不穏な緑の不吉
ばたん、とドアが閉まる。
あたしと一緒に見送ったレイムがドアの鍵を閉め、そのままあたしの腕を掴んで引っ張った。
「んんん!?な、何なんだレイム?」
『ちょっと、きてください。じゅうようなほうこくがあって。というより、なつねさんはしっておいたほうがいいんじゃないかと』
後ろ向きに連れて行かれたあたしは、リビングの椅子にレイムと向かい合って座った。
『あの、けいとさんが、ほそながいケースをもっていたじゃないですか』
「ああ、うん持ってたね。それが?」
『えっとですね。その、なんというか、ぼく、にもつをはこぶときに、そのケースがいようにおもかったんですね。てつのかたまりがはいってるみたいなかんじで』
「ほうほう」
『それで、その、ぼく、えっと、あの……』
早よ言わんかい。まどろっこしいじゃないか。
『その……きになって、なかみを、ですね、ちょっと、その……』
あー、分かった。そういう事ね。つまり、
見たのねあなたは。
『す、すいませんっ!かってに、その……あの』
ていうか、さっきから『その』が異様に多いな。癖か?
「いやいや、良いよ別に。あたしが言う事じゃないけどさ、実を言えばあたしもすっごく見たかったから。学校じゃ全く見せてくれなくてね。……で、何だったの?」
『いまちょっとこうかいしてます』
いやもうそれは良いから。見た事については何とも思ってないから早く教えてくれ。
『そうじゃないんです。よのなかのうらがわを、のぞいてしまったようなきぶんになってしまってですね』
「それは、中身を見たから?」
『そうです。その、ほんとうにてつのかたまりだったもので』
鉄の塊?なんだ、鉄を持ち歩いているのか?あんな重い物を?
『いや、どうぐでしたよ、れっきとした。けど……そうだ、ちょっとおききしますけど、けいとさんって、べつにけいさつにめをつけられてるとかじゃないんですよね?』
いや、違うけど。
え、何だその質問は。
まるで、恵人が犯罪者で、捕まってないのが奇跡みたいな。
そんな事って……あ、ま、まさか!
まさか、あの予想が当たったとでも!?あたしの想像が?
『もうわかってるとおもいますからいいますけど……あれ……どうみても銃ですよ』
「……!!」
……うわぁ出た。大ビンゴ。
『たぶんあれはえんきょりようのそげきじゅうです。でも、みたことないかたちでした』
そりゃそうだ。見た事あるって方が驚くわ。
『あくまで銃として、ですけど……。その、なんだろう、かいぞうしたかんじでした。ふしぜん、というか。たぶん、しゃていきょりがながいんだとおもいます』
何故そこまで分かる。実戦経験者か?
『よそうですよ、よそうです。けどあれ……に、さんキロは、とぶんじゃないかと』
それは長いのか?
生憎常識人のあたしには全く分からないのだが。
『それにですね。ぼく、みちゃったんですよ』心霊現象を見た様な口調で、レイムが呟いた。『あのケースのそこに、銃じゃないものを、みちゃったんですけど』
ま、まだ入ってたのか。何だ何だ。
『あの、あれ……どこからどうみても、手榴弾だったんですけど』
「……はい?」
思わず訊きかえしてしまった。
何だって?
手榴弾、だって!?
『どうしましょう』
「……………………、……。」
しっ……知るかぁ―――――!!!
狙撃銃と手榴弾を持った中学一年生の対処法なんて、今日び学校でもやらんわ。
そもそも、日本には銃刀法という物があるでしょーが。
完全無視じゃないっすか。
大丈夫か恵人!?
……何だか、雲行きが妖しくなってきたなぁ。