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スカイ東京の小さな公園に導かれたカズマたち。 五月の中のもうひとりの人格──三月登場!

前回のお話はーー

式典送迎に抜擢されたカズマ。スカイ東京中央会館へ向かうはずが、突如ナビが暴走。 「プロフェッショナル・ジョーカー出動要請」―― 強制ロックされたら従うしかない!

 由真はむふっと笑って、わざとらしく五月の方を見やる。

 一方的な宣戦布告のようだ。

 そのままカズマに視線を切り替え、満面の笑顔で進行方向を指さした。


「はぁ……えっと、姫川?」


 五月は最高に不機嫌そうな顔のまま、窓の外をじっと見つめていた。

 反論する気もないらしい。


 ルームミラーとナビを交互に見ながら運転した場所には、10分程度で到着した。


 スカイ東京のどこにでもあるような小さな公園。


 ナビに何かのゲームクリア画面のような『GOAL』の文字と紙ふぶきの演出が流れる。

 バチンと音がして、ドアロックが解除された。


「公園? 普通の公園よね?」


 先頭を切って車を降りた由真が、辺りを見回す。

 そこにあるのはベンチと小さな遊具だけ。

 どこからどう見ても、ただの公園だ。


 後に続いたカズマは、妙な違和感に眉をひそめる。

 天気のいい休日の午後だというのに、子供の姿が一人もない。

 その沈黙が、逆に不気味だった。


 広場の中央には、SSSの制服を着た数人の姿。

 さらに、その中でもひときわ目立つ白い制服の女性が二人。


 五月は迷うことなく彼女たちに近づき、何かを受け取ると、そのままどこかへ歩いて行ってしまう。


 残された由真は、その二人をじっと見つめる。

 パンパンと自分の頬を叩いて、作り物めいた完璧な笑顔を装備する。


「お姉ちゃーん!」


 お嬢様スマイルを満開に咲かせ、大きく手を振りながら駆け寄っていった。


 不穏な雰囲気をまとった白い制服の女性が、由真に視線を向ける。

 スレンダーでクール。完璧な顔立ちだが、その瞳は冷たかった。


「……」


 無視。完全に無視。

 姉妹のはずが、空気が変にゆがむ。

 その空気を察して、お色気お姉さんが、由真の胸元にあるネクタイを正す。


「由真! 久しぶりね。学生生活はどう? うん。制服似合うわね」

「ありがとうございます! やっぱり峰子サン素敵。憧れちゃうなぁ」


「相変わらずお世辞が上手いわね」と返したお色気お姉さんは、カズマと目が合う。

 反射的にカズマは真っ赤になり視線を逸らしてしまう。

 くすりと笑って、由真に紹介を促す。


「カズマ君。ちょっと来てぇ」

 急いだほうがいいのだろうが、素直に従うのが気に入らないカズマはゆっくり目に歩く。

「私と、姫川君の送迎をしてくれている小早川カズマ君」

「ど、どうも」

富士山峰子(フジヤマミネコ)よ。よろしくね」


 キレイなお色気お姉さん風完璧メイク。

 ほんのり香る大人の香水。

 思わず意識してしまい、カズマは露骨に顔をそらす。

 反抗期丸出しの態度が、年上の悪戯心をくすぐったようで――。


「ふふっ、顔そらした。……ねぇ、キレイなお姉さんって思ったでしょ? 

 それとも……おっぱい大きいなぁ、とか?」


 峰子は自慢の巨乳をグラビアポーズで強調する。

 プロフェッショナルジョーカーはそれぞれ専用制服となっている。

 峰子専用制服は胸元が大きく開いて谷間がしっかり見える。

 ぐい、と谷間を見せつけるように寄ってくる。


「み、見てねぇってのッッ!」


 真っ赤になったカズマは、思わず数歩よろめく。

 声も裏返り、逃げ腰。

 まだまだ思春期、直視する度胸などできていない。

 その姿に峰子様はニヤニヤ笑いご満悦。


「おおおおおおおお、お、お、思ってねぇよッッ」

「ふふ、可愛いわねぇ、カズマくん。ね、薫も自己紹介してあげなさいよ」


 一歩離れた所でクールに資料を見ていた女性がチラリとカズマを見て一言。


東雲薫(シノノメカオル)


