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シュート・ザ・ムーン本編



プレアクト

 

RL:今回は、変更が多くて大変だったよ……。

 

PL一同:す、すみません……。

 

RL:のプレイヤーが、デートで欠席とか。

 

りん子のPL: ひどいよね!デートより、ゲームの方が優先だよね!

 

つみれのPL:ええっ!?もうすぐクリスマスだし、りん子ちゃんも、もしデート行きたかったら……。

 

りん子のPL:別に。私は絶対、ゲームが優先だよ!

 

つみれのPL:そ、そっか。

 

RL:のプレイヤーが仕事だから、早めに終わらせて欲しいとか……。

 

凱のPL:す、すんません。

 

RL:まあ、仕事は仕方ないけど。ルーラーって、エライよね(重荷的な意味で)

 

りん子のPL:うん!凄いよね。昨日言ったのに、もう今日出来るんだから!!

 

つみれのPL:本当だよね!どうやってるのか、想像もつかないよー!

 

凱のPL: うん、すごいよ。俺たちのマスターは、サイコーだよ!もう、これくらいで、いいかな?

 

RL:テメー!


つみれのPL:もう、凱はバカじゃないの!

 

凱のPL: スミマセン。ありがとうございます。

 

RL:じゃあ、サクサク行くよー!アクトタイトルは『シュート ザ ムーン』

      



    オープニング(りん子)


夜空に浮かぶ満月が、赤く染まる。ゆらゆらと揺れる炎の柱。粉々に砕かれたアスファルト。

そこにひっくり返った、ボロボロのエアカー。

炎はそこから立ち上っている。真夜中のスラム街。

その、おそらく墜落したのであろうエアカーの隣に、天見りん子が立ちつくしている。

そして、りん子にはクリスがしがみついている。

クリスの片手には望遠鏡。


*クリス 二宮クリス 前回のアクトでりん子と友達になった。父親を失った小学生。


クリス:どうして!?どうしてこんなことに!


クリスが叫ぶと、今まで呆然としていたりん子が我に返る。(そうだ。エアタクシーが何かに撃たれたんだ……。

それで、運転手さんが「ダメだ。コントロール出来ない!」って言ったかと思ったら、落ちちゃったんだ……)

個人用の貸切エアタクシーから、這い出てきた運転手は、何かに気付いて慌てて逃げて行く。

その視線の先を追うと、強盗がこちらに向かって走って来るところだ。


りん子:クリスちゃん。逃げよう!!


クリスの手を引いて、走り出す、りん子。走りながら、ここに来るまでの事を思い出す。

(数ヶ月前、「星を見に行こう」と約束した二人。しかし、N◎VAの市街地はスモッグで、星など見えない。

そこで一人暮らしのりん子の家にお泊まりをして、夜中にエアタクシーの中から星を見る事にしたのだ。

上空からなら、星が見えるかもしれない。そしてレッドゾーンなら、N◎VAの市街地よりも空が綺麗かも知れない。

「そうだ!エアカーでレッドゾーンに行って、星を見よう!」

「上空を走るだけだもん。危なくないよね」)


クリス: どこに行くの、りん子ちゃん?


りん子は咄嗟にイエローゾーンへのゲートに向かっていたが、よく考えればこんな状態で、イエローゾーンに入れて貰えるわけがない。イエローからレッドに出るのは簡単だが、その逆は……。


りん子は、クリスの手を堅く握り直す。


りん子: せっかくここまで来たんだもん、星が見える所を、探そう!一緒に星を見よう!


その後の事は、それから考えればいい。


りん子のPS(個人目標)「アクト終了までクリスを守って、無事星を見る」







    オープニング(凱)


街中に、メロディの新曲と映像が溢れ返っている。今度行われるゲリラライブの宣伝である。

ここの街角にも、あちらでも、大勢のメロディの映像が、同じように歌っている。

N◎VA上空を走るコンドルからも、その様子が見える。


凱: おお……。メロディちゃんがいっぱい……


IANUSを搭載した通常の市民には、何人にも増えたメロディがまるですぐ隣で歌っているかのような質感がある。

しかしウェットの凱には、メロディの姿は、平面的に映っているはずである。


凱: へえ、リアルタイムの映像か。メロディちゃんの新曲サイコー!


しかし当の凱はウェットであることを、全く不便に感じていない様子だ。


すると突然、大勢のメロディの頭が、はじけ飛ぶ。シリコンやプラスチックが、飛び散る。

しかし先頭で歌っていたメロディだけは、撃たれずに残っている。

そのメロディを守るように、一人の人影が立っている。その影が日本刀を振り回すのと同時に、メロディが伏せる。

文字通り一刀両断された銃弾が、ステージ上に転がる。どうやらその人影が日本刀を使って、

もの凄い早さで、弾を切り落としたようだ。

ザザっとノイズが入り、映像はプツリと途絶える。

街中の人々がざわつく。


街の人: すごい演出だったな……。


凱は、呆然とつぶやく。


凱: ほ、ほんとに演出か?もしやメロディちゃんに何か……!


