表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/34

トンネル崩落で閉じ込められたカズマたち。絶望の中、由真は“テレポート能力”が偽装だったと告白する。それでも二人は何も変わらず、再び脱出の道を探しはじめる。

前回のお話はーー

十年前の崩落事故――助けられた命と、残った痛み。あの日の轟音が、簗瀬の胸を再び揺らす。

 トンネル内のカズマ、由馬、三月の三人にもズゴオオオオォォォォと激しい音が響いたのが聞こえた。


 懐中電灯を向けて見ても、暗くて何が起きたか分からない距離のようだ。


「とにかく、一度ココを出ましょう。救助が到着してるかもしれない」


 これ以上進むのは危険と判断した三人は、来た道を戻って歩き出す。

 どんなに歩いても、暗闇は暗闇のままだ。


 マイクロバスの辺りは遠くても出入り口の光が見えて、もう少し明るかった気がする。


「なんだか、焦げくさい気がするんだけど?」


 歩けば歩くほど、異臭は強くなり喉がおかしくなる。

 何度か咳き込むが、何が起きているのかまったく分からない。


「うっわー。壁! 壁! 壁だよ」


 三月が不思議そうに、見れば分かることを大げさに言うと二人は冷静になれる。

 さっきの音はここが崩落した音だ。この先に、マイクロバスがあったハズ。


「ここも崩落したの? もしかして、閉じ込められた?」

「そうみたい。ミツキたちがここにいることは分かってるから、助けは来ると思うけど……」


 懐中電灯に照らされた空気が白い気がする。

 燃えている、みたいな?

 カズマはタンクローリーがあったことを思い出した。

 爆発、したんだろうな。

 おそらく、この向こう側は、火災が発生している。


「中の状況が分からないからな? 少し救助が遅れるかもしれない」


 この異臭と煙ではいつまでココにいられるか。

 カズマの頭はフル回転して、1つの可能性に行き着いた。


「東雲! お前のテレポートで、ここから出るってのはッ?」

 由真がテレポーターなことを思い出し、回路を見出したカズマはテンションが上がる。


「二人を抱えてトブのは無理、かなぁー?」

 由真はギクリとして、視線を露骨に逸らす。


「ねぇ、これって、燃えてるんじゃない? 向こう側、火事だったりして!」

 状況を面白がっているミツキとは対照的に、由真の顔から血の気が引いていく。


「も、燃えてるって、どうして? どういうコト? それじゃ、助けなんて来ない? あたし、あたし……ここで死んじゃうの? こんなトコで?」


 絶望したように、その場にしゃがみ込む由真は錯乱している。

 完全にどんな時でも冷静沈着な生徒会長の仮面は壊れ、恐怖に震える一人の女の子がそこにいる。


「東雲1人ならどうだよ? テレポートで、ココの様子を救助の……」

「出来ない。どうせ死んじゃうのよ!」

「東雲、落ち着けって、オレの話を……」

「無理、出来ない! そんなの無理よ!」

 由真は泣きながら、頭を抱えてカズマの言うコトを聞こうとしない。


 困ってミツキを見るが、黙ってお手上げのポーズを返されてしまう。


「ココで死んじゃうのよ。助けなんてこないよッ」

「由真っ!」

 泣きじゃくる由真の手を握って、カズマは泣いて真っ赤になった由真の瞳を見つめる。


「頼むから、聞けって……」

 強い口調から一転した穏やかな口調で、優しく由真に語りかける。


 そんなカズマに驚いた由真は、少し平静を取り戻した。


「多分、タンクローリーが爆発したんだと思う。火を消さないと救助は来ない。この壁が厚いから、火はココまで来ないけど……向こう側から見たら、中の様子は分からないよな? ここの状況を、テレポートで外に伝えて欲しいんだ」

「無理。あたし、そんな超能力ないもん!」


 精一杯、優しく語りかけるカズマの提案は、予想外の返事として返って来た。


「数メートルでも、あたしがテレポートしてるように見えるのは、人よりちょっと速く動けるだけ! 空間なんてトベるワケないじゃない! あたしのランクはニセモノなのよ! 嘘なのよ! ば、バラせばいいわ! 東雲由真は偽造してるって!」


 こんな場所での告白に、カズマの頭は一瞬真っ白になる。

 由真のテレポート能力が偽造されたことではなく、ココから出るための方法が消え失せてしまったことに。

 振り出しに戻って、再びここからの脱出方法を考える。


「な、なんで、黙ってるのよ!」


 沈黙に耐えられなくなった由真が逆切れして立ち上がる。

 ぽかんと由真を見上げる二人の視線は今までと変わらない。


「あ、いや、ココから出る方法、考えないと」

「別に、ランクなんてどうでもいいしぃ」


 自分が今まで必死に守ってきたものを否定された気分で、由真はふらふらと座り込む。


「……超能力じゃなくても、それだけ動けるってスゴイんじゃね」

「うん、由真すごい! ホントだよ?」


 バレた時の反応が、今までの人たちとは違うことに由真は驚いた。


 由真の能力が低いと分かると、人は去って行くものだと思っていた。

 だから必死に、その秘密を守り続けていたというのに、この二人は……。

 こんな状況なのに、なんだか嬉しくて口元が緩みそうになるのを押さえ込んだ。


「あ、飴くらいだったら……少しは空間移動出来るのよ?」

「じゃあ、まったく能力無いワケじゃないんだね。イツキと一緒だ!」


 非常時だというのに、三月が天真爛漫にケタケタと笑うとその場が和む。


「言ったら怒られるんだろうなぁ。マズイかなぁー。ま、別にイツキのコトだからいっか! イツキの予知能力ってね、自分のことで、3分後しか視えないの! ウルトラマンみたいでしょ? 3分だよ? 3分! だから、トンネルの崩落も、あのタイミングでしか分からなかったんだよね」


「え、ウソ……」


 同じ立場の五月には、ひどいことを言ってしまった。

 胸の奥がじくじくと痛む。

 能力が低いことを知っても、二人は普通に受け入れてくれた。

 どれほど心が軽くなったか。

 能力が低い苦しさを、誰よりも自分が知っているのに――。


「気にしなくていいよ。イツキだって言いすぎだし。でも、本心じゃないトコもあるの。分かって欲しいな」


 由真が黙って頷くと、満面の笑顔で三月は由真を抱きしめる。

 その骨格はやっぱり男の子のソレで……由真はなんだか居心地が悪い。

 三月は三月! 五月は五月よ! と再確認。


「ああ、よかった。話し声が聞こえて……」


お読みいただきありがとうございました。

次回、要救助者の青年とは? カズマに起こる悲劇!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