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咲かせ屋  作者: 玖龍
5人旅……行先は未定
18/37

女将と先代当主

土・日来れないので……今日更新です☆

 「はあぁぁぁ……こりゃ肉体労働だ」

 京に着いて、早速(予想通り)一刻使って取り調べを受けた。俺が取り調べって言うのもおかしな話なんだが、奴らがどんな様子だったかとか、初めは何人ぐらいいたかとか……。そんなもん、伸びてる頭領に訊けばいいだろっ!!俺を捕まえた理由はなんなんだよっ!?



 ……愚痴っていてもしょうがない。俺にはこの後、もうひとつ仕事が残ってるんだからな。



 呑気に銭湯なんかに行ってしまった、亜里菜たち女子4人との待ち合わせ場所に行く。……フェリス神父?あの人は俺の帰りを待ってたんだって、門の前で。相当怪しい人に見られたに違いない。本人は何にも気にしてないが……。

 「えぇっと……『柑子屋(こうじや)』は……ここか?」

 看板を頼りに歩いていくと、ぼろっ……古びた宿を発見した。

 「佐之助。ここで合ってるか?」

 「間違いない、ここが『柑子屋』だ」

 佐之助は一応幕府の役人だから、大名の相手をさせるにはもってこいの人材なので強制的に参加させている。

 「亜里菜さんたち、遅いですネェ」

 「まったく……女の長風呂は理解ができ」

 「なんだって、颯さん?」

 ぎょっとして後ろを振り向く。

 そこには髪を濡らした亜里菜たちが立っていた。

 「お、おおう……元気だったか……?」

 「意味わかんない、颯介」

 江奈姫も汗を流してご機嫌のようだった。

 「いつからいたんだ?」

 佐之助が訊く。

 「ずっとだよ。ここでお風呂も借りたんだ」

 「へぇ……銭湯に行かなかったのか?」

 「行ったさ、ここのね」

 「ほぉ~……なぁ、佐之助。俺もひとっ風呂、行きたいんだが……」

 じぃっと睨まれる。却下、ですね。はい。

 「ほらほら、風邪ひくぞ。髪乾かしてこい」

 そう言うと4人は奥へ消えていった。



 「お兄さん方にも、お茶をお出ししましょうね」

 もうだいぶ高齢の女将がお茶を3つ持ってきた。

 「お、ありがとう」

 お茶を啜ろうとすると、フェリス神父に止められた。

 「な、なんでだよ」

 「ちゃんと神に感謝してから飲んでくだサイ。私たちにお与えになったものデス」

 いや、どっちかと言うと神様がくれたんじゃなくて、女将さんがくれたんだけどな。

 そういうツッコミを入れたくなるのを堪える。

 横で神父さんは何やらブツブツ言った後、実においしそうにお茶を飲みほした。

 じゃぁ、俺も……

 「颯介さん!!いただきます、とは言わないのですカ!?」

 「あ……すいません」

 ん?なんで謝ってんだ、俺?

 ご指摘通りちゃんといただきますを言って、飲み干した。 

 「やっぱりお茶はうめぇな!」

 「ホホホ……そう言っていただきますと、この老人の励みになりますさかい」

 「いやいや、まだまだ若いぜ」

 そう言ってテキトーに花を出す。そして女将さんに手渡す。

 「あらまぁ……なんて綺麗なんでしょう。お兄さん、おおきに」

 彼女は微笑んだ。

 「うちにも娘時代があったんですよ。その頃のことを思い出してねぇ」

 「というと?」

 「あんさんみたいに綺麗な花を仰山出してくれはる男の方がいらしてね……その頃もようけ貰いましたわ……あんさんは知らんかなぁ?その時はここらで有名だったんだけど」

 「名前は?」

 「桜庭陽西(さくらばようさい)、じゃったと思うんだけど」

 大当たり。先代の桜庭家当主。つまり俺の養父。……言っただろ、俺は元々孤児なんだって。

 「あの方はそりゃぁかっこよかったですさかい、仰山娘の取り巻きがおってねぇ……うちなんかホントに指一本も触れられへんかったけど、陽西さんがちょくちょくこの店に来てくれはってねぇ……」

 どこか遠い目。かなり昔のことを想起してるんでしょう。

 じいさんも昔は人気だったんだな、()は。

 俺を養子に取るとか、後継者にするとか言って、ばあさんに散々怒られてたけどな。

 けど、俺は感謝してる。じいさんの子になれて良かったってな。

 「あんさんは、陽西さんのお知り合いかい?」

 「まぁね……。おっ、鈴……いてぇ!」

 鈴が突進してきた。その後から江奈姫も続く。

 「お前ら、重いんだよ!どけっ!!」

 「あはは!」

 ふふふっと女将さんが微笑む。

 「あんさんも陽西さんによう似てますなぁ」

 褒め言葉として受け取っておこう。

 そしてしずしずと女将さんは帰って行った。

 


 「じゃあ、本家に乗り込むか」

 オー!……と言ってくれるはずもなく、個人個人で準備を始める俺以外の6人。

 ……ちょっと……無視しないで……俺が説得する係りでしょ?


 そう思わざるを得なかった颯介であった。


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