 それ以上は何も言う気は無く、視線は資料に戻る。

 一方的に由真は薫に話しかけているが、薫はまったく相手にしない。


「東雲って?」

「姉妹なのよ、アレでも。似てない姉妹よねぇ? ま、妹の方が大きいって良くある話よねぇ?」


 スレンダーな姉の薫より、妹の由真の方がグラマラスで身長も高い。

 一方的に話続ける妹と、まったく相手にしない姉は仲睦まじいでもなく、険悪でもない。


「……身長的なトコじゃないわよ! 他ね、他。大きさの違うトコ、あるでしょう?」


 意味深に峰子にささやかれて、つい、目が……。

 その視線を追う峰子はくすりと笑う。

 完全に見抜かれてしまったカズマの温度は急上昇で沸騰間近。

 そんなカズマを見る峰子はお腹を抱えて遠慮なく笑う。


「ホント、相変わらず仲の悪い姉妹。名家には名家でイロイロあるのねぇ」


 まったく相手にされてなくても、由真は笑顔で楽しそうに話を続けている。

 なんだかその様子がカズマはすごく気になった。


「みーねーこぉー」


 恨みがましい声に振り返ると、パンク風の派手なファッションの少年? 少女?

 中性的な雰囲気をまとった見知らぬ人物が仁王立ちしていた。


「ミツキ。うん、似合うわ。カワイイ、カワイイ」


 峰子は当然のように呼ぶ。本人はふくれっ面をしていた。


「違うのー。ミツキはもっと、レースいーっぱいのふわふわのピンクがいいの!」

「それだけはやめてくれって五月に釘刺されちゃったのよ。可愛いのも似合うけど、カッコいい方がしっくり来るでしょ?」


 ――女の子……だよな?

 カズマは本能的な違和感を覚え、まじまじと見つめる。


「カズマ! そっちは由真でしょ? ミツキ、ずっと話したかったの!」


 初対面のはずなのに、妙な馴れ馴れしさ。

 必死に思い出そうとするが、カズマがスカイ東京に来てから会った人は限られているのに思い出せない。

 どうやら由真もカズマと同じ違和感があるようだ。


「失礼ですけど……どこかで会ったこと、あるような?」

「ふふんっ。やっぱり分からないよねぇ」


 ヘアピンを取ってフルフルと猫みたいに頭を振ると、髪型が変わる。

 さらりと髪が流れ、別の雰囲気が立ちのぼった瞬間――。


「……姫川?」

「姫川君!?」


 カズマと由真の声が重なり、二人はようやく気づく。

 その場に五月の姿は、どこにもなかった。


「はい、正解。ミツキは姫川三月(ヒメカワミツキ)。イロイロあって、今はイツキの中にいるの。

 イツキは五月。ミツキは三月。一緒だけど、別だから! よろしくネ!」


 三月は無造作にヘアピンで髪を留める。

 髪型が変わると雰囲気も変わる――五月とは違う笑顔に別人と感じる。


 薫から説明を受けている三月は、表情がコロコロ変わり五月との違いをカズマと由真は眺めていた。


「双子なんだって。 えーとー、三月さん、が兄? 姉? あーうぅぅ?」


 由真が言いかけて、どうにも言いにくいことに頭を抱える。


「そこは気にしなくていいわよ」

 峰子が助け舟を出すように微笑む。


「三月のサイコメトラーとしての能力はSSSで一番高いの。三月は過去、五月は未来が視えるの。1つの体に人格2つも珍しいけど、1人が2種類の能力を持つのは五月だけなのよ」

「その能力で、最高位のS3なのですか?」


 峰子は由馬に頷いて、その視線が三月を捕らえる。


 辛そうな切なそうなその視線にカズマは気づいてしまう。

 何かがあったことはわかる。

 でも、ソレを聞いてはいけない気がして見ると、三月は明るくよく笑う。

 アイツ、あんな風に笑うんだな。

 仏頂面の五月しか知らないカズマは、そのコロコロ変わる三月を眺めていた。


 その時、微かなエンジン音が聞こえた気がした。

 間違いない、スポーツカーのエンジン音だ。

 全神経を耳に集中させ、その音の方角を捉える。

 姿を見せたのはあの日の180SX。

 カズマの心拍数は音を最大にして上がっていく。


お読みいただきありがとうございました。

次回は、幸太行きつけの整備工場へ。180SXのこと、もっと知りたくない?

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