凱のPS「人知れず、メロディを守れ」










    オープニング(つみれ)


中華街の龍淵堂。黒眼鏡のジミー楊の店。

つみれはお茶をご馳走になりながら、楊がする清朝の頃の骨董品の話を、とても興味深げに聞いている。


ジミー楊:これは、天眼鏡というものです。


ジミー楊は、金と黒の精緻な細工が施された、筒のような物を見せる。側面には、龍の透かし彫りがしてある。


つみれ:てんがんきょう?触ってもいいですか?


ジミー楊: どうぞ。遠眼鏡です。当時の貴族が、清の皇帝に献上した物です。

今でしたらサイバーアイにすれば済むことですが、

こういった昔の、人の手で一つずつ作られた業物というのも、いいものですよ。


つみれ:へええ!きれい!覗いてみても、いいですか?


ジミー楊:どうぞ。レプリカですが。


つみれ:レプリカ!こんなに綺麗なのに。本物が見てみたいなあ。


ジミー楊: 本物は、倉庫の方に仕舞ってあります。


つみれ: 本物、見たいなー。


楊が、(今時珍しい)腕時計をちらりと見る。どうやら腕時計には、ポケットロンの機能があるらしい。

誰かから、電話が掛かってきたのだ。声に出さずに思考のみで、会話をしている様子だ。

つみれの目の前で、楊の表情がみるみると変わっていく。

先程までの好々爺の様な顔が、能面のような無表情へと変化していく。

ふいに、大きな音と共に龍淵堂の扉が開くと、真っ黒なカンフー着の男が、血だらけで入ってくる。



血だらけの男:申し訳ありません。楊ターレン…


息を飲むつみれを、楊は静かに手で制する。


ジミー楊:そのまま。


そう言って、自分は店の外へ出て行く。

つみれは、そうっと窓から店の外を覗く。

すると通りには、黒カンフー着と黒スーツの男達、数十人が倒れている。

驚いたつみれは、咄嗟にドアを開けると、楊の元へ駆け寄る。

楊は、まだ息のあったカンフー着の男に、何か注射を打っている。


カンフー着の男: 申し訳ありません。倉庫を荒らされ盗まれました。狙いはひとつ。天眼鏡……!!


つみれは驚いて、楊の顔を見る。楊の口元が小さく動く。


ジミー楊:カーライル・ファミリー。マーダー・インク…。

「カーライル」とは、現在N◎VAの三大レッガー組織の一つである。

「マーダー・インク」とは、そのカーライルの持つ、日本での最精鋭の殺戮部隊である。

そしてジミー楊が所属するのは、同じくN◎VAの三大レッガーの一つである、「三合会トライアド」である。

カーライルと三合会は、もう15年もの間、N◎VAスラムの利権を巡り延々と争っている。

現在も一触即発の状態である。


つみれ:ど……どうして、こんなこと……。


ジミー楊:世界の歴史を紐解けば、……ケンカや戦争には、大義名分が必要です。


黒服達の数十体に及ぶ死体の真ん中で、つみれは唇を震わせながら、ジミー楊に訴える。


つみれ:て、…天眼鏡は、楊さんの大切な宝物です。宝物を盗むなんて、良くないです。

私、楊さんの天眼鏡を取り返して来ます。


ジミー楊:つみれさん。あなた、何を言っているのか分かっているのですか?


つみれ:分かってます!私、楊さんの宝物を取り返します!


つみれのPS「三合会とカーライルの全面抗争を阻止せよ」






      シーン1(凱)


メロディを探して、コンドルで、当て処もなくN◎VA上空を彷徨う凱。

その車体からは、メロディの新曲が、大音量で響く。

天竜*から凱に電話が入る。


*天竜堂一 「熊手の天竜」河渡組本部長補佐オリジナル前回のアクトでケジメしていた。

    

凱: ああ、天竜さん。こないだは、(指を一本なくしちまったみたいで)悪かったな…。

 


天竜:いや。俺が足を引っぱっちまって。ところで、またお前さんに頼みたいことがある。

スラムへ行ってくれ。昔スラムは、河渡連合の稼ぎ口だった。

今じゃスラムはカーライルとトライアドが、幅をきかせてやがる。

あそこは元々河渡のシマだったのに、今の大親分は、スラムを捨てて平気な顔だ。

しかし、うちの社長はスラムも、カーライルやトライアドの好きにさせたくないって、思ってるぜ?

ところで今、カーライルとトライアドが何やらもめているらしい。

桜田門、しっかり引っかき回して、両者が共倒れになればいいな。

ところでさっきから車ン中で流れているのは何なんだ?


凱:なるほどな。わかったよ。ところで曲の事だが、天竜さん。メロディって、知ってるかい?


天竜: メロディ?黄金のメロディのことか?ブラックハウンドの?


凱:いやいや、そうじゃないよ。そいつはメモリーだろ。知らないなら、今から送るよ。

おい、ケンゴ!天竜さんにメロディちゃんの新曲、送ってくれ。


ケンゴ: へーい。


……


凱: ……どうだい?天竜さん?(心理攻撃!)


