54.野営後
「サキさんは御者台を使って下せえ」
「俺らは地面でも慣れてるもんで」
「何から何まですいません」
御者台に寝転び、マントにくるまる。
さすがにここで拠点に帰るようなことはしない。
ジャンとエリックはその後交代で見張りをしていてくれたらしい。
朝起きてから気づき、大変恐縮してしまった。
朝食は昨夜同様簡素なものだったが、軌道馬車による貨物運送の日当を考えると、ソーセージと芋とパンは、彼らの最大のもてなしだ。
通常ならソーセージではなく、もっと塩のきつい干し肉だ。
ジャンがわざわざ御者台下に隠していたことからも大事にとっておいたのだろう。
その心づくしに温かな気持ちになる。
馬の世話を終え、馬車につなぎさあ出発だ。
「サキさんは足が速いので有名だから、遅いあっしらのことなんか気にせず、どうぞ先に進んで下せえ」
「いえいえ、急ぐ度でもないですし。昼には町に着くでしょう?ご一緒させていただきます」
「じゃあ、一緒に行きますか」
手綱で合図を送り、馬はゆっくりを歩を進める。
彼らの行く先はI町手前のM村だ。
本来であれば昨日中に到着予定であったためか、数人の村人がこちらの姿を見て駆け寄ってきた。
「ジャンにエリック遅かったじゃないか」
「車軸が折れちまってな。修理は出来たんだが、暗くなっちまったんで野営してきた」
「そうか、まあ無事で何よりだ」
「そんときにサキさんに手伝ってもらってな」
「サキさんが来てるのか?」
「こんにちは」
「これはサキさん、ご無沙汰しています」
「いえいえ、こちらこそご無沙汰しております」
「M村によって行かれますか?」
「いえ、I町のイノシシをやっちゃわないといけなくて」
「ああ、あのイノシシですか。サキさんに来ていただけたら、連中も安心でしょう」
「この村まで噂されてるんですか?」
「ええ、食い意地の張ったイノシシらしいですね。その上知恵もあるらしく、困ってましたよ」
「そうでしたか。張り紙ではそこまでのことは分からなかったもので、情報ありがとうございます。ではI町に少し急ぎで向かいますね。ジャンさん、エリックさん。また機会があれば」
「ええ、ありがとうございました。気をつけて」




