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咲かせ屋  作者: 玖龍
最終章
28/37

再び相見えるときまで

 「やっと着いたか……ふぅ」

 そんなに歩いていないはずなのだが、“俺は疲れたんだ主張”を始める颯介。


 「ふふ、お疲れさんでした。どうぞ」

 「お、気が利いてるね、お姉さん♪」

 寺社前に『一銭一服』という形でお茶屋が開かれていた。

 まぁ、この時代にはなんら珍しいことではない。

 お茶を銭一文で提供するというだけの小喫茶。

 うら若い女性が接客をしていたので、颯介は立ち寄った……という部分もある。


 「あ、お茶屋さんだ!」

 「何、鈴欲しいの?」

 「ねぇねぇ、江奈も飲もうよ」

 「ワタシも頂きマス」

 ……大盛況だな、おいと思ってみたり。

 颯介はお茶を飲み干すと、女性に一文渡した。

 おおきにぃ、と笑顔で返される。

 彼がちょっといい気分になっていたとき、それは起きた。


 「「「御馳走様ぁ」」」

 「はいはい、おおきになぁ」

 ……飲み終えた“あずさ組”(例の3人)は白昼堂々と無賃飲食(正確には無賃飲)をやってのけたのであった。

 しかし、女性の方もそれを咎めようとしない。むしろ笑顔。

 「おい、お前ら金払ってないぞ!」

 そう言うと、3人はきょとんとした表情で振り返った。

 「え?颯介が払ってくれるんじゃないの?」

 「……は!?」

 亜里菜の爆弾発言に戸惑う颯介。すると追い打ちをかけるように、残り4人が立ち上がった。

 「そうかそうかぁ……颯介、ありがたく御馳走になるよ」

 「ふ、ふざけんなジジィ」

 「颯介サン、御馳走様デス~♪」

 「貴様、国に帰そうか?」

 「……(ポン(笑))」

 「……(ドカッ(蹴))」

 「……あ、ありがとう」

 「家に帰すぞ、こら(怒)」

 「というわけで残り7文どすえ~(笑)」

 あの人の良さそうな女性まで乗ってきた。ちゃんと笑顔つきで。

 「……覚えてろよ……!」

 懐から7文を取り出すと、7人を睨みながら女性に渡した。

 ……佐之助め。あいつなにやら相談があるとか言ってたな?俺様がいじってやろう


 ――そう決意した颯介だった。



 「デハみなさん、ここでお別れデス」

 突然フェリス神父が零す。

 一服した後、普通に寺内に入ろうとしていた颯介たちは動きが止まる。

 「……は?」

 「ダカラ、私は仲間の元に帰りマス、っていうことデスヨ」

 「ど、どうして……?」

 江奈が心痛そうな声で訊く。


 ここまで一緒に過ごしてきたのに……

 というか向こうから寄ってきたはずなのだが……

 ここに居ればいいのに……

 

 そういう想いが頭の中をぐるぐる廻る。

 

 「だって、私は神に仕える者デスヨ?お寺に居たらおかしいじゃないデスカ」

 それに、と彼は続ける。

 「仲間に黙って皆さんについてきたのデス。きっと彼らも心配していマス。だから、ここでお別れデス」

 「……そうよね……神父さんだって一人で来たわけじゃないんだし……またいつか会えますか?」

 江奈は彼の手を取って尋ねた。 

 フェリスはその手を握り返し、優しく微笑んだ。

 「ええ、きっと。神が望むのならば」

 そのあと、颯介たちの方に会釈をして彼はゆっくりと街道を歩いて行った。



 みんなでその姿を見送った後、不意に正徳が言った。

 「そうだ、颯介。お前に文が来てたぞ」

別れ方が単調で気に食わないです……でもどうしたらいいんでしょう?


……どこまでも他力本願な人間です←

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