天竜:おお?おおおお?うおおおおおお!?



凱:だろ!?天竜さんにもメロディちゃんの良さが、分かるかー!!


その後しばらく、電脳の歌姫を讃えるレッガー達の声が、コンドルから響く。

    

シーン1の舞台裏


つみれ情報収集:

天眼鏡について


・聖母殿(神殿)で聞き込み。オリジナルの天眼鏡には、強力な力が籠められている(マジックアイテム相当)。

・つみれが来る前にも、天眼鏡について尋ねてきた男がいた。

・その男の名はヨシア・マンソン。


りん子情報収集:

天体観測できる場所


スラム街の人たちから聞き込み。

・「モーター・コロッセウムにある見張り塔」で、天体観測が出来る。

・スラム街の住人の殆どがコードX(不法居住民)、皆が娯楽に飢えている。




シーン2(つみれ)


シティを車で移動中。突然前後を、SSSシノハラ・セキュリティー・サービスの車に囲まれる。

SSSは民間警察であるが、あまり良い評判は聞かない。

つみれが驚いて呆然と見ていると、SSSの警官は車から降りて来て取り囲み、窓をコツコツと叩く。


SSSの警官:降りてこい、コラァ!

 

つみれの運転手:どうします、社長?このまま発進しますか?


それに気付いたSSSの警官が、運転席のドアを乱暴に開けると、運転手のみぞおちを殴る。


つみれ: きゃー!セバスチャン!


セバスチャン: すみません……社長……。


運転手のセバスチャンは、気絶する。


つみれ: わ、わたし、海幸つみれです。別に何も悪いことしてません。


SSSの警官:トライアドとつるんで、やりたい放題やってんだろ?

そんなだから、これからひどい目に遭わされんだよ。

おとなしくついて来い。


引っ張り出されそうになる、つみれ。


つみれ:あ、あの、これで!


つみれは、バッグの中から数枚のキャッシュを取り出すと、警官達の上にばらまく。(交渉)


SSSの警官: おおーっ!?キャッシュだー!!


つみれ: セバスチャンー!!


SSSの警官達がキャッシュに気を取られた隙に、つみれはセバスチャンをガクガク揺さぶる。

気付いたセバスチャンは車を急発進させ、SSSの車の間隙を縫って走り去る。

どうやらつみれは、誰かに狙われているようだ。



    シーン2の舞台裏

凱 情報収集

メロディのコンサート


・ゲリラライブは、レッドゾーンで行われるようだ。

・主催者は、悪名高いフカネ・ミュージカ。

・場所はレッドゾーンのモーター・コロセウムで、夜間コンサートらしい。




    シーン3(りん子)


スラム街を逃げ回る、りん子とクリス。

追いかけているのは、片手に鉄パイプを持った約40人ものレッドゾーンの人々だ。


スラムの人々:あっちだ!斑鳩第二小学校の制服だー!」


 「俺だ!俺が捕まえるぞー!」

 

 「兄ちゃーん。あいつら捕まえると、いくら貰えるの?シルバー?ゴールド?プラチナ?」


「いーよなー、あいつら太ってて。」


りん子: 太ってないよ!


クリス: り、りん子ちゃん……!もうダメ。走れない……。


大きな望遠鏡を抱えたまま走っていたクリスが、とうとう地面に膝をついてしまう。


りん子:クリスちゃん。おんぶしてあげる!


クリス:ええっ!?だって、りん子ちゃん……。


りん子:大丈夫!早く!


クリスをおんぶして、更に走るりん子。(運動!)


スラムの人:ちくしょーっ!こんなことじゃ、フカネさんに殺される!ガキは良いから荷物を何とかしろー!!



   シーン3の舞台裏




凱 情報収集


モーター・コロッセウム


・モーター・コロッセウムは、レッドゾーンの娯楽場所。

・現代の戦車競技が行われる場所。アラシ(戦車等の重戦闘兵器に乗って戦う)達の集会場。


つみれ情報収集

ヨシア・マンソン


・ヨシア・マンソンは、連続狙撃殺人犯。変質的な、ターゲットへの執念で知られる。

・スタイルは、カブトワリ◎ カブキ●

・マーダー・インクの構成員だが最近、別の組織との「濃厚な接触」があったらしい。




   シーン4(凱)


コンドルの中で、凱のポケットロンに店から連絡が入る。

クラブ<チェリーブロッサム>の従業員兼秘書兼愛人のヒナとアカリからだ。

(二人とも凱所有のエキストラ)


ヒナ:フカネミュージカの裏の顔なんだけど……どうも日本軍と繋がってるみたい。

以前メロディちゃんのネガティブキャンペーンをしたのが、あそこの会社みたいよ。

でも、今回のメロディちゃんのゲリラライブのスポンサーも、フカネミュージカがやるらしいわ。

どういう事なのかしらね?


