ハロウィンタウン3
「おはようございまぁす♪ ハロウィンティーをお持ち致しました」
シフオンのふわふわなリボンを頭にのせたジャッコ姫がモーニングティーを運んでくれる
「まあ、綺麗な色ね!」
「うちの畑のカボチャで作ったパンプキンのお茶にパンプキンクッキーです。
お砂糖なしでもほんのり甘いんですよ」
クンクン…「甘い匂いがするぅ♪キーモ、ルディ、嗅いでみて」
「どれどれ…クンクン…ほんとだっ! 」
クンクンクン…コクリ…「美味しい! ミーモ、キーモ、飲んでごらんよ」
「う~ん、ほんのり甘くていい香り…ジャッコちゃん、このお茶はお土産で売ってないの?」
「はい。売店で売って折れますよ。お気に召しましたか?」
「うん♪おうちでも毎日飲みたい~」
ジャッコ姫は嬉しそうに微笑んでて可憐にワンピースの裾を両手でつまんでペコリとお辞儀をする
「よかった!ではお昼はパンプキンラテをお持ち致しましょうね。
ミーモちゃん、キーモちゃん、今宵はコスプレ大会ですよ。参加されるならお衣装を各種取り揃えて御座いますのでおっしゃってくださいね」
キーモの瞳が輝いた
「そうそう、私とミーモはまだ何のコスするか決まってないの。ジャッコちゃん、ぜひ見せて。
それとね…私たち、お友達になったんだから敬語は使わないでね。ねっ、ジャッコちゃん」
「うん、こんな可愛らしいお姫様とお友達になれたんだもん。敬語禁止令よ~」
「嬉しい♪ わかったわ、ミーモちゃん、キーモちゃん、じゃあ朝食が済んだらコスプレの衣裳部屋に案内するわ」
「やったぁ♪」
同時に手を取り合い喜ぶミーモとキーモに微笑みながら
「仲が良くてい羨ましいな、私の姉は結婚しちゃったから」
「お姉さんが…さみしいね…嫁がれてから会ってないの?」
「うん…数か月に一度くらい会いに来てくれるけど…ご主人がお姉さまにベタぼれで外出を嫌がるのよ」
キーモとミーモはジャッコの話を聞いてある人に言わなくては! と思い立った
「ジャッコちゃん、ハトモコちゃんのお部屋にいこっ」
「え…ハトモコちゃんのお部屋に? でも私、お客様にハロウィンティーをお持ちしないと…」
「それなら…」
キーモがえいっとワンドを振るともう一人のジャッコ姫が姿を現してジャッコ姫はびっくり
「キニーママ、完璧な仕上げをお願い」
「いつの間にキーモ、この魔法を覚えたの? いいわ、ジャッコちゃん、待っていてね」
「ひどい男ね…番い愛を引き裂くなんて…」
背後から聞き覚えのあるたった今、会いに行こうとしていたハトモコの声にミーモもキーモもルディもジャッコ姫も驚いた
「我が番い大魔王の名において命じる…クルクルクル…ルルルルッポー!」
モルガナイトのついたワンドをハトモコが降るとジャッコ姫のそっくりさんをキラキラした金色の光が取り巻いて言葉を発した
「私はあなたの身代わりのジャッコ姫です。今日一日、代わりにお仕事をこなすのでご安心を」
「え、え、私…私がもうひとり…」
「完璧なあなたのコピーのジャッコちゃんだから安心よ。誰にもバレずに任務をこなせるわ」
トタッ…「流石ねーさん、天才さん」
「きぃちゃぁん♪」
抱き合うミーモとキーモとジャコ姫ときぃちゃん
「話は聞いたさんよ。なんだ、その夫…ムカつく」
「番い大魔王の名にかけて見過ごすわけにはいかないわ…」
「そうね、いくら奥様を愛しいとはいえ妹にも会わせないなんてひどすぎるわ…いいわ…ハトモコ、おやりなさい。
その代わり、ジャッコちゃんのお姉さんとご主人を引き裂いてはダメよ」
きぃちゃん姉妹の背後に今度はジニーが佇んでいる
「ジニーママ! わかったわ。夫婦を割かなきゃいいのね…」
「ねーさん、きぃも手伝うさん。ねぇ江戸」
「おう、あったりめぇよ、こんなにちいせぇジャッコちゃんを泣かせて許せねぇ…」
「私もね、シスコンだからジャッコちゃんの気持ちがわかるの…もしもダンがピヨと会うななんていったら即離婚するわ」
「おいおい、そんなこと言うわけないだろう、ひどいなぁジニー」
「パパ! ジャッコちゃんがかわいそうさん…お姉さんと会わせてあげていいよね?」
「もちろんさ。きぃちゃん。ジャッコ姫、辛かったね…もう大丈夫だよ。すぐにでもお姉さんと会わせてあげような」
「ダン様…ジニー様…ハトモコちゃんにきぃちゃん…キニー様、江戸くん…みんな…ありがとう」
皆の優しさに泣き崩れるジャッコ姫にルディがそっとハンカチを差し出した
「俺も力になるよ。おっと、敬語は不要だぜ」
「ありがとうルディ、こちらこそよろしくね」
「それでは…まず腹ごしらえといこうか。皆、朝食バイキングに行くぞ」
「わぁい、お腹すいたぁ♪」
「ここのモーニングどんなだろう?」
「パンケーキや各種のパンにリゾット、ピラフ、お肉もお魚もサラダもスイーツも取り揃えて御座いますよ」
ジャッコ姫のコピーが説明する
「すごいわ! 本当に私そっくり」
「見事ねハトモコ、これなら安心ねジャッコちゃん。そうだわ、私たちが滞在する31日までこの子に仕事は任せなさいな」
「えっ」
