ハロウィンタウン8
ハロウィンタウンの街並みは黒とオレンジ色で溢れている
カボチャの形の屋根が連なり窓からはあたたかな明かりが見え玄関や庭には凝ったピカピカ光るお化けや小さなジャックオーランタンがふわふわと飛んでいる
「さすが本場だなぁ…デコレーションじゃなくお化けやランタンが飛んでて面白い」
「庭や玄関に飛んでいる子たちは各家を守護している精霊なんですよ」
「ちっちゃくて可愛い~ひとりずつ連れて帰りたくなっちゃう」
「うふふっ、まず一件目は800歳の魔女のおうちよ」
「800歳! 私たちの大先輩ね」
「そうだべそうだべ。私たち小鳩はれっきとした魔女だから」
「ジュリリ…どんなおばあさんなんだろう」
少し錆びれた漆黒の門は訪れる子供たちのために開いていた
ジャッコとジャクコが手を繋ぎ玄関の呼び鈴を鳴らす
リーンゴーン リーンゴーン…
ギイィィィィ…
カボチャのリースが飾られた扉が開かれ中から腰までたっぷりとある見事な銀髪の優しそうな女性がニコニコと微笑んでいる
「いらっしゃい」
中からどんな老婆が出てくるかと思ったのにあまりに綺麗な女性が出迎えてくれたのでミーモとキーモはびっくりした
「トリックオアトリート! お菓子をくれないと悪戯するさん♪」
「これなるは我が愛しの半身…」
女性はクスクスと笑ってお菓子の袋を抱えている
「可愛らしい番い姉妹のお化けだこと。久しぶりね!きぃちゃん、ハトモコちゃん」
「お父様から伺ったわ。おかえりなさい、ジャクコちゃん。」
「ただいま、ローザ姉さま…」
ローザは帰ってきたジャクコを抱きしめ額にそっとキスをした
「ローザちゃん、相変わらず美人さんね」
「ありがとうね。800歳の私にそんなこと言ってくれるのはきぃちゃんだけよ。はい、お菓子」
800歳!!! じゃ…この人が老婆…なの
「まあまあ、初めて見えたお化けちゃんが驚いてる(笑)お嬢さん、魔女に歳はないから老けないのよ」
「そ、そうでした!はじめまして、ローザさん。ピジョンタウンから参りましたミーモとこの子は双子のキーモです 」
丁寧にお辞儀をするミーモとキーモにローザはカボチャのお菓子ボックスをくれた
「礼儀正しい小さなレディさん、素敵なご挨拶をありがとう」
「じゃね~ローザちゃん、これからひとまわりしてくるさんよ」
「ええ、気をつけてね…あ、ちょっと待って」
ローザは木のワンドを振ると小さなランタンがたくさん現れ明かりを照らしてくれる
「その子たちが足元を照らしてくれるわ。楽しんでね。ハッピーハロウィン」
「ええ、ええ、ハッピーハロウィン」
トタトタトタ
「すごい、きぃちゃんはやっぱり慣れてる~」
「ローザちゃんと会うのは久しぶりだからね~とっても優しくていいひとだよ」
「ミーモちゃん、キーモちゃん、私たちは悪戯好きなお化けだからご挨拶しなくても大丈夫よ」
「はっ、わたしったら! そうだよね、あまりに若くて綺麗な人なのでつい挨拶しちゃった~」
「いいじゃねぇか、ふたりとも淑女ってことよ♪なっ、ルディ」
「うん、ふたりとも素敵なレディでナイトとして鼻が高いよ」
「ルディったら」
照れるミーモとキーモ
「次はヴァンパイアのドルイット伯爵、その次はフランケン一家に行くわよ~」
「ドルイット伯爵~トリックオアトリート♪」
ジャッコが扉の呼び鈴を鳴らすと
漆黒のコウモリたちが飛び交う古城から身目麗しいブロンドの巻き毛のヴァンパイアが現れ皆にコウモリのお菓子袋を配ってくれた
「ようこそ我が城へ…かわいいお化けさんたち…おかえりジャクコ姫…よかったねジャッコちゃん」
「はい、きぃちゃんとハトモコちゃん、ジニー様のお陰で帰ってこられました。もう二度とこの子と離れません」
「うん…それはよかった…これからは悪い虫がつかぬようわたしが守ってあげよう」
紳士の伯爵は静かに頷いてジャッコ姉妹の再会を祝福してくれた
次に訪ねたフランケン一家はお父さんもお母さんも子供たちも全員がフランケンシュタインで見た目は怖いがとっても優しくあたたかな人たちだった
オオカミ男にコウモリファミリー、ジャンクドールの夫婦に話すたびにグルグルと首が回るモンスターファミリー