アカリ:今日のN◎VAスポ見たけど、メロディちゃんはボディガードの神子上みこがみさんにぞっこんらしいわよ。


凱:神子上?誰じゃそりゃー!?(情報収集が終わっていない)


アカリ:その記事を見た天竜さんは、発狂したらしいわよ〜。



   シーン5(つみれ)


つみれは車に乗って事務所へ向かう途中、またもや、前後を車に囲まれて、行く手をふさがれる。

黒塗りの車から、黒服のエージェント達(アメリカ人のようだ)が降りて来て、取り囲む。


黒服の男: (つみれに)さあ、こちらへ。


セバスチャン: 社長!


セバスチャンが果敢に黒服に立ち向かうが、みぞおちを一発殴られてあっけなく気絶する。


りん子:つみれちゃん!


なんといつの間にやら隣の席に乗っていたりん子が、つみれを助けようとする。

まて、あなたは今頃レッドゾーンで星を探している最中なのでは…?(強引に登場判定に成功)


しかし、やはりみぞおちを殴られ、気絶する。(白兵の対抗判定に失敗)


りん子:きゅーっ(がくっ)


つみれ:りん子ちゃんっ!


凱:おお?そこでのびているのは、りん子じゃないか。どうかしたのか?


コンドルを近くに降ろし、凱が歩み寄ってくる。(りん子のコネで登場)

そして、30〜40代位の金髪碧眼のリ−ダー格の男と目が合う。


凱: キース・シュナイダー……!!(不味過ぎるだろルーラー)

   

目の前の男は、カーライルの中でも極めつけに危険な一人である。


つみれ:(凱さん!!)


黒服の男: まあ、まあ、まあ。あなたもこちらへ。


マーダー・インクの黒服達は、キースの指示の元、凱も車へ乗せようとする。


凱:(やべっ!!りん子はっ!?)


しかし、気付くと、さっきまでいたはずのりん子が居なくなっている。


凱: あの小娘何モンだっ!ええっ!?ちぃっ!!仕方ねえな……!!


凱は、自分の腕を押さえに来た黒服達を、手刀で一掃すると、コンドルへと走って戻る。


つみれ:  え。えええーっ!?私はー!?


つみれはズルズルと車に入れられる。車はそのまま浮上し、N◎VAの上空を走る。


つみれ:  (ど、どこに連れてかれちゃうのかな……)


つみれは観念して、エアカーの中で小さくなっている。

エアカーを少し走らせた所で、キース・シュナイダーが、口を開く。

 

キース・シュナイダー:メッセージありマース。アナタはトライアドのフレンドですネ?


奇妙なイントネーションの日本語で、ニコニコと尋ねる。


つみれ:  え。トライアド?ジミー楊さんは、お友達です。とっても、いい人です。


キース・シュナイダー: 我がマスターは、言ってマース。ヨシアは既に、マーダー・インクのメンバーではない、と。


つみれ:え。で、でも、ジミー楊さんは、宝物をマーダー・インクの人に盗まれたって思ってる……お、思ってるんじゃないかな?


キース・シュナイダー: Hmmm、ジミー楊が思うのは、フリーダムでーす。


つみれ: だ、だって、それじゃあ……大戦争に。


キース・シュナイダー: プロブレムありませーん、ラージ・ジャスティス。


エアカーは、元居た場所に、ふわりと着地する。


キース・シュナイダー:  それではヨロシクお伝え下さーい。グッド・ガール。グッド・ラック。

 

黒服達は、今度は丁寧につみれを車から降ろす。

つみれは、カバンから慌てて色紙とサインペンを取り出すと、素早くサインをする。

ふわりと浮き上がって、走り去ろうとするエアカーの開いている窓に向かって、つみれはサインを投げ込む。


つみれ: 私、新人アイドル、海幸つみれです!よろしく、お願いします!


キース・シュナイダー: オオー?


人を食ったようなカーライルの幹部は澄まして笑う。

エアカーを見送ると、路上に立ったまま、つみれはIANUSに繋いで、ニュースを見る。


ニュース・キャスター: …本日、N◎VA市内のボディロットの番号は、……111!!


ボディロットとは、殺人で死んだ人の人数で行う宝くじの事だ。


ニュース・キャスター: 後半に入って伸びてきたのは、ナゾの連続殺人。なんと、大量の48人!

大半が、トライアドのクズどもだ!それから、カーライルの構成員が16人。

しかし、何故かその額には、「こヤツらははカーライルの構成員ではない」との、流暢な彫り込みが!


つみれ:キースの仕業ね、回りくどい事しないで直にジミーにでも言ってくれればいいのに。


つみれは、ニュースを切ると、ジミー楊に電話を掛ける。


ジミー楊: 私だ。


つみれ:つ、つみれです。あの……カーライルのキース・シュナイダーさん……

と、いう人にお会いして……。で、伝言を頼まれました。


ジミー楊: どのような、……伝言を?


つみれ: 「ヨシアは既にマーダー・インクのメンバーではない」って……。


ジミー楊:そうですか。それがカーライルのやり口ですか。


つみれ:あの!キース・シュナイダーさんも、「大義名分」って言ってました!大義名分ってなんですか?


