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「私は転生した勇者で、かつての仲間を探しています」

勇者(×)

魔族、魔王軍(○)

「え、どなたですか……?」


 目の前で首を傾げている予言者の女の子は、僕の知っているゲームでの姿と同じ。ゲーム内でのこの子は、予言という形で次に進むべき道のヒントをくれたり、戦いでも、人の敵対勢力である魔族の幹部を謎の結界を使って2人も撃破するなど大活躍してくれたり。格好も覚えてる通り、銀色の目と髪の、色素の薄い綺麗な姿のまま。……あれ、でもちょっと大人っぽい? ……気のせいかな? 





 ……でも、たった今友達(僕)に自己紹介されたとは思えない様子である。まるで、初対面みたいな。占いの館内で待っている何人かの客がこっちを見て不思議な顔をしたりして、ちょっと気まずい空気が部屋の中に流れる。


 その、他人でございと言わんばかりの予言者の反応に一瞬怯むけど、そういえば僕って今はゲーム内と姿が違うんだった。そりゃ戸惑われて当然だよね。きちんと説明せねば。


 とりあえずお辞儀をし、自分の胸に手を当てて、僕は笑顔で説明を試みる。


「あ、すみません。今は訳あって以前お会いした時とは全く違う姿なんですけれど」


「……訳あって姿が変わるって何!?」


『何かおかしなこと言いだしたこの子!』


 ゲームと同じく、相変わらず細かいことを気にする人である。あと、副音声がなんだか既にこちらを変な人扱いしてる。周りのざわざわもちょっと大きくなった気がする。……まあ、こっちは気にせず行こう。名前を言えばきっとわかってくれるよね。


「私、サロナです、サロナ。……お元気でした?」


 僕はえへへと笑って、もう一度体調を伺ってみるも、なんだか相手の顔は晴れないままだった。……なんか嫌な予感。


「え。……やっぱり知らない名前……」


「ちょっと、なんでですか!! あんなに仲良かったのに!!」


 思わず、といった感じで出てきた文句とともに僕の足が勝手にその場で足踏みし、石畳の床にちょっぴり亀裂が走る。それを見てひきつった表情のまま、目の前の子は尋ねてきた。


「……あの、ひょっとして私がうっかり思い出せないだけかもしれないので、すみませんが教えてください。いつ……でしたっけ? 私たちが知り合ったのって。ほら、一緒に何した、とかあったら思い出せるかも」






 ……一緒にしたこと。ゲーム内のプレイヤーの敵対勢力だった魔王軍。僕がその魔王軍との決戦に臨む際、自発的に最初から同席してくれた、唯一の仲間。それがこの子だった。……あれ、これ親友と言っても過言ではないんじゃない?


「私と一緒に以前、魔王軍と戦ってくれたでしょう。覚えてないんですか? 私は、親友だと思ってたんですけど」


  ……あ、でもあれは前世の、しかもゲームの中の出来事だから。記憶ってちゃんとこっちに継承されてるんだろうか。されてなかったらどうすればいいんだろう。


「うわぁ。……あ、すみません、そうでしたっけ……」


『ちょっとじゃない! 思いっきり電波な子だった! 魔王軍って、前世って、記憶の継承って何!? やばいやばいやばい』


 あ、これ、継承されてない……。返事してくれた目の前の子の副音声が、僕のことをさっぱり覚えてないというか、おそらく、僕を全く知らないということを教えてくれる。あとそういえば、この子も相手の心が読める系だった。前世とかいう余計な部分を読み取られた気がする。






 ……けど確かに、よく考えてみたらゲーム内とここ、リンクしてるって方がおかしい気も……。だって、僕がかつてやってたゲームってさ。……製作者曰く「NPCは異世界の人の人格をコピーしたものが元になってる」みたいな感じだったはず。本当かは知らないしついでにどうやったかもわからないけど、目の前にゲームと同じ人間がいるってことは、この世界の人を参考にしたって部分は間違いないんだろう。ただ、僕が知り合ったのはゲーム内のコピーの方ってことになるから、原本(?)はそんな記憶もないし、僕のことも知らない、と。まあそうなる。