誰もがジャクコの帰宅を喜び小鳩たちを優しく歓迎してくれた
2時間後…
すべての家を訪ねる頃、子供たちは抱えきれないお菓子をお土産に満面の笑みでホテルに戻った
※
「楽しかった~こんな経験初めて~」
「みんないい人たちだね~」
「お菓子いっぱいもらったさん♪」
「歩いてお腹すいたジュリッ」
「みなさんねお疲れ様。お夜食をお持ち致しましょうね」
ドラキュラのシェフが卵にチーズにハムにローストビーフのふわんふわんのサンドイッチや焼き立てのキッシュに10種類のリゾットを運んでくれる
「美味しそう~いただきまぁす」
皆、部屋で待っていた両親や使い魔たちに話しながら美味しい夜食を食べハロウインタウンで過ごす最後の夜を大いに楽しんだ
夜も更けて時計がそろそろ0時を指すころ…
ジャッコとジャクコはオレンジの小鳩から元のカボチャ姫に戻り皆に深々とお辞儀をする
「ジニーママ、ダンパパ、ピヨちゃん、きぃちゃん、ハトモコちゃん、江戸さん、鳩姉さま、ミーモちゃんねキーモちゃん、ルディくん、スネイプ様、ミーナ様
本当に素晴らしい時間でした。皆様のお陰てお姉さまとこうして一緒に暮らせるようになって私は感謝の気持ちでいっぱいです!」
「皆様のお陰でジャッコと暮らせるようになりました…本当に本当に…」
ジャッコもジャクコもお礼を言いながら涙が止まらず言葉が詰まってしまう…
コンコン
するとドアがノックされジャックが現れた
「ダン様っ、ジニー様…きい様、ハトモコ様…皆様のお陰てまた親子水入らずで暮らせるようになりました。
心よりお礼を申し上げます」
「まあまあ、ジャクさんもジャコちゃんたちも頭を上げてちょうだい。母親として当たり前のことをしただけよ」
ジニーの言葉に涙を流しながらジャックは話し続けた
「それで…お礼と言っては何ですが…このたび、娘たちと話し合いの結果、12月にクリスマスタウンへ皆様をご招待させて頂きたいと思います」
「クリスマスタウン! 懐かしい~」
「ジャクさん、サンタさんとお友達なの?」
「はい、ミーモ様にキーモ様。彼とは幼馴染で昔、よく遊んだ仲なのです」
ハロウィンタンの王様とクリスマスタウンのサンタさんがお友達
意外な事実にミーモもキーモもジニーファミリーもスネイプ夫妻もその場にいた誰もがびっくりした
「ジニー様のお陰で娘が戻ったことをサンタに知らせましたら大変に喜んでくれてぜひ12月にご招待したいと…
旅費もホテル代も一切かかりませんので皆様のご都合の良い日から二週間ほどお体ひとつでお越しくださいませ」
「ええぇぇ!!」
「それとね…私とお姉さまは来月、一週間お休みをもらったのでピジョンタウンに遊びに伺いたいのだけれど…」
恥じらいながら話すジャッコとジャクコをジニーは優しく抱き寄せる
「素晴らしいわ…ふたりとも…こんな素敵なサプライズ…また娘たちが帰ってきてくれるなんて…」
「ジャクコちゃんにジャッコちゃん、うちは大歓迎だよ。二週間と言わずひと月でも好きなだけいておくれ」
ジニーとダンのあたたかい言葉に感動してジャッコとジャクコも大号泣
「その…お恥ずかしいのだが…父親のわたしも一緒にお邪魔してもご迷惑に…」
「なるわけないさ! 」なんなら一緒に帰ろう。ジャック。俺たちはもう家族じゃないか」
「ダン様…」
ダンに肩を抱かれジャックは流れ出る涙をカボチャ柄のハンカチで拭った
「そうよ、あなたもジャッコちゃんもジャクコちゃんも大切な家族。遠慮しないで好きなだけいて頂戴」
「姉妹が増えて嬉しいさん」
「ええ、ええ。こっちに着たら一緒に田峯弘樹スペシャルに投稿しましょうね」
「田峰?」
「ピジョンタウンで国民的人気の心霊番組よ。司会は姉の鳩代姉さんとご主人の田峰さん、そして二人の娘のもとよちゃんとまとよちゃん…」
「ハトモコ、いきなりまくし立ててもわからないわよ(笑)」
「面白そう! こちらではホラー映画はあるけど心霊番組はないもの」
「また遊べるね~いっぱいいっぱい」
「また楽しみが増えたさん♪」
翌朝…
ジャックとジャッコ、ジャクコとホテルの従業員皆に見送られミーモとキーモ、ルディ、ジニー家とスネイプ夫妻は再び再会することを誓い合いハロウインタウンを後にした