「きみのお父さんにはバレないから安心おし。ハトモコは番い愛のことにかけちゃとんでもない魔力を発揮するからね」
「パパ、待ってさん。ねーさんはすべてが素晴らしいさんなの」
「き、きぃちゃん…」
血の涙を流すハトモコに拍手するミーモとキーモとジャッコ姫
「皆さん、ありがとうございます。お言葉に甘えて今日からお休みさせて頂きますね」
「OK…そうと決まればその姿はまずいな…」
ダンが呪文を唱えると…なんということだ! ジャッコ姫は一瞬でオレンジ色の翼と黒い嘴の可愛らしい小鳩に姿を変えてしまう
「パパ、すごいさん」ダンにスリスリするきぃちゃん
「素晴らしい…素晴らしいわパパ、これなら周りに絶対に気づかれないわ! パパ、尊敬します」
感動してダンに抱き着くハトモコ
「ハトモコ…お前が俺を尊敬してくれるのか…嬉しいよ」
「ええ…だってパパ、きぃが生まれ変われたのはパパとママのお陰だもの」
「ハトモコ…」きぃ一筋のハトモコはめったに自分に甘えてくれないので感動して瞳を潤ませるダンにきぃが言葉を発する
「パパ、ねーさんは不器用さんなの、いつもパパとママが大好きで、感謝してるって言ってるよ」
「そうだったのね…ハトモコ」
ハトモコは涙をグイっと羽根で拭いながらオレンジ鳩になったジャッコ姫に言った
「私はね…前世できぃちゃんを失ってから何度も生まれ変わって、また離れてを繰り返したの…愛する姉妹と離れる辛さは誰よりもよくわかるわ
だからこそ…許せない、会いたがっているふたりを阻むそのバカ男!」
「ジャッコちゃんは鮮やかなオレンジ色だからオレンポって呼ぶさん」
「きぃちゃん…ハトモコちゃん…私…私、なんて言ったらいいか…ありがとう」
「お礼なんていいのよ、ジャ…オレンポ。31日まであなたは私の娘、私たちの部屋に泊ってね。私のことはママって呼ぶのよ」
悪戯っぽくウインクするジニーにジャッコ、いや、オレンポは涙をハラハラと零して頷いた
「あり…がとうございます…ジニーママ…私、私のママは身体が弱くて…私を産んですぐに儚くなってしまったの…数日でも娘になれて嬉しい…」
ジニーは優しくオレンポを抱きしめる
「そうだったのね…あなたさえよければ正式に鳩として愛娘になってくれていいのよ」
「それは困りますよ。ジニー様」
その声に振り向くと黒い燕尾服に身を包んだ背の高いカボチャ頭の紳士が佇んでいた
「パパ…」
「話は聞いたよ…ジャッコ…忙しさにかまけてお前の寂しさもわかってやれずにすまなかった…
ジニー様、ジャッコは亡き妻が命懸けで与えてくれたかけがえのない宝物です。養女にされるのだけはご勘弁ください。
ですが…お言葉に甘えてご滞在までこの子に休暇をとらせましょう。何卒、よろしくお願いいたします」
「承知しましたわ、ジャック大王。よかったわね、オレンポ」
「パパ…ありがとう…わがまま言ってごめんなさい」
ジャックはオレンポの頭を優しく撫でながら言った
「いいんだよ。お前はいつも一生懸命に働いてくれてホテルの皆を引き立ててくれている。
今までなにひとつ、わがままなんて言ったことないじゃないか…嫁いだジャクコもさぞや、お前に会いたがっているだろう…
ジニー様、かくいうわたくしも、里帰りをさせないジャクコの夫を腹立たしく思っておりました。わたくしの胸の内を聞いていただけますでしょうか…」
働いている陰で姉を恋しがり泣いているジャッコを見かねたジャックは、ジャッコにたまには顔を見せるようにメールや手紙を何度も出したが返事ひとつ帰ってこないので、使い魔のコウモリに調べさせると
ジャクコの夫が妻を帰らせまいと手紙もメールも見せずに処分していたことがわかり、ジャックは腹立たしさとショックでどうしたものかとずっと悩んでいたという
30分後…ジニーはジャックの腹の内を聞き、静かに頷いた
「わかりました…あなたとお話しするのは初めてですがとても親しみを感じるわ。今日からわたくしたちはお友達。
大事な友達を傷つけるものは…このピジョンタウンの女王、ジニーが許すわけにはいきません…」
「ジニー様…有難き幸せでございます」
「様は…いらんだろう。ジャックとやら…及ばずながらこのピヨ、黙ってはおられん。貴殿と我ら姉妹は友になった。
友達に敬語は不要だぞ。ぴぃぴりぴぃ」
「あら、ピヨ~いつの間にいたの? もう可愛いんだから」
「ふっふっふっふ…ジニー、オレンポ、そしてハトモコ、このピヨも力になろうぞ」
「ピヨちゃん、かっこいいさん」
「嬉しい…ありがとうピヨちゃん」
オレンポになったジャッコ姫はあとからあとから涙を零しながら
「本当に…本当にありがとうございます…皆さん、この御恩は絶対に忘れません…私、お姉さまに会いたい!」
「オレンポちゃん、その願い、このハトモコが叶えましょう…」
「キーモ…感動だよ」
「うん、ミーモ…みんな、みんな、ハートが熱いね…」
「こうなったら、何がなんでもお姉さんにあわせてあげたいぜ」
離れ離れになってしまったジャッコ姉妹を再会させるべくその場にいる誰もが心をひとつにしていた




