。


 ところが僕が思いやりとともに、狭い縦穴の急な坂道を通って下の階に降りようとしている途中、急に目の前が真っ暗になった。……ん? 気づかないうちにポケモンバトルに負けたとかじゃないよね?


 まずは手を横に伸ばして壁を伝って下に行こうとするも、何かに阻まれて手が動かせない。……これってあれだわ。ここの裏道って大蛇がいた気がする。なんか丸のみにされてるかもしれん。


 よいしょ、と手足を無理やりバタバタさせると、何かが裂けるような音がして視界に光が戻ってきた。そのまま縦穴を急いで降りた後にさっきいたあたりを見上げると、バラバラになった状態でもまだ大きな大蛇がぐったりとしているのが見える。うわぁ……全然呑まれるの気づかなかった……。




 まあいい、これで地下6階。あとはさっきの人たちに追いつかれる前に……。


 ところが、後ろから誰かの「ひえっ」と言う声が聞こえて僕は振り向いた。……そこには早くも先ほどの青年2人が。そして僕の方を、なんだか井戸から這い出てくる女性を見るような目で見ている。よしもう1回、リベンジで笑いかけてみよう。


「先ほどお会いしましたよね? 別に危害を加えるつもりはありません。怖がらないでください」


 あとは友好の証に途中までならついて行ってあげてもいいか。僕の物理とウサギは強力だよ? 何でもバラバラかつ穴だらけにしてみせようではないか。


「別にご一緒してもいいですし。ほら、お友達になりましょうよ」


 それを聞いて、うわあああ! と大声を上げて2人は去っていった。……ちょっと傷つく。べ、別にいいけど。あとで営業スマイルの練習でもしようかな。でもなんであんな……あ。


 そこで僕は初めて、自分が大蛇の返り血で全身べったべたなことに気がついた。……そうか。突然血みどろの少女から笑いかけられるとか、確かにちょっとホラーだったかもしれない。


 けどまずいね。また不審者として指名手配されてしまうかも……。よし。まずは水を浴びて血を落とさねば。





 その後も、洞窟内の氷が浮いてる清流で水浴びしていたら冒険者に見つかって悲鳴を上げられたり、中ボスだった大鹿の首を蹴り一発でスパンと飛ばしたところを他のパーティーに見られて逃げられたりと、なんだか駄目な方の知名度を上げてしまいながら僕は最深部に到着した。ただ、今になって考えてみると……うん。


 ……あの村の手配書は意外に間違っていなかったのかもしれないなぁ……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 前作と比べるととても攻撃力上がったよなぁ
[一言] 何も間違ってないな
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