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咲かせ屋  作者: 玖龍
最終章
35/37

感謝の祈り

これで終わるかなぁ……と思いつつ書いてたら、終わりませんでした(笑)

 「はぁー……」

 短い金髪の外国人がため息をつく。

 そして、手元にあった十字架を弄る。

 「神よ、やっぱり私はあの人たちの元へ戻ることはできないのでしょうか……?」

 そう異国の言葉で呟いた。


 「ブラザー・フェリス、起きてますか?祈りの時間ですよ」

 コンコンッという軽いノックの音がして、若い男の声が聞こえた。

 やれやれとため息をつき、異国の男――――フェリスは扉へと向かった。

 「わかってますよ、ブラザー・シモン」

 ガチャッと扉を開けると、神父服を着た若い男が立っていた。


 「どうしました、ブラザー?最近あまり元気がありませんね」

 「えぇ、まぁ……」

 「どうしたのです?まさか、ホームシックですか?……大丈夫ですよ。国王陛下もご心配されていらっしゃるようだし、もうすぐモルア司祭によって定められた任務期間も終わります。そうしたらあの懐かしい教会に帰れますよ」

 そうシモンはニコッと微笑みながら言うと、「さぁ、行きましょう」と礼拝堂の方へと歩いて行った。

 「ホームシックなどではないのです……」

 そうフェリスは悲しそうに呟くと、シモンの後を追って、礼拝堂へと歩みを進める。




 「「すみませーん!!」」


 

 入口の方から可愛らしい少女の声がする。

 普段人の訪れないこの小教会に、この日ノ本で陰ながら主を崇める家族が来たのかもしれない。

 「はーい!今行きますカラ」

 慣れた母国語とは違う、不自然な日本語を使って返事をし、フェリスは入口の方へと颯爽と歩いていく。

 「おはようございま……あれ?鈴サンと江奈サンじゃないデスカ?」

 

 そこには、はぁはぁと肩で息をする鈴と江奈の姿があった。

 どうやら2人は走ってきたようだ。

 フェリスは不覚にも、うるっと来た。

 この教会の位置を教えていないはずなのに、探し当てた2人。自分に会いに来てくれたのか……!

 そんな感動を一旦胸にしまい、フェリスは尋ねる。

 「どうしたのデスカ?こんな朝早くカラ?」

 困り顔で質問したフェリスとは正反対に満面の笑みで2人は言う。

 「亜里菜ねぇと佐之にぃが結婚するんだよ!」

 「それで近々結婚の儀を執り行うから、フェリスさんにも来てほしいの!」

 「ほ、ほんとデスカっ!?」

 フェリスも思わず頬を緩ます。


 なんたって、これまで短い間ではあったが行動を共にした、亜里菜と佐之助が結婚するのだし、再びみんなに会える!


 嬉しいことだらけだ。  


 「どうしたのです、ブラザー・フェリス?」

 自分の後を付いて来ない、フェリスを心配して、騒がしい入口へとシモンがやってきた。

 普段、「質素・貞操・服従」を掟に生きる彼らとは全くもって縁のない「騒音」に少しばかり眉をひそめていた。

 そして、目の前の少女たちを見て、さらに眉をひそめる。

 「ブラザー。彼女たちは一体誰なのです?」

 嬉しそうにフェリスは答える。

 「前に話したでしょう?あの『神の使徒』とその仲間たちについて。その仲間たちのうちの2人です。こちらが鈴さん、こっちが江奈さん」

 「あぁ……あのおてんば娘と、大名の娘か」

 「ブ、ブラザー・シモン……」

 薄い茶色の目で2人をじろじろと見る。言葉が分からないのをいいことに、テキトーなことを言っているシモンに少し愕然とした。


 一方、目の前でフェリスと見たことの無い異国人が、聞いたこともない言葉で喋ってるのを見ている鈴・江奈も困惑していた。

 鈴が江奈の着物の端を引っ張る。

 「ねぇねぇ……この人、誰?」

 「わ、私も知らないわよぅ」

 「というかフェリスさんにはもう要件伝えたからいいんじゃないの?」

 「そ、そうだね……でも日時とか言ってないよ?」

 「むぅ……」

 唇を尖らせた鈴。それを見て、江奈はさらに混乱する。

 (ど、どうすればいいの!?)

 

 そんな様子にフェリスが気づいたのか、声をかけてきた。

 「どうしまシタ?」

 しどろもどろで江奈が言う。

 「え、えーっつとぉ……場所はわかりますね?あのお寺です。あと、日時は……明後日のお昼です!」

 「ブラザー。彼女は何と言っているのです?」

 「え……詳しいことは後で説明します」

 「用件は済んだのですか?」

 「そ、そうのようですね……」

 「では、私たちは祈りに行きましょう。何かはわかりませんが、私たちの一番の仕事は神への奉仕です。祈りは欠かせませんよ?それに他のブラザーたちも待っておられる……急ぎましょう」

 「と、というわけで、鈴サン、江奈サン、また明後日お会いしまショウ。楽しみにしてますネ」

 「「は、はいっ!!」」

 元気よく返事をすると、2人は走って元来た道を帰って行った。



 その日の祈りの時、フェリスは再びあの仲間に見えることを主に感謝した。

  

「ブラザー」と書くのが地味に楽しかったです←

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