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初恋…

キーモとゴロちゃん、ハトたろも加わり怪談会がひと段落すると子供たちはきいママ子のケーキやビスケットを食べながら盛り上がっている


「ママのケーキ大好きだ」


「いい子ね ナナロ たくさん食べなさい」


嬉しそうにケーキを頬張るナナロのほっぺに着いた生クリームをきいママ子は微笑みながらハンカチで拭いている


ぼんやりとその様子を見ていたミーモはきいママ子の背後にピンクのマーガレットがパアァァっと咲くのを見てびっくりした


「きいママ子ちゃん、綺麗!!」


「ミーモちゃん、どうなすった?」


「キーモ、キーモ、ミーモも見えたよ! きいママ子ちゃんの母性花」


「ママの母性花は世界一綺麗で可愛いんだ」


エヘンと胸をはるシロとゴロ


「綺麗でしょう? ミーモ、この画用紙に描いてみて」


「うんっ」


双子のキーモと同様にお絵描き好きのミーモはスケッチブックでなくペラペラの薄い画用紙と鉛筆をいつも持ち歩いている


少女漫画のベルばらの如く瞳がキラキラして耽美なきいママ子とその後ろに咲いているピンクのマーガレットを丁寧に描いていく


「ほぉ…これまた華やかだね


マーガレットが咲いているのか


きいママ子ちゃんが漫画チックで可愛いね


 姉妹でも違う画風になるんだなぁ はっはっはっ」


「まあまあ、こんなに綺麗に描いてくれてありがとう


ミーモちゃん、上手ね」


「ミーモちゃんもキーモちゃんも凄い凄い」


母性豊かで優しい子きいママ子とコキマが拍手をしてくれてミーモは照れながらも嬉しそうだ


「ありがとう ミーモは漫画描くの好きなんだ」



「お上手ですね ミーモ様」



ミーモを優しく見守る騎士の姿のルディにお茶を差し出しながらコハが聞いてくる



「ルディはどうしてそんなにパパのポエムが好きなの?」




「それはね コハちゃんのパパのママに対する愛情が痛いほど伝わって感動するからなんだ


パパのポエムは素晴らしいよ!」


「ねえねえ ルディは好きな人いるの?


やっぱり魔性犬?」


インコのともピュルに突っ込まれルディは即答した


「いるよ…でも魔性犬じゃない 素直で可愛い人なんだ」



ガーン……


大好きなルディに好きな人がいたなんて…そんなこと考えても見なかったミーモはショックだった


「やだ…」


聞こえるか聞こえないかの小さな声でミーモは呟いた


「そんなのやだ! ルディなんか大嫌い!!」



いつもは大人しいミーモが突然癇癪を起して部屋から出て行ったのでその場にいた全員がびっくりして気まずいムードになりルディはショックのあまりハスキーに


戻っていた


「ピュルル どうしよう…」


心配しておろおろするともピュルの頭を撫でると きいママ子は慌ててミーモの後を追う


ミーモは庭園にある温室で座り込んで膝を抱えて俯いていた


「ミーモちゃん、どうなすった?」


泣いているミーモを優しく抱きしめながらきいママ子はゆっくりと話し出す



「ピュルが変なこと聞いてごめんなさいね


ミーモちゃん、大丈夫よ


ルディは好きな人なんていないわ」


「でもっ…でも…ヒック…素直で可愛いって言ってたもん! …うう…おかしいよ! わんちゃんなのに!!」



ミーモはポロポロと涙を零すときいママ子に抱き着いて嗚咽をあげる


きいママ子はミーモの背中を撫でながら優しく話しかける


「泣かないでお口を開けてごらん」


きいママ子の長く華奢な指が可愛らしいキャンディをつまんでポイっとミーモの口に入れる


甘く優しいミルキー味が一瞬で溶けてゆきミーモは気を失った



「忘却のキャンディよ


目が覚める頃には忘れているわ


この子は…あなたが好きなのね…」


影から様子を見ていたルディに話しかける


「ありがとうございます


私はミーモ様を傷付けるつもりは爪の先ほどもございません…」


きいママ子はにっこりと微笑んで人差し指でシーッとすると ルディの言葉を制した


「わかっているわ


愛しているのでしょう ミーモちゃんを…」


「……」


「まだまだ子供ですものね…


ぼんやりしているのに激しい子だわ…でも…まだまだ恋を語るには幼すぎるわ


ルディさん、もう少し…この子が成長するまで待ってあげられる?」


「もちろんです! この事はキニー様とコージュ様には…」



「大丈夫よ


私はお喋りではないから安心なさって



コージュが知ったらあなた、決闘を申し込まれちゃうもの(笑)」



「それに…この子の初恋を踏みにじりたくないわ


このことは二人の秘密よ よくって?」


「はい! この命賭けて誓います  ありがとうございます きいママ子様…」


「それじゃ 行きましょうか


あの場にいた子供たちの記憶は今頃 ハトたろが消してくれているわ


安心なさいな」


「私の記憶も消すの?」


「まあ…キーモちゃん」


ミーモが心配でついてきちゃった


「あの子、ルディのお嫁さんになりたいって言ってたからショックだったんだよ


キーモは誰にも言わない


何も知らないし聞いていないよ


ミーモを傷付けたくないから でもね ルディ、もしミーモを泣かせたら私、絶対に許さないから…」


「キーモ様…お約束致します」


「番い想いのキーモちゃんは記憶を消さなくてもよさそうね」


そう言いながらキーモの頭を撫でると一瞬で忘却の粉を振りかけ、キーモはパタリと気を失った


眠っている小さな姉妹を抱っこすると、きいママ子は「うふふ」と悪戯っぽくウインクしてルディと共にキニー夫妻と子供たちの待つ家へと戻って行った



「きみは本当に素晴らしいよ…きいママ子ちゃん…ああ…僕の胸にまた…恋の花が咲いてしまった


燃えるような真紅の薔薇が…」


きいママ子とルディの様子を影からそっと伺いながら妻へよする心のポエムを不気味に呟くハトたろだった















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