第0話『降誕』
どうも作者の足利士郎です。
最近、不意にファンタジー物が執筆したくなり投稿しました。
1話あたりの字数は少なめになってしまうとは思いますが私のポンコツスペックでは長い字数の投稿は無理なので予めご了承ください。
さて、物語を始めよう。
舞台は剣と魔法と幻想が行き交う世界“ファンタジア”……。
物語の主役となるのは異世界から召喚された少年やファンタジアに転生した反則的な能力を持って生まれた人間…………ではなく、内に強大な力を持つ無垢なる化外の化け物。
始まりは辺境の地にあるルーデンスの森の奥深く。
かくて舞台も準備も整った。
では始めよう。
神が盲愛する一匹の化け物の物語を。
~ルーデンスの森~
ルーデンスの森……そこは幻想が息吹く世界“ファンタジア”において辺境と言っても差し支えの無い場所だ。
広大な広さを誇るこの森は未だに人の手が入っておらず原始の自然がそのままに息づいている。
そんな人里離れた薄暗い森の中に一つの巨大なドス黒い球体がドクンドクンと脈動しながら空中で静かに鼓動を繰り返していた。
この球体がいつから此処にあったのかは定かでは無い。
だが、この場所には不思議と森に住まう筈の昆虫や動物の影はまるで無かった。
何故なら皆、このドス黒い球体が放つ異質な空気を嫌い近付かないのだ。
ボコボゴボゴボゴッ……。
不意にボコボゴという水中で酸素の泡が出来る際に聞こえる様な音を奏でながら静かに脈動していた筈の巨大なドス黒い球体に変化が訪れる。
ドス黒い球体の中で不気味な“何か”が蠢いているのだ。
やがてその“何か”は球体の外へと出ようと球体の内部から大きく動き始めた。
そして。
僅かな時間の経過と共に遂にソレは内側からドス黒い球体を破壊し、球体の内部に圧縮されていた黒い液体を掻き分けて、その肉体が今まさに外界へとその姿を現した。
“ソレ”は2,5メートル近くもある巨駆で重厚な鋼鉄の様な漆黒の肌に巨大な翼手目の翼を持ち合わせ、その瞳は良質なルビーと見紛う程の赤い瞳をしていた。
更にソレの両腕と尾の先端部には鋭利な刃が生えており、おまけに人間同様に二足歩行で大地に立つ。
その異様な容姿はまさに伝承や文献にたびたび登場する悪魔そのもの。
かくて外界へとその姿を現した“ソレ”は早速、辺りをキョロキョロと周囲を見渡しながら思考する。
「ココ…………ドコ?」
顔に口と呼べるモノが無い筈のソレが何処からか言葉足らずな片言を発する。
「……ボク……ダレ?」
それはまるで迷子の子供。
生まれたばかりの彼は自分が何者なのか此処は何処なのか……何一つとして判らない彼は不安げになりながらも片言を発しながら再び辺りを見渡す。
当然ながら周囲には人気は無く、昆虫や動物の鳴き声一つすら聞こえない。
「………………」
この場に文字どおり自分以外だれも居ない事を理解した彼は仕方無く恐る恐る暗がりなルーデンスの森を歩き出した。
暗闇の森を1人歩く異形の悪魔……。
そんな彼に未だ名は無い。
※更新は不定期となりますが出来うる限り早く更新していきたいと考えています。