俺達3人、三銃士
尾松先輩との醜い戦いに負け、僕、小瀬は入部届に『パソコン部』と記入し、担任に提出した。
放課後
「失礼しまーす」
僕はパソコン室に入る。
「そこで俺は言ってやったんだよ、トイレではいていいのはパンツだけだぜー!つってよ、たっははは!お、新人君じゃーん!ようこそー!」
やはり昨日と同じ名も知らぬ先輩がよく分からんジョークを飛ばしていた。
「今日からよろしくお願いしまーす…」
僕はペコリと頭を下げた。
「今年は男3人しかいないからなー、仲良くしなよー!」
ジョーク先輩(仮名)が3本指を立てて笑う。
すると
「はーい、お前ら席つけー」
後ろから顧問の先生が入ってきた。
「1年はここ座れー」
先生は真ん前の席を指差す。
言われた通りに座ると両サイドに2人座った。
「あれ?小瀬じゃん!バスケ部じゃないの?」
なんと右には同じクラスの隣の席の加賀美だった。
「あー、ちと訳ありでな、ヨロシクー」
僕は苦笑いして挨拶した。
「はい、えー、まず初めに顧問の田上です。よろしくお願いします。じゃあ1年生は軽く自己紹介してもらおっか。
・名前
・趣味
・入った理由
の3つでいいからねー。じゃあ左から順番にどうぞ。」
田上先生がテキパキと指図する。
「鬼頭です。趣味は漫画です。アニメ派ではありません。入った理由はぶっちゃけ楽そうだったからです。よろしくお願いします。」
左に座ってた鬼頭がハキハキと自己紹介した。
「小瀬です。趣味はバスケです。…先輩に誘われて入部しました。お願いしまーす。」
言えない…!耳元水飲みASMRに負けたなんて…!
「加賀美です!趣味はゲーム!中学のときは格ゲーで県内トップになり、二つ名は『外道山』をもらいました!入部した理由はパソコン室からゲームの音が聞こえたからです!ヨロシクオネガイしまっす!」
3人の自己紹介が終わり、先輩たちが拍手した。
「ありがとなー、じゃあ部長から一言ー。」
田上先生が部長に振る。
そういえば僕は尾松先輩をたおした部長を見たことがない、滅茶苦茶美人のバスケ部女子マネの彼氏って事は相当なイケメンなのだろうな。
しかし、
「どーもー!部長の仙道でーす!シクヨロ!まぁうちの部活の活動方針は『清く明るく元気に!』です!折角だから2、3年も自己紹介してもらおっかー」
部長の正体は入室するといつも誰かしらによく分からんジョークを飛ばしてたジョーク先輩だった。
ハッキリと言おう。イケメンとは言えないビジュだ。
特徴という特徴はないが強いて言うなら糸目でヘラヘラしてる。
「…物語の中盤くらいに主人公の仲間として登場して裏切る雰囲気プンプンだったけど最終話まで裏切らないタイプのキャラみたいだな…読者人気投票5位くらいに入るな。」
右にいた鬼頭がボソッとつぶやいた。
「何だその具体的な例えは…」
鬼頭とそんな話をしてると先輩達が自己紹介を始めた。
「副部長、3年情報科、鹿瀬です。部長からは何故かトナカイって呼ばれてます。ほんと何故か。」
「3年普通科、光海です。部長からはミツミンって呼ばれてます。」
「3年情報科、日本でーす。部長からはジャパンって呼ばれてまーす。」
「2年普通科大船です。部長からはクルーザーって呼ばれてます。分からないことがあったら聞いてねー。」
「2年情報科、徳川です。徳川幕府の子孫ではないですが部長からはバクフって呼ばれてます。」
「2年商業科、安藤です。部長からはアンドゥーって呼ばれてます。結構気に入ってます…。」
「2年商業科、米屋です!部長からはヨネやんって呼ばれてます。」
「2年情報科、辰巳です…部長からはエトって呼ばれてます。」
「2年情報科、尾松です!部長からはオマッチャンって呼ばれてます!遊び開発部門担当!よろ!」
以上の部長含め3年4人、2年6人が自己紹介した。
てかなんだ?ここの部活は部長にあだ名をつけられないといけない契があるのか?
「はい!ありがとー!じゃあ早速1年諸君にも二つ名をあげないとな!」
「「(いらねぇ…)」」
「やったー!」
喜んでるのは加賀美1名のみ…
「じゃあ、鬼頭はー…オニちゃん!小瀬はー…難しいな…ゼオにしよっか。加賀美は、折角だから外道山!」
こうして1年三人は二つ名を貰った。
「じゃあ、うちの部活の活動内容を教えるね。」
部長は説明を始めた。
「まず名前で分かるかもだけど、主にパソコンを使って何かしらやります!以上!ブッ壊さない限り好きに使っていいからね!」
訂正、説明なんてものには及ばなかった。
「えっとー、今何時だ?4時半ね。じゃあ…解散!」
こうしてパソコン部は解散した。
「さて、帰るか…」
鞄を手に取り帰ろうとすると後ろから声がした。
「おつかれさーん、小瀬、あ、ゼオ!寄り道してこーぜ!」
加賀美が肩を組んできた。
「あー、いいよ。鬼頭…オニちゃんも来る?」
鬼頭を誘ってみた。
「え?いいの?行きたーい。」
声は落ち着いていたが喜んでるとお見受けした。
「じゃあ決まりだな!蕎麦行くか!」
加賀美が二カッと笑う。
「え?ラーメンじゃなくて?」
普通こういうのはラーメン屋に行くという偏見を持っていた。
「あ、ラーメンがいいならラーメン行くか?」
「いや、大丈夫だよ?」
日本人あるある お互い遠慮しすぎて話が進まない。
「…オニちゃんはどれがいい?」
救いの鬼頭に聞いてみる。
「うどん」
論外だこりゃ
「蕎麦かラーメンかうどんかー…よし!決めた!」
加賀美がひらめいたらしい。期待はしてないが。
「間取ってパスタ行くか!丁度駅近にイタリアンレストランがあるし!」
飛んだイタリアンだぜ。
こうして特に気分ではなかったがイタリアンレストランへ向かった。
「そいや一年ってオレたち3人しかいないんだよなー。」
レストランへ向かう道中加賀美が口を開く。
「漫画の主人公サイドは大体3人組で行動するよな。」
鬼頭がボソリと呟く。
「じゃあそうだなー、一度言ってみたいセリフがあるんだけど言っていいか?」
先頭を歩く加賀美が振り返る
「「どーぞ」」
「オレたち3人三銃士!スパルt…」
「「ストップストップ!」」
何がとは言わないが色々言われそうな未来を見据えて慌てて二人で加賀美を止めた。
【人物紹介】
・加賀美
一年A組
小瀬の隣の席の小瀬にとって高校初の友人。
明るく気さくな人物だが時々暴走しがち。
中学の時は格ゲーの大会で外道プレイをして優勝した事から、『力道山』のオマージュで『外道山』という二つ名を貰った。
・鬼頭
一年C組
漫画好きの青年。
やたらと漫画あるあるに例えて話す。
アニメは「漫画の書込みなどが無くなるから好まない」との事。
感情の起伏はあまり無いがノリはいい方。