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咲かせ屋  作者: 玖龍
最終章
29/37

文、そして相談

 「俺に文?」

 ……恋文か?


 そう期待した颯介だったが、その淡いものは儚く消え去った。

 「いいや……お前の母さんからだよ」

 代わりに到来したのは複雑な感情だった。


 恐怖?

 いや、違う。まぁ、開けたくないのは確かだが。


 怒り?

 どうして怒ってる?今更文を寄越したことにか?それとも……?


 焦燥?

 ……おい、待て。焦ってどうする?……不安?

 

 でもこれが一番近いかもしれない。 


 

 「なんで……今更……!」

 顔を伏せ、押し殺したような声を出す。

 自分が6つの頃、(ここ)に置いて行った母。

 今まで顔を出しに来たこともないし、文を貰った覚えもない。

 

 『母親』という感覚よりも『自分を産んだ人』という感覚の方が強い。


 所詮別の場所で異なった時間を過ごしてきた人だ。

 今更自分には関係がない。

 

 それなのに何故……?



 「それは自分自身で確かめることではないのか?」

 正徳は優しく微笑む。

 江奈もそっと手を握ってくれた。

 「……後で貰いにいく」

 今はそう返すしかなかった。



******************************


 部屋で悶々と、寝転がって過ごしている颯介。

 

 それを打破したのは、佐之助だった。


 「颯介……入るぞ」

 「あーどうぞー」

 からからっと襖は開く。

 「よぉ、元気か?」

 「……さっき別れたばかりだろう?」

 若干呆れ気味な佐之助の返答。

 それに応えることもなく颯介は起き上がった。

 「ん?アレか?相談とかナントカっつー」

 「……まぁな」

 恥ずかしそうに頭を掻きながら、襖を静かに閉めた。


 「まぁ、座れや」

 「言われなくても」

 こころなしか顔が赤い。……ということは?


 「なんだ、恋煩いか?」

 一気に顔が赤くなる。図星。

 けらけらと颯介は笑う。

 それを悔しそうに睨みつける佐之助。

 「で、相手は誰だ?亜里菜?沙耶?鈴……はないな。あんなガキ。……まさか江奈?」

 「それはお前だろう、バカ」


 頭に「?」がたくさん浮かんだ。一体何のことか……


 理解しかねた颯介を無視して、佐之助は口を開いた。

 「亜里菜……だ……」

 「ほぅ」

 実に照れくさそうな彼を再びからかうように笑った。

 「お、お前に訊きたいんだが……!」

 「何を?(ニヤニヤ)」

 


 「亜里菜に男は……?」



 「……はい?」

 

 ……こいつ、大丈夫か?

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