蝶
意味の分からない題名をつけてみました(テヘ☆)
亜里菜さんが蝶々みたいだなっていうことで(苦しい)
「佐之助……!」
亜里菜が先ほどよりも頬を赤く染めて立ち上がる。
佐之助はたじろいで一歩後ろに。
亜里菜は佐之助の胸に飛び込んだ……!!
……なんてことはなかった。
バチンっ!!
廊下全体に響くようなその音に、にこやかに笑っていた颯介、江奈の顔は凍りついた。
亜里菜が佐之助に……平手打ちをしたのだ。
佐之助の方も、流石にそれは予測していなかったようで、目を真ん丸にして亜里菜の方を見ている。
亜里菜は顔を真っ赤にして、はぁはぁ肩で息をしている。
……そしてぽろぽろと涙を零しはじめた。
「佐之助の……ばかぁ……!」
へにゃへにゃと床にへたり込む。
佐之助は心配そうに亜里菜に近寄る……そろそろと。
「あ、亜里菜……?大丈夫か?」
それを聞くと、亜里菜は涙で目を濡らしながら、キッと佐之助を睨みつける。
「大丈夫じゃぁないわよぉ……もう、馬鹿馬鹿馬鹿!!」
ポカポカと佐之助の肩を叩く。
佐之助は困り顔だ。
……佐之助よりも困っているのは、周りの観客だった。
目の前で幸せな風景が広がっていた(いや、広がる途中だった)のに……展開に付いていけず、目を白黒させている。
「あのぉ……亜里菜さん?」
颯介は恐る恐る声をかける……が、軽く無視。
ぐすぐすと亜里菜は泣いている。
「えーっとぉ……佐之助。とりあえずお前が悪い」
「な、何がだよっ!?」
佐之助が颯介に反論する。
「お、俺は、お前に言われた通り、自分の素直な気持ちを伝えただけだ!なんで俺が悪いんだよっ!?」
「いやぁ……俺がいつ『自分の素直な気持ちを伝えろ』と言ったよ?」
「……くっ!」
はぁーと颯介はため息をつくと、再度亜里菜に声をかける。
「でさ、亜里菜。佐之助は言ったぜ?お前の気持ちはどうなんだよ?」
すると、普段の亜里菜からは想像できないどすの利いた声が聞こえた。
「颯さんは黙ってな」
「……はい」
シュンと小さくなる。そんな彼に江奈が頭をよしよしと撫でてやる。
「佐之助……いきなり何を言い出すんだい?」
亜里菜は伏し目がちで言う。
「え……つ、つまりだな。俺と夫婦になって欲しいんだ……って亜里菜?」
亜里菜はまだ潤んでいる目で佐之助のことを見上げる。
そして口を開いて何かを言った――――それは微かな息音となって消えてしまったが。
「え?」
次の瞬間、亜里菜が佐之助の胸に飛び込んだ。
「亜里菜……?」
そのまま庭に倒れこんだ2人。
亜里菜が佐之助の上に乗っている。
「佐之助……ありがと……」
幸せそうな顔で亜里菜が呟く。
「約束……覚えててくれたのね」
そう言って亜里菜は佐之助の頬に、その艶やかな唇を乗せる。
――—その後、正式に佐之助と亜里菜の結婚が決まった。
次回、多分最終回です