ジミー楊は、電話の向こうで何か考えている様子だ。冷ややかな沈黙が時間を支配する。


ジミー楊:そうですか。あちらが、そういう事でしたら……(悪い顔をして見せるルーラー)


つみれ:待って!!ヨシアっていう人が悪いんだよ!!楊さんの大切な物を盗んだりするから!

私、楊さんの宝物を取り返してくる!だから…(交渉!)


ジミー楊:分かりました。この月が沈むまで、待ちましょう。レッドゾーンは危険です。気をつけて。


つみれ:でも、天眼鏡って、なんなんですか?

もしかして、骨董品以上の価値があるのですか。(マジックアイテムだし)


ジミー楊:皇帝に献上された物で、5千里先まで見渡せると、いいます。

もちろん、我が民族の話ですから、大仰な表現とは、思いますが。



つみれ:楊さんは、……覘いて見たのですか?


ジミー楊:ええ……。世界の中に、吸われるような気がしますよ。



    シーン5の舞台裏


りん子情報収集

フカネミュージカ


・フカネミュージカは、メロディと元々仲が悪かった。電脳アイドルを嫌っていた。

・実態の無いダミー会社で、どこかから資金提供を受けている。

・日本軍(N◎VA軍)が、資金源。


何たるトラップ。知りすぎた情報によって攻撃フラグがたたってしまう


フカネミュージカが、りん子に社会攻撃を仕掛けてくる。

信用で受けきれず、ダメージ発生。

りん子のポケットロンにメールが届く。

「現在料金未払いの為、あなたのポケットロンのアカウントが凍結されました。

チャンネル99はあなたとの契約を一時中断します。」


りん子:エース使ってこんな目にあうなんて、信じられない!


凱の情報収集

凄腕のボディーガード


・メロディのPVで、メロディを守っていた人影、通り名「守り屋 神子上」というボディーガード。

・前回のPV作成時には、PV作成会社が彼を雇っていたが、現在は契約が切れているためメロディは無防備状態。

・スタイルはカタナ◎ カブト● N◎VAスポのメロディがベタ惚れはガセ。


凱:メロディちゃんがこんな奴に惚れる訳ないだろうが、くくっ俺が守って見せるぜ。





シーン6(りん子)


スラム街で、望遠鏡を背負ったクリスを、背負って走り続ける

りん子。そしてそれを追う数百人のスラムの男達。


りん子: もうっ!!なんで、こんなにたくさんの人が、追いかけて来るの!?



スラムの男達: 「ヒャッハーッ!!斑鳩第二小学校の制服だー!」


  「シャドウ・キャットマスコットのついた長いケースがターゲットだろ」


クリス:なんで、大切な望遠鏡なのに。取っちゃやだよ。


そしてついに、百人の男達に、囲まれるりん子とクリス。

そこへ、「例の筒がこっちにあるらしい」という噂を聞きつけたつみれが、セバスチャンの運転する車で、やって来る。(登場判定)

    

つみれ: りん子ちゃんとクリスちゃん!?こんなトコで、なにやってんの!?

 

りん子: つみれちゃんもー!!なんか、よく分かんないんだけど、みんなが私たちを追いかけて来るんだよー!

 

つみれ:  セバスチャン!

 

つみれは、セバスチャンにレトロなオーディオセットを用意して貰う。そして自分は、マイクを握りしめて車の上によじ登る。

    

スラムの男達: 「誰だ?」

 

 「あ。海幸つみれだ」

 

 「かいこうつみれ?知らねーぞ、そんな奴」

    

つみれは神業「プリーズ!」を、「スラムの男達に家に帰って貰う」為に使う。


つみれ: みなさーん。今日は、大勢集まってくれて、ありがとうございまーす。聞いてくださーい!

 

つみれは唯一の持ち歌を、スラムの数百人に向かって熱唱する。

観衆も、手拍子をしながら、盛り上がる。

つみれは歌い終わると、車の中から手を振って挨拶する。

 

つみれ:みんなどうもありがとー!もう、おうちへ、帰ってくださーい。


幸せそうな顔になって引き上げていく暴徒達。


りん子とクリスを乗せて、車はモーター・コロッセウムへと向かう。道中、事情をわいわいと話し合う3人。

 

つみれ: きっと、クリスちゃんのその望遠鏡が、天眼鏡と間違われたんだね……。

 



シーン7(凱)


メロディの警備について聞き出そうと「守り屋」を探す凱だが、どうにも捕まらない。

(必要な情報は全て出揃っており、アクト終了までのリアル時間が押しているため)

そんな折天竜から電話が入る。


天竜: メロディを今、狙っているのは、ヨシヤ・マンソンだ。

奴は、メロディ暗殺を阻止された後、マーダー・インクを出て、メロディを狙ってる。

仕事をジャマされて頭にきたんだな。自分の子飼いを引き連れて、公然とマーダー・インクを出たようだ。

「頭のイカレたマーダー・インクの殺し屋を、河渡が討つ」良いシナリオだな、桜田門?

