旅立ち
新規投稿です(こんなところで言うことじゃないですね、ははは……)
拙い文章ですが、読んでいただけたら嬉しいです☆
自分でも先が見えないので、道から脱線しそうだったら教えてくださいw
「うぅー、さみぃ」
男がへっくしょん、と大きなクシャミをした。
季節はもう春……なのにまだ寒い。花なんて咲いてない。
「寂しいなぁ……誰も見てねぇからいいや」
そう言ってまだ蕾も膨らんでない梅の木に近づいて、その枝にそっと手を被せる。
そして手をはずす……するとピンク色をした梅の蕾が一気に膨らんで満開に咲き出した。
「うん。これぐらいないと」
その様子を見て、ニンマリ笑って立ち去った。
「颯介さん」
女性が声を掛ける。おう、と男――楓介は手を振る。
「今日はどこに行ってたんだい?」
「ちょいと、ね」
ふふーんと鼻歌を歌いながらそこを離れた。
桜庭颯介、というのが彼の名前。黒い目に、無造作に切られた黒い髪。でも整った顔で着物もオシャレ。今日だって赤い手ぬぐいを首に巻いている。颯介曰く、彼はただの商人。しかし彼の腰には刀があった。
銘は“藤桜刀”という聞いたこともないもの。だが、桜庭家に代々伝わるものらしい。
そして明るい性格で人見知りなんてまるでしたことが無い……そんな変な男。
「颯さぁーん」
近所の子供たちが駆け寄ってくる。
「遅いよぉ!もう終わっちゃうよ!早く!」
「ちょっと待ってな」
子供たちに手を引かれ、村の広場へ連れて行かれる。
「これにてあずさ組、お暇を申し上げまする」
「あーあ、終わっちゃったじゃん!」
「颯さんののろまぁー」
「うっせーよ!俺はちょっと散歩してただけじゃねぇーか」
「だって亜里菜姉が『颯さんを呼んどくれ』って言ったんだもん!」
亜里菜の色っぽい声を真似して言う。
「そうだよ。なんで颯さんいなかったんだい?」
亜里菜が舞台から降りてくる。丁度、亜里菜率いる“あずさ組”の芝居が終わったらしい。
「あたいらずぅーっと待ってたんだから」
続いて亜里菜の妹、鈴が小さく頬を膨らます。
「さぁて、これをどう埋めてくれるのかしら?」
最後に鈴の姉で3姉妹の次女、沙耶が言う。
彼女らもこの村出身の旅芸人。とにかく美人でファンも多い(特に男)。“あずさ組”というのは彼女らの名前から取っているらしい。
そんな3人に迫られ、颯介は狼狽える。
「ま、待てってば……俺だっていろいろ忙しんだよ」
「たとえば?」
「……」
「答えなさいよ!」
「……うっせーよ!とにかくいろいろなんだよ!!」
「ふーん……いろいろ忙しい颯さんにはこれ(・・)いらないね?」
亜里菜が懐から1枚の紙切れを取り出す。そして颯介の目の前でぴらぴらさせる。
「あ!!なんだそれ!?」
「忙しそうな颯さんには、関係ないことさぁ」
「さぁ」
鈴が真似する……黙っとけやぁー!
「“咲かせ屋”に是非来てほしいっていう依頼だったけど、無理です、って返しておくわ……残念ねぇ」
沙耶がクスクスっと笑って紙と筆を取り出す。
「あっ!ちょっと待て!どこ?」
「いいさぁ、無理しなくて」
「そんなことない!依頼があったら絶対行くって」
「ふふん……ではでは」
ぴろっとひっくり返す……なになに?“佐加村”?聞いたことねぇなぁ……
「この村をちょっと行けば、あるところだよ……なんなら、あたいらがついて行ってあげようか?」
「そうして頂戴」
「“あずさ組”の次の舞台は“佐加村”に決まり!」
……おい、そこ?俺のお仕事についてくるだけじゃん?
すると子供その1が駆け寄ってきた。
「えぇー、颯さん、行っちゃうの?」
「おうよ!……なんだ?さみしいか?」
「うん」
「そういう奴には……ほれ」
どこからともなく真っ赤な花を出す。子供たちの歓声。うん、成功……わっはっは。
「じゃあ、私たち待ってるから」
「ははは……」
よっこらしょと立ち上がり、颯介を完全無視して先に行ってしまった“あずさ組”の3人の後を追った。
はい、無事に(?)投稿できました☆
“咲かせ屋”とは一体なんなんでしょうか……?正体は次、いや次の次?いやいや次の次の次?……きりがないですけど、そのうち出てくると思います。。
では、ありがとうございました!