 ……と、いうことはですよ。向こうから見たら僕って、いきなり現れた見知らぬ人で、一方的に親友だと主張し、挙句の果てには前世がどうとか言い出す。控えめに言っても きが くるっとる ってなっちゃうなこれ。


 ……しまった、余計なことを考えるべきではなかったか。無断でこっちの心を覗き見るなんて、けしからん奴である。僕は自分のことを棚に上げてそんなことを考える。でももはや手遅れ。






「そんなぁ……覚えてないんですか? 一緒に暮らしたりも、してたのに……数少ない仲良しだと、思ってたのに……こんなのあんまりです……。友達だと思ってたのは、私だけだったんですか……?」



 ふと気がつくと、現状を把握するのに忙しい僕を置いて、勝手に自分の体が喋ってて、下を向いた僕の顔はいつの間にか自分の両手に覆われていた。いつの間にか話が進んでる。僕は覚えられていないことについては「そりゃそうやんなぁ」という感じで別に心にダメージを負ったりはしなかったけど、僕の中に約一名。とっても傷ついてるっぽい人がいた。相変わらず友達関係には敏感である。


 その反応を見て、ちょっと遠巻きだった客が、何人か予言者に非難の目を向けた。「一緒に暮らしてたのに他人扱いってこと……?」「あの子、ちょっと可哀想……」というひそひそとした囁きが聞こえる。この予言者の子たぶん何にも悪いことしてないのに。かわいそう。何という風評被害。


「わかりました、後でちゃんと話を聞きますから! とりあえず、仕事が終わるまで待ってもらえますか?夕方にまた来てください」


 焦ったように言う予言者は、周囲の視線とは裏腹に、100%被害者だった。これ以上ここにいても被害は広がる一方な気がしたし、お仕事の邪魔をしてはいけない。この人冷たい人じゃないよ、ってことをフォローしてこの場を去らねば。


「わかりました、ありがとうございます! いつもわがまま聞いてもらって、ごめんなさい」


 その僕のフォローで、かえってお客の皆さんのざわざわが大きくなった気がした。「いつも……?」「どういう関係なんだ……」という声が聞こえる。……なんか、すみません。後でできる範囲は埋め合わせします! 僕は今度こそ急いで出口を目指した。





 そして、表に足早に出ていく僕の後をついてくるロランドは、しみじみと独り言をつぶやく。そういえばこの人全然喋らなかったよね。


「なるほど、相手を加害者にしてしまえば話を優位に進められるというわけか。当てを作るにはここまでしないといけないんだな。見させてもらって、いい勉強になった」


「――僕からそういう変な学習するの、本気でやめて」

とりあえず主人公は床を弁償するべきだと思う


(補足)

主人公はかつてゲームの中で魔王軍のスパイの女の子のNPCを乗っ取る形で、プレイヤーに敵対する立場で諜報活動(?)に勤しんでいました。そして、ゲームを進めていった結末として、スパイの子のNPCの人格が最終的に主人公と一緒に現世に出てきちゃった結果、現在は体に同居している、という状態になっています。本文内で説明入れようと思ったんですが、うまく入れられなかったので、ここで。



(前作を読んでない方向けの3行で分かる前作の設定・結果)

・主人公が日本でやっていたVRゲームのNPCは異世界の人間を元にしているという噂があった

・主人公はゲーム内で魔王軍のスパイの女の子という役割だった

・元人格であるスパイの女の子のNPCの意識は現在ゲームから出て主人公内に同居してる


↑箇条書きにすると意味が分からないですが、前作を書いてたらそういう結果になっちゃいました。これさえ理解していれば何とかなるはず! ……たぶん。

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