ハロウィンタウン5
「どれでもお好きなモノをどうぞ。サイズは試着されると自動的に合うようになっておりますので」
ジャッコ姉妹の父、ジャックがお礼にと上質な素材で作られている特別なコスプレ用の衣裳部屋に案内してくれた
ヴァンパイアに魔女、オオカミ男にフランケン、ゾンビ、包丁、鎌、とにかくハロウィンコスにぴったりなコスプレイヤーが見たら感動するであろう衣装とウイッグ、小物がこれでもかといわんばかりにズラリと取り揃えてある
「ヘアメイクは私の親友の魔女のピッピが担当します。彼女は時折下界にも御向いて映画撮影のメイキングもしているので腕は確かなんですよ」
「ジャッコちゃんの親友なら安心だね~」
「ピッピと申します。この度はジャッコのお姉さんを取り戻してくださりありがとうございます!
どんなご注文にもご満足頂けるよう、お応えいたしますので遠慮なさらずおっしゃってくださいね」
ジャッコとジャクコ、ジャックはジニーたちに深く頭を下げた
「この度、娘を助けていただきました御恩、我々は生涯、決して忘れは致しません。この命ある限り、皆様のために尽くさせていただきとうございます」
「頭をお上げください。ジャックさん、当然のことをしただけです。もっと早く打ち明けてくださればよかったのに」
「とんでもございません、大切なお客様にそのような…本当になんとお礼を申し上げれば…」
「ジニーママ、ジャッコね、ううんうん、オレンポね、ママとダンパパとハトモコちゃんときぃちゃんが大好き! 出来ることなら親子で使い魔になりたいくらい」
「ジャッコ…使い魔なんて言わないで。あなたは私の娘なのよ」
「ジニーママ…」
「うう…なんて…なんていじらしい子なの…ううう」
「泣かないで、ねーさん。いい子さん、グッドさんよ」
ジャッコの純粋さに号泣するハトモコの涙をきぃがミーナからもらったハンカチで拭いてくれる
「き、きーちゃんっ!!なんて優しいの…おおぉぉぉ」
「おいおい、ますます泣いちまったぜ、ハトモコちゃん、ミイラになるんだろ? 泣き止んでヘアメイクしねえとなっ」
「はっ、そうだわ。ありがとう、江戸」
「おうよ♪俺も準備してくらぁ」
「皆様、なさりたいコスプレはお決まりですか?」
ジャクコがジャッコと手を繋いでひとりひとりに丁寧に聞いてまわった
※
ミーモたちの使い魔、モールとマキーシャ姉妹は艶やかな振袖にその身を包んだグログロしている呪いの市松人形に
ともっぽ姫は風と木の詩のジルベール、セブンポッポのハトマはオーギュ
パラレルのハトモは黒執事のセバスチャン、トトはシエル
ダンとジニーは「エリザベート」のトートとシシイ
ピヨは女吸血鬼のカーミラ
新婚のぽっぽことステファンはオオカミ女とオオカミ男のカップル
キニーとコージュは特殊メイクのゾンビカップル
ミーモとキーモは「ポーの一族」のエドガーをミーモ、アランをキーモ
ミーナとスネイプは血みどろの白衣を着たクレイジードクターとナース
そしてルディはミーモのリクエストに応えて腰まである見事な銀髪の身目麗しいヴァンパイアになった
おのおのが本番まで誰にも見られぬように会場に移動した
「ルディ……」
マントを翻し膝まづくルディに見惚れて言葉を失ってしまうミーモをキーモが冷やかす
「あれぇ? エドガーの仮面が外れて女の子に戻ってるよん(笑)血を吸ってもらったら?」
「ふ、ふざけるな、アラン…てか…こんなに素敵になると思わなかった」
「お気に召されましたか? お嬢様…いえ、アラン様…素晴らしい美少年ですね…」
「……そんなっ、素敵なのはあなたじゃない…」
ルディのカッコよさにひたすらポォーッとするミーモ
「流石は純血種の息子さん」
擦り切れてボロボロの包帯を巻きつけている長身ミイラ男のきぃちゃんとハトモコにミーモ達はギヨッとする
「そ、その声は…きぃちゃん…?」
トタ…!
