涙の記憶
お待たせしました。。
テストやらなんやらがあって忙しかったものですから、すっかり更新が遅くなりました。。スミマセン(汗)
あくる日の午後。
江奈はルンルンで帰ってきた。
別の部屋で茶を啜っていた俺たちは、ホッと胸を撫で下ろした……成功したんだな、と。
どう説得したのかは知らないが、丁度帰宅していた江奈の姉貴がまず芳明と話合って、それから江奈が呼ばれた。彼女も呼ばれなくとも懲りずに行く予定だったらしいが。
あの堅物が首を縦に振るとは思えなかったが、彼女の様子を見る限りでは俺の予測は外れたらしい。
いやぁ、めでたいめでたい(棒読み)
襖を閉めた彼女に微笑む。
「おかえりー。良かったな、親父さんが許してくれて」
「うん。これも颯介のおかげよ!ありがとう!!」
にっこり笑顔で返される。
「え?ちげーよ。あの美人さんのおかげだろ?」
「び、美人さんって?」
「?江奈の姉ちゃんだろ?」
「……」
……?俺、なんか変なこと言った?
あれは美人としか表現のしようがないだろ。うん。誰が見たってそう思うはずだ。多分母親似なんだろう。あんなおっさん似だったらか(ry
しかし江奈も負けてはいないと個人的に思う。15歳にしては大人びた顔立ちだし、比べちゃ悪いが鈴とは大違い。
特に笑顔とかな。女子は笑ってなきゃいけないって本気で思う瞬間だ。
……何を語ってんだ、俺?
ふと顔をあげると、江奈がすごく冷たい目をしていた。
「……サイテー」
「んだと、こら」
喧嘩売ってんのか?せっかく人が(心の中で)褒めてやってんのに。
「デハ、これからは江奈さんも一緒に旅ができるということデスネ?」
すごく久しぶりにフェリス神父が口を開いた。険悪な空気が一気に晴れる。
「う、うん……そういうことになあぁぁぁ!?」
「やったぁー!!」
江奈が悲鳴を上げる。よく見ると後ろから鈴が抱きついていた。
「あたし嬉しい♪だって年上しかいなかったもん!亜里菜ねぇも沙耶ねぇも優しいけどもう大人だしっ!!これからもよろしくっ!!」
鈴は満面の笑みで江奈の手を握ってぶんぶん振っていた……江奈は苦笑いだったが。
よこらっしょ、と立ち上がる。
「それで、いつ出てくんだ?」
「明日……」
少し浮かない顔をされる。
「早いな、おい」
別に今日話がまとまったからって、明日出て行くことはないだろうに……
「あたしがここに居ちゃいけないんだって……出て行くなら親子の縁を切るって」
寂しそうにふふっと微笑む。
「でもこれはあたしが望んだことだし、仕方ないと思ってる。お父様が嫌いってわけじゃないけど、この家にいるのは嫌。だから……それで許してくれるんなら……」
「江奈……」
泣いていた。
天井を見上げている。目からこぼれる雫を落とさないよう。
気取られないよう明るく振る舞っている。でも本当は寂しいんだ。辛いんだ。悔しいんだ。
あんな親でも、江奈にとってはかけがえのない、たった一人の父。別れたくない、ってか。
『颯介』
ふと甦るあの高い声。
そっと手を振る長い黒髪の女。
微笑みを湛えた口元。
「……くそっ」
嫌な思い出が浮かび上がる。