泣く子の仇 〈其の2〉
前回の続きですw
キラリと光る藤桜刀。その切っ先を当てられ、さすがに地頭も動揺している。
「……なにをするのだ……?」
「わかんない?これ、おもちゃじゃないんだけど?」
少し力を加える……厚い脂肪にくるまれた首に赤い点ができた。
「ひっ!」
地頭が後ろに逃げようとした。が、自分が並ばせた武装兵に行く手を阻まれた。
「命だけは……お助けをぉ」
「情けねぇ声出すな、気持ち悪い。お前はそういって命乞いした人間を何人殺してんだよ?あ?」
「すみません!どうかお許しをぉ……私の財産をすべて貴方様のものにしてください!もうそんなことは二度としませんから!お許しを!」
にやっと笑う。
「ホントか?本当に財産……まぁ俺が欲しいのは食料だけど全部くれる?」
こくっこくっと首を振る。がくがくなっている。
「そうかぁ~、みんなどうせ来てるんだろ?出てこいよ」
「へ?」
颯介の声を聞いてぞろぞろと村人が出てきた。
「颯さん、気が済んだかい?」
亜里菜が真っ赤な扇子をぱちぱちさせながら出てきた。その後ろから鈴と沙耶が出てくる。
「おじさん、残念だったね」
にこっと鈴が笑う。そしてひらひら手を振りながら言った。
「お米、全部もらっちゃうから。ありがとね」
「ばっ!鈴!良いとこだけ持っていくんじゃねぇよ!」
「えへへ……でも颯介兄は十分目立ってたから大丈夫だよ」
「いや、そういう問題じゃないんだけど……というわけだおっさん」
状況が分かっていない地頭の方を振り返る。
「俺が全部もらっていいんだよね?」
「は……」
「もぉわかってないなぁ!つまり……」
〈俺が財産をもらう→もらった食料の権利は全部俺のもの→村人に配る→万事丸く収まる〉という関係図を地面にかきかきする。
「ということは……この食料、全部村人の……もの?」
「うん、そういうこと!」
にこっと笑って見せる。しかしなぜか地頭の顔が真っ赤になった。
そして何を思ったか、武装兵の脇差しを1本引っこ抜いて颯介に向けてきた。
「そんなことは……断じて許さん!この年貢は……わしがこの愚民どもから集めたものだ!お前にはやる、と確かに約束した。が、そんなことされては、わしの顔が……!」
「つぶれるってか?おいおい、勘違いすんなよ?俺はお前が不当な徴収をしているって知ってんだよ」
「なに!?」
「俺の友達がよぉ……足利将軍に近い感じだから」
さぁーっと血の気が引いているのを見た。それを見て口を開く。
「さぁ、大人しくその刀を捨てな……まぁどっちにしろその友達には言っておくからよ」
「そんな……!」
「桜庭氏!こやつは斬り捨てんのですか!?」
地侍のひとりが叫んだ。それに同調して村人の男たちが叫ぶ。
「そんな、とんでもない!俺の刀は人を斬るためにあるんじゃないんだ」
「では、私めが……藤原!覚悟!」
正眼に刀を構える。藤原がひっと悲鳴を漏らす。
「止めっ!こんなことで地頭を殺しても意味がないだろ!?」
きっと地侍に睨まれる。
「桜庭氏は私たちの長年の恨みを知らないのです!何人友人がこいつの手で黄泉に下ったか……これは友人の仇でもあります!」
「やめてくれ!ほら……これを見てくれ……!」
藤桜刀の鞘を腰から抜く。桜の紋が淡い桃色に輝いていた。
「『願い』が……叶った……?」
こくっと頷く。
「これは現世の『願い』と同時にあの世の『願い』も通じるんだ……これが桃色に光り始めたということは……わかるだろ?」
地侍はがっくり肩を落としながら泣き崩れた。
それを見て藤原が逃げ出そうとしていた。それを藤桜刀で阻む。
「お前……これで人間の命の尊さがわかったんじゃないのか?みんな死を迎える瞬間の恐怖をお前も味わったはずだ」
すうっと目を閉じる……甘い風が微かに吹き始めた。
「これからはお前が罪を償えるというのなら逃がしてやろう……友人に用事があるからお前のことはうまくはぐらかしておいてやろう……さぁ、どっちを選ぶ?」
「……わしは……わしは……」
「これを振らせるな……さっきも言っただろう?人を殺める刀じゃないって」
「……僧に……」
「なるか……それで?」
「御仏に……身を捧げます……」
「それが本心、か……行け」
目を徐に開ける……風が吹きやんだ。そして慌てて藤原はどこかへと消えていった。
佐加村での一件、これにてお開きとなります。
お開きとか言いながら、次のやつはその後書く気満々ですw
しかし前話でも言った通りそのあとは未定です。みなさんの意見お待ちしております。一応話の筋は作ってあるんですけど、この話、自分でもあまり自信がない作品なんでw続けるんだったら新キャラ登場させます。しないんだったら次話で終わりです……お願いしますね
では