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咲かせ屋  作者: 玖龍
最終章
33/37

約束

 微妙過ぎるこの空間。


 何がしたい……俺……!



 そっと重ねた人差し指。今思えば小指がよかった。その行為がどれほどの危険を孕んでいるか……!



 ……いけねぇ、俺まで可笑しくなったみたいだ。


 あの、ちょっとイカれた佐之助のようだ……


 「あ、そうだ」

 ぱっと手を離すと、慌てて身支度を整える。

 江奈はその様子に首をかしげた。

 「何してんの?」

 ――――これは、江奈にも言っておかなければならない。面白いから。

 そう思い、颯介は口早に説明する。

 「佐之助が亜里菜に……」

 ここまで言って思いとどまる。あとで驚かせようと思い。

 「……?告白?」

 江奈が正解を出してしまったので、ガクッとくる。

 ……ここまで言えば、当たり前か。

 「あぁ、そうらしい……本人はまだ踏ん切りがついてないみたいだがな」

 「へぇ……いや、ぶっちゃけ亜里菜さんも同じ気持ちだろうけどね」

 聴いちゃった、重大事実。

 止まらないにやにやを抑えたまま(いや、この表現はおかしい)、颯介は江奈に続きを促す。

 「だって、女の子だけのとき亜里菜さんはぽーっとしたまま、佐之助さんのいる方向をちらちら見てるし、この間もじーっと後ろから佐之助さんのことを見てたし……」

 


 そう言われて、颯介は昔を思い出す。



 佐之助がいいところの里子になったとき。

 ――――亜里菜はわんわん泣いていた。

 そういえば佐之助に貰った花(の残骸。もう既に枯れて原形を留めていなかった)を大切に取ってたっけ。

 それをその日も大切に持っていた。

 そして去りゆく佐之助に叫ぶ――――お嫁さんにしてくれるって言ったのに、って。(そしてその後、俺は亜里菜に振られた)

 

 佐之助に再会した時(あのとき)、平手打ちしてたが……まさか覚えているとはな。

  



 「……10年の時を経てってやつか……」

 ふーんと小さく首を揺らしながらにこにこする。

 いや、めでたいことだ。もちろん。



 「……で、そ、颯介はす」

 「えー!!!!うっそー!!」

 江奈の言葉は外の騒ぎにかき消された。


 「な、なんだ!?」

 颯介は急いで襖を開ける。

 そこには顔を真っ赤にしたまま硬直する亜里菜、絶叫する鈴、大きく目を見開いている沙耶……それに向かい合う形で佐之助が立っていた。


 「い、今……なんて言ったんだい……?」

 亜里菜はひきつった笑顔を浮かばせたまま、佐之助に訊ねる。



 「……は、恥ずかしいだろ!もう一回言わせるなよ!!」

 亜里菜より顔を赤くしながら佐之助は……言った。


 「……あの時の約束を果たす時が来たと思うんだ……」

 末尾はごにょごにょと小さくすぼむ。

 そして俯いて……大きく息を吸い込む。


 にやにやと佐之助を見守る颯介。

 颯介とは対照的に、ごくっと固唾を呑んで見守る江奈。




 そして――――


 「お、俺の“お嫁さん”になってくれないか……亜里菜」

 

 ……い、言いやがったあいつ……!


 江奈と顔を見合わせる颯介。2つの顔はにっこりとなった。

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