プロローグー首都東京が死んだ夜
東京は死んだ。
西暦20xx年7月7日夕刻。
首都直下型地震はすべてを壊した。
突然付き上げるような衝撃は一瞬で、何が起きたか分からない。
高層ビルが崩れ、地上にはガラスの雨が降る。
あちこちで爆発音が響き、火の手が上がる。
体感、光景、音……その全てで人々はこれが地震だと気が付く。
揺れが収まり、我に返ると電気も通信もライフラインが断たれている恐怖に襲われる。
逃げる――ドコに?
助けて――誰に?
叫びも、祈りも……届かない。
各所で上がった煙は、まるで魂のように空を覆い尽くした。
7月7日――織姫と彦星が出会えるはずだった空に星はない。
絶望の中で見上げる空に、星はない。
闇だけが支配する暗黒のように……。
スター・ロスト・タナバタ。
星の光さえなくした日。
日本政府が――死んだ夜。
都市を崩壊させた巨大地震から10年。
東京は、巨大地震から復興した都市として世界的な観光地になっている。
世界中を注目させた新都市は、空に浮かぶ都市――スカイ東京。
大都市と呼ばれる都市ひとつが崩壊したのだ!
瓦礫処理など不可能に等しい。
それより復興を優先した政府は、その上に都市を建設することを選んだ。
東京23区
江戸川区から大田区まで『C』の型に強力な支柱に支えられた地上350メートルの空中都市。
東京中心の高層ビルが倒壊した姿は、観光の目玉と言っても過言ではない。
高層ビルが崩れた中央区周辺は、ご丁寧に上から見下すように瓦礫が見える作りが悪趣味。
巨大地震から立ち上がった日本のパフォーマンスは、やり過ぎなくらいがちょうどいい。
『地震を未来への教訓として』
瓦礫を見せることで、海外からの観光客にわずか10年足らずで復興した国家力と建築技術を強烈にアピール。
復興のためには莫大な費用がかかる。
国の中心都市が崩壊することは、国の崩壊を意味する。
破綻した国の行き先は、世界のテーマパークになる事。
『ようこそ! 世界最先端の未来都市・スカイ東京へ』
『地震から復興した未来の国』
最大の魅力は安全・安心・エコロジー。
原子炉は全て廃炉とし安全性を、地球を汚すエネルギーも徹底排除し、発電は最先端技術によるエコ発電……。
まさに世界が!
時代が求める国!
日本は、世界の最先端都市という仮面をかぶった。
はじめまして。
本日より連載をスタートします!
お読みいただきありがとうございました。
キャラクターが出ることもなく、世界説明の地味なスタートですが……。
この世界の空気とか、雰囲気が伝わったでしょうか?
これから主人公・カズマをはじめ、いろんなキャラクターたちが動き出していきます。
ぜひ、ゆっくりお付き合いいただけたら嬉しいです。
次回更新→明日(8/9) 21:00台に予定です。