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スライム、冒険者になります。

目が覚めると、俺はスライムになっていた。しかもただのスライムじゃない。

 ――ダークスパイダースライムという、よくわからん進化体だった。


(……まあ、悪くはないか)


 俺はのんびり屋だ。生前も今も、基本的に静かに生きていたい。でも、このままずっとダンジョンの奥で虫を食ってるのもつまらない。


 だから、俺は決めた。――冒険者になろうって。


 そのために俺は、“人型”になった。スライムの身体を変化させて、15歳くらいの人間の少年に擬態する。黒髪で地味め、でも動きやすい服をイメージして。


 体の中心には、魔石。つまり俺の心臓があるが……場所は――


「……月だよな、うん」


 そう。俺の魔石は、地球(というかこの世界)の月にある。 変な設定だが、そうなってる。つまりこの体を破壊されても、俺は死なない。――本人はまだ知らないけど。


 武器は糸と、拳と蹴り。 糸は鉱石や魔法、武器を捕食すると、強化される仕組みだ。

 ただし、人間や魔物は食えない。そこだけは制限つき。良心的でしょ?


 それでも、糸は強い。鋼の糸で罠を作ることもできるし、槍のように放つこともできる。ピンチの時は**“イメージ”能力**で、敵の行動を観察し、解決策をひねり出す。


 そんな俺が、初めてダンジョンの外に出たとき――事件は起きた。


「きゃああああああっ!」


 空から、黒い影が飛来する。――黒龍だ。Sランク級の魔物。それが、4人の少女たちを襲おうとしていた。


「くそっ、ここで終わるのか……!」


 剣を構える少女が叫ぶ。鋭い眼差し、たくましい体つき。きっと彼女がリーダーだろう。後ろには、小柄な魔法使い、聖なる雰囲気を放つ回復師、そして俊敏そうな盗賊。


(あれ、なんかいいパーティーだな……)


 俺は軽く頬を叩く。のんびりしてる場合じゃない。困ってる人は、助ける。それが俺の流儀だ。


 地面に掌をつき、鋼糸を張る。風のように駆けて、黒龍の首に糸を巻きつけた。


「……よっと」


 足場を蹴り、渾身の一撃。拳が黒龍の顔面を打ち抜き、ゴシャッという音とともに、黒龍は地に沈んだ。


「……は?」


 4人の少女たちが呆然と俺を見る。糸を巻き直しながら、俺は口を開いた。


「大丈夫?」


「……な、なんなの、あんた」


 リーダーの少女が剣を下ろし、睨むように問いかける。


「通りすがりの、旅人」


 本当のことは言えない。ダークスパイダースライムです、なんてバレたらまずい。とりあえず、のらりくらりでごまかす。


 その後、彼女たちに誘われて――冒険者ギルドへと向かった。



---


 冒険者ギルド・街の中心にある巨大な塔。内部は活気に満ちていた。


「この子も一緒に登録お願いします」


 剣士の少女が受付嬢に言う。


「……彼、未登録ですね? 名前は?」


「……クロウで」


 適当につけた名前。でも悪くない。カラスみたいでかっこいいし。


「年齢は?」


「十五」


(本当は十歳だけど、まあいいか)


 無事に冒険者登録を終えた俺は、彼女たちのパーティーに入ることになった。


 名前は――《黒翼の煌刃》。通称、Sランクの少女パーティー。


 剣士の名前はリーナ。仲間思いで、実は昔、ダークスパイダースライムに命を助けられたことがあるらしい。……それ、俺なんだけど。


 魔法使いのフェリスは、背が小さくてちょっと生意気。でも魔法知識は天才的で、部屋はゴミ屋敷レベルに散らかっているらしい。


 回復師のミレアは教会の聖女。天然系でよくドジを踏むが、癒しオーラがすごい。……胸も。


 盗賊のカリナは金にがめついが、稼ぎの半分を孤児院に寄付している。料理が得意で、早くも俺に弁当を作ってくれた。


 ――こうして、俺の冒険者生活が始まった。


 恋と、バトルと、時々のんびり。

 でも、俺の正体がダークスパイダースライムだってことは……まだ誰も知らない。


(うまく……やれるといいな)


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