あ、可憐な足音は変わらないんだ
「ふふふふふ…どれだけ美を隠そうともにじみ出る品格と可憐さは偽れないわ…」
元が白目で不気味なだけにハトモコのミイラ男は絶叫しそうな迫力だ
「ハトモコちゃん…こ、怖いっ」
「皆さん、楽しんでいますか?」
口から血を流し頭に斧を突き刺した金色の瞳の不気味なブロンドの姉妹が声をかけてくる
だ、だれっ…このひと…
固まるミーモとキーモの手を握り笑い出すジャッコとジャクコ
「うふっ、ジャッコだよ、今年はお姉さまと呪われたコースト姉妹になってみたの」
「ふふふ、わかりませんでした? ジャッコ大成功ね♪」
会場中がモンスターたちで賑わいハロウィン気分が盛り上がる
「それにしても皆すごい凝ってるね~キーモ、じゃない、アラン?」
「ああ、エドガー、これじゃ誰が優勝しても納得だな」
「紳士淑女の皆さん、楽しんでますか~」
マイクを手にしたオオカミ男がステージから観光客に声をかける
「エドガー、あれって…本物…?」
「うん…たぶん…ここハロウィンタウンだし…」
「今宵は当ホテル初のコスプレ大会ですので参加者の皆様全員に特大のお菓子袋を差し上げます。
そしてなんと優勝者には魔界ならどこでも使えるクオカード10万円、準優勝には5万円分を贈呈致します」
うおおおぉぉぉぉ パチパチパチ
会場中に割れんばかりの拍手が鳴り響いた
「いゃあ~皆様、どなたも素晴らしくて選考メンバーは大変に頭を悩ませました…
あ、結果の封筒が届きましたよ」
鎧姿の首のない騎士から受け取った封を開け、司会のオオカミ男は発表する
「発表します! 栄えあるコスプレ優勝者は…ハトモコ・セフィロスとキィ・セフィロスの恐怖のミイラ男!!」
「え、私たち?」
「ねーさん、やったさん♪」
「そして…準優勝は…近づかれると何をされるかわからないイカれたクレイジードクターとナースのスネイプ・ノアールとミーナ・ノアールご夫妻ですっ」
「まあ、あなた、嬉しいわ」
「特殊メイクした甲斐があったな」
「そしてそして…会場の誰もがため息をついてしまった麗しのヴァンパイア! ルディ・ノアール様、その姿に振り向かずにはいられない白塗りの助六、江戸・セフイロス様、おどろおどろしくも美しい呪いの市松人形、モール様とマキーシャ様に特別賞が贈られます!」
「やった! ルディとモールとマキーシャが特別賞だ~」
「マキーシャ、やったわね」
「ええ、お姉さま♪」
「凄い凄い、三人ともおめでとう!」
「江戸、グッドさん」
「嬉しいぜ、ルディ、おめ♪」
「ああ、江戸、かっこいいぞ」
「それでは受賞された皆様、どうぞステージにおあがりください」
「ありがとう…ございます…姉のハトモコ・セフィロスです。妹のキィ・セフイロスは声が可愛すぎて心配なのでたった今、魔力で声質を変えました。さあ、きぃちゃん…」
「きぃ・セフィロスです。ねーさんと優勝できて嬉しいです。今回、家族揃ってコスプレ大会に出場できたことを何よりうれしく思います。
番い姉妹の絆は永遠さん!」
「永遠さん!! ええ、ええ、立派だわ、きーちゃん」
きぃを抱きしめながら泣き崩れて包帯が涙で血だらけになりますますホラーなハトモコと
物凄いしゃがれたハスキーヴォイスのきぃちゃんに会場は割れんばかりの拍手を送った
「準優勝のノアールご夫妻、ひと言、お願いします」
「愛する妻と息子共々受賞できたことが何よりの喜びです。ありがとうございました」
「顔を緑色にメイクしてよかったですわ」
「ありがとうございました! 続きまして特別賞の江戸様、モール様、マキーシャ様、ルディ様、お願いします」
「江戸・セフイロスです。大切なお嬢様方が優勝されたことが何よりの喜びです。
きぃ様、ハトモコ様、本当におめでとうございます!ありがとうございました!」
江戸弁全開で話すと思いきやノーブルで流暢な話し方と騎士の鏡のような忠実さに誰もが感動の拍手を贈った
「姉のモールです。賞を頂けるなんて夢のようで頭がぼぉーっとしております」
「妹のマキーシャです。初めてのコスプレで姉と共に受賞できて大変に幸せです。
わたくしたちがこうして笑顔でここにいられるのはミーモ様とキーモ様のお陰です…」
二人の口からミーモ達との出会いとキニーに蘇生され使い魔になるまでのプロセスが語られ
観客はハンカチで涙を拭っていた
「モール…マキーシャ…ありがとうだよ」
「嬉しいけど…恥ずかしいね。えへ」
「では最後に準優勝されたノアールご夫妻の息子さん、ルディ様です」
パチパチパチ
ルディはふわりとマントを翻し静かにお辞儀をする
「最愛のひとからの願いに応えられて幸せです…」
「おお、と、いうことは恋人からのリクエストですか?」
「はい…恋人と言うには早すぎますしおこがましいですが心から愛するヴァンパイア好きな人のリクエストです。なのでこの賞は彼女に捧げたいと思います」
ルディ…え、え、…最愛のひと…心から…愛する…って聞こえたんだけど…
あ…れ…目が回る…どうし…
「ミーモ、ちょ、ミーモ、しっかりして」
「どうした、ミーモ!」
「ミーモちゃん…」
驚きと興奮と感動のあまり失神するミーモだった