 

凱:(メロディたんをかばって死ぬなんて、かっこいいな……。)


天竜: レッドゾーンで何があっても、大親分に泥が被らないようにしとくよ。暴れてきな。



どうやら、ヨシヤ・マンソンというイカレた殺し屋の暴走によって、スラム街のレッガー達の危うい均衡が崩れ去り、

全面抗争が勃発しようとしているようだ。

凱、そしてつみれとりん子は、それぞれの思惑を胸に、モーター・コロッセウムへと、集う。




    クライマックス・シーン


真夜中のスラム街。ドラム缶にゴミを詰めて作られたファイアー・ストームが、赤々とモーター・コロッセウムを浮かび上がらせている。

大観衆に埋め尽くされたゲリラ・ライブ会場。この荒々しいスラム街に不似合いな、美しい電脳の歌姫メロディが舞台に立っている。


メロディ:ちょっとワイルドな舞台ですけど、私の歌が皆さんに届くよう頑張ります!!


コンサートが、始まろうとしている。

そのモーター・コロッセウムの外れにある一際高い塔へ、2台の車が到着する。

1台はセバスチャン運転の地上車。つみれ・りん子・クリスが降り立つ。




りん子: クリスちゃん!星が見えるのって、きっとこの塔だよ。行こう!


クリス: う、うん!

 

つみれ: あれ?上の方で、何か音がするよ?(ヨシア・マンソンなんだろうな…)

 

りん子: なんだろう?早く行ってみよう!


3人は塔へ登っていく。そして、もう1台の車は凱を乗せたコンドルだ。

凱は上空から、メロディを狙撃するのに適した場所を探す。


凱:あそこしか、無えな。


舞台がよく見下ろせる場所に、おあつらえ向きの塔が立っている。

りん子達が登っている、塔だ。


凱:ケンゴ!あの、塔の屋根に降ろせ。


ケンゴ:ええっ!?無理っすよ!


凱: もうコンサートが始まっちまった。下から登ったんじゃ、間に合わねえ。

とにかく、あの塔のてっぺんに行け。俺が飛び降りる!


ケンゴ:だ、大丈夫っすか、兄貴!?


凱は、コンドルの扉を開け、塔の屋根に飛び乗る。

常人なら大怪我は避けられない状況だが、凱は技能「鉄身」で受け、

ゴロゴロと転がって衝撃を消し、ノーダメージで屋根に着地する。


そのまま下のフロアの大きく開かれた窓枠から、塔の中へと進入する。

そこには、大口径の対物ライフルを手にした、見知らぬ白いロングコートの男が居る。

対物ライフルには古式ゆかしい遠眼鏡がマウントされている。


凱:てめえ!こんな所で、そんなものを下に向けて誰に何をしてやがる!


そこへ、つみれ・りん子・クリスも到着する。ただならぬ雰囲気に、りん子は咄嗟にカメラを回す。

招かれざる客に、男は舌打ちをし、誰かに連絡を入れている。


ライフルの男: 俺だ。邪魔が入った。プランBに切り替える。


すると上空に光学迷彩でカモフラージュされて待機していたヘリコプターが現れる。

男は、そのヘリコプターへワイヤーフックで素早く飛び移る。


りん子:逃げられないんだからねっ


りん子が神業「天変地異」を、ヘリコプター破壊の為に使用する。

暗闇の中、安定している上空の電離層を貫いて謎のカミナリが一閃!

ヘリコプターのメインローターに直撃する。


ヘリの操縦手:うわーだめだー


回転しながら落ちていくヘリコプターから、男はひらりと脱出し、塔へと戻って来る。

塔の下ではヘリが爆発炎上。


凱が神業「真実」を使用する。


凱:てめえ、ヨシヤ・マンソンだな?てめえ、メロディちゃんに何する気だ!なんでこんな事する!?


ヨシヤ・マンソン: 元々の依頼者は、フカネミュージカの社長だがな。今は、俺の趣味だ。


りん子:全部録ってるからね、カメラも録音機も全部電源入れるって、登場の時言ってるからねっ


言い終わるや、ヨシヤ・マンソンはライフルを構え、神業「とどめの一撃」を、凱の脳天に向かって放つ。


ヨシヤ・マンソン: お前が死んでいるのが天眼鏡に既に映っているぞ。


銃弾が凱の頭部を貫き、脳漿を飛び散らす…?


凱:ああ?何しやがんだ!こんなもんで俺が死ぬかよ。


凱が神業「黄泉還り」を使用。凱は復活する。

飛び散ったのは、脳漿ではなく鮮血だ。

侵入角が奇跡的に良かったのか、頭蓋骨が規格外なのか、頭蓋骨内の容量が少なかったのか。


クリス:きゃーっっっ!!!おっお星さまがまわってる(くたっ)


クリスは、血塗れの凱を見て悲鳴をあげて失神する。


つみれ:クリスちゃんが意識不明か。今がチャンスかも。

    

つみれが神業「ファイト!」を使用して、凱の神業「真実」を増やす。


つみれ:凱さんお願い、天眼鏡をなんで盗んだのか聞いて!あの人が鉄砲に付けているヤツだよ!


凱が再び神業「真実」を使用。


凱:ああんっ?何で天眼鏡?なんか盗んだんだ?


ヨシヤ・マンソン:この数百年に一度の魔道具は、俺のような者が持つにふさわしい。

軌道上で安穏としている愚者ハイランダー共でさえも、この俺の手から逃げられなくなる。

これだけのものを仕舞い込んでいるだけのトライアドは能無しぞろいだ。

俺をサイコ扱いしたカーライルと同じくらいにな!

見ていろ、今夜これで電脳の歌姫の作り物の頭を吹き飛ばして、

何が詰まっているか、N◎VA中に見せつけてやるぜ。


つみれ:(小物っぽいなあ…)


ここでカットシーンに突入。



カットシーン・ターン1


遠距離からカットシーンスタート。


凱:待て待て待て、近寄るまでこっちは何も出来ないぜ。


りん子:ダメ、スートが無くて取れる行動がないよ。


つみれ:武装しているのが私だけ?銃さんが居てくれれば……!


セットアップでりん子が「水雲(負)」に失敗して手を回す。


一方のヨシヤ・マンソンは…


新手のヘリコプターが、次々にやって来る。およそ100名のレッガートループだ。

ワイヤーランチャを塔に打ち込み、次々に降下してくる様子だ。


*この段階でトループ召集の技能が実装されていなかったため、

ヨシヤは神業1つ(チャイ)を潰してトループ招集している。


凱:おい、不味すぎるぞ。これは絶対に勝てねーぞ。誰かなんか神業ないのか?


りん子:私はまだまだいけるよ。まずは「暴露」からっ、

でも今回チャンネル99のコネをつぶされているんだから…そうだ、アルファ・オメガちゃんに頼もう。


一同:ええっ!!



りん子が神業「暴露」を使用する。


モーター・コロシアムのライブ会場上空に、いきなり大画面が現れる。

ライブ会場の大観衆が、歌っているメロディも何事かと一斉に見上げる。


りん子:臨時こどもニュースです。歌姫メロディさんの暗殺計画が、今明らかに!

そして、この暗殺計画の実行犯は、最近のスラムの抗争の元凶となっている、この男でしたー!!

先程のヨシヤ・マンソンのセリフが、大写しで全て流れる。


メロディのライブは中断し、ニュースを見ていた観衆達がどよめく。


凱:待て、俺までメロディちゃんに見られちまう。「不可触」を使うぜ。りん子、俺は映すなよ。


りん子:オッケー!その場で編集しちゃうよ


りん子:そしてヨシヤ・マンソンに協力している組織があるのでしょうか、

大量のトループまでもがあらわれています。


トループ:了解「証拠を残さず」撤収します。


100名のトループ達は、どこかから連絡を受け、一斉に撤収していく。

言うまでもなく、彼らはフカネ・ミュージカの者達だったようだ。ヨシアは見捨てられたのだ。


アルファ・オメガ:臨時こどもニュースは以上です。提供は、アルファ・オメガでした☆


幼女の姿を取った超AIのウィンクと共に割り込み放送は終わり、ライブモニターにはメロディの姿が戻ってくる。

暗殺計画が明らかになった今でもメロディのライブを中断させないフカネのスタッフたち。

その思惑を知ってか知らずかメロディは歌い続ける。


凱:さすがはメロディちゃんだぜ。さっ戦闘のけりをつけるぜ。


カットシーン再開


ヨシヤ・マンソン:この、クソガキがー!!


取り繕ったクールさも失い、怒り狂ったヨシヤ・マンソンが、りん子に向かって、ライフルを向ける。

    

ヨシヤ・マンソン:「とどめの一撃!!!」


りん子:ぎゃーっっ!!


しかし、りん子が神業「天罰」を使用する。常に軌道上からりん子を見守る衛星から放たれた光が、

ヨシヤの放った弾を粉々に分解し、天上人には傷一つ付かない。


凱:くそっ!子どもに向かって!しかし、まだ手刀が届かないっ。


凱はヨシヤとの距離を詰める。


自分に銃口を向ける相手に向かって、りん子も前に出る。


つみれ:これで神業3つ終わったよね。ううっ、銃さんさえいればケリがつけられるのに。


つみれも、護身用の拳銃MP21を用意しながらあとへ続く。


    ターン2   


セットアップで、りん子が技能「水雲(負)」を使用。ヨシヤのコンバットスピードを、大幅におとす。

凱は近距離まで近付き、精神攻撃を行うが、防御される。


凱:良いんだよ次だ、次からようやく殴れる。


続いてりん子の精神攻撃。


りん子: さっきあなたが言ってた事、全部放送しちゃったんだからね!

仲間も逃げちゃったし、どうせもうすぐ、捕まっちゃうよ!

 

ヨシアはスートがない為、山札から引かざるを得ない上、失敗。

りん子はダメージチャートを確認しながら、決定的な一撃を狙う。


ヨシヤ・マンソン:俺にはもう何もない、必殺の業は敵を殺せず、

カーライルもトライアドもフカネも俺を逃がす訳もない。はは。


ヨシヤ・マンソンは、「士気喪失」状態となって、戦闘をやめる。

虚ろな怯えた顔で影の中に白いコートは消えていった。



エンディング


安心する間もなく、凄まじい轟音と共に、全身に激しい衝撃が走る。

先のフカネミュージカのトループが、塔を爆破したようだ。


ヨシヤのいた方向に大きな瓦礫が落ちる。

何かが潰れ砕ける音と共につみれの足元に魔道具が転がってくる。


つみれ:天眼鏡ね、傷一つ付いていない。


一方凱は急いでケンゴに連絡を入れる。


    

凱:ケンゴ。急いでくれ!塔が崩れる。コンドルを回してくれ。


幸いコンドルは、凱を降ろした後、すぐ近くを旋回していたようだ。


ケンゴ: 兄貴!待たせました。


凱:お前らも早く乗れ!


轟々と崩れゆく塔から、慌てて脱出する4人。暗闇の中に立ち上る土煙を、コンドルの中からしばし呆然と見つめる。

最初に我に返った凱が、天竜に連絡をする。

    

凱:よお。こっちは、片が付いたぜ。


天竜:はは。もうちょっと、引っかき回してほしかったけどな。これじゃ本当に殺し屋一人始末しただけだ。

そんなことより、もうちょい見せろよ!メロディちゃんのライブだぜ!

今回はリアルタイム配信がないんだからな。


凱:ヒュー。こっちはサイコーだぜ。ケンゴ。カメラで撮って、天竜さんに送ってくれ。

 

ケンゴ:ヘイ、兄貴!

 

ひとしきり天竜と、メロディの話で盛り上がった後、凱は電話を切る。

    

凱:ところでりん子、お前ら一体何やってんだ。何しに、こんなとこまで来たんだ?


りん子:あっ、そうだ。星を見に来たんだ。


凱:星?なんだそりゃ。見たけりゃ、こっから見ろよ。


りん子:やった!


凱:お前、今、いくら持ってんだ?


りん子:えええ?あんまり持ってないよ。

 

ポケットの中をこっそり確認しながら、りん子が答える。

    

凱:あり金、全部出しな。そうすりゃ、もっとよく見える場所まで、二人とも連れてってやるぜ。

    

りん子:じゃあ、はい。……そうだ!お財布返してよ!


凱:財布?ああ、これか。ほらよ。また、しっかり貯めてくれよ。


凱は持っていたインコの形をした財布(前のアクトの「見上げてごらん~」で取り上げた)を、

りん子の差し出したシルバー数枚と交換する。

りん子の考える「あんまり持ってない」金額を知り、ほくそ笑む凱。そのシルバーを、ケンゴにそのまま渡す。


凱:よっしゃあ!!ケンゴ、高度を上げろ!今夜はこれで、パーッと飲むぞー!若い連中や女たちに連絡しとけー!


りん子:クリスちゃん、星を見よう!


クリス:う、うん!


クリスは事の展開のめまぐるしさに目を白黒させながらも、この長い一晩中背負っていた父の形見の望遠鏡を覗きこむ。


クリス:お父さん、とってもきれいだよ。りん子ちゃん今夜は本当にありがとう。


一方、つみれのポケットロンにはジミー楊から電話が入る。


つみれ:楊さん。私、天眼鏡を取り返しました!


ジミー楊:うまくやってくれたみたいですね。


さすが犯罪結社の幹部、情報が早い。


つみれ:楊さんの大切な物を、取り返せて良かった!ああ、天眼鏡、やっぱり素敵ですね。

でも天眼鏡のような宝物は、仕舞っておくのが一番ですね。その前に、一回だけ覗いてみてもいいですか?


ジミー楊:ええ、いいですよ。……何が見えますかな?


つみれは電話を切ると、月を天眼鏡で覗く。月を見上げたはずのつみれは、

同時に、眼前いっぱいに広がる心象風景を見ることになる。

それは、「上空から、N◎VAを見下ろす自分。小さい粒々の、人々。誰が誰とも見分けのつかない、大勢のN◎VA市民。」


つみれ:(わああ、あの人達皆が、私のことを大好きで、私の歌を買ってくれるんだあ……)


凱:おお?楽しそうだな?何が、見えるんだ?


凱に声を掛けられて、我に返るつみれ。自分の黒い欲望に気付き、心臓が早鐘を打つ。


つみれ:なななななんでもないよ!


凱:ちょっと、俺にも見せろよ。


つみれ:ダ、ダメだよ。大切なんだから。それに、見ない方が良いよ……。


モーター・コロッセウムの方では、この騒ぎで一旦中断していたメロディのライブが、再び始まっている。

大ノリの観衆を更に煽るようにアップテンポなイントロが流れる。


メロディ:わたし、今夜はまだまだ歌いますっ。そしてこの曲を、あの月に捧げます!


曲に合わせてメロディの指さす先には、月。

それとも、星を目指して高く高く上ってゆく、凱のコンドルか……。


シュート・ザ・ムーン完




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