表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/93

虹桜

「ママ~お弁当できたぁ?」


「はいはい ちゃんと出来ていますよ♪」


「ミーモの好きなハンバーグさんも入ってる?」


「もちろん たくさんあるわよ」


「ピジョン公園の桜さん 楽しみだね キーモ♪」


「ね~ミーモ♪あたしぃ虹桜さんに会うの楽しみぃ」


「虹桜さんって?」


「おや、ミーモには話してなかったかな これから会いに行く虹色の桜さんだよ」


「えぇ~すごいっ 虹みたいなお色なの?」



桜が開花してピジョンタウンはお花見盛り


四季折々の花々が美しいピジョン公園では今年も1万本の桜が華やかに春を告げている


ミーモとキーモは初めて行くピジョン公園のお花見にわくわくだ


「せっかくだからどこでもドアじゃなく鳩バスで行きましょうよ、コージュ」


「そうだな ポッポ子姉さんがバスガイドしているしね」


「ルディも誘いたかったなぁ」


「まだ言ってるの?ミーモ 仕方ないよ 家族旅行に行ってるんだから」


「ミーモは本当にルディが好きなんだな パパの強力なライバルだ(笑)」


「パパには敵わないもん あー、バス来たぁ」



ポッポー♪


白い鳩の形のバスがバス停に止まり入るとキニーママの鳩姉妹のポッポ子姉さんが制服姿で微笑んでいる


「鳩バスへようこそ~ええ、ええ キニーとコージュ、久しぶりね くるるっ」


「ポッポ子ちゃんだぁ」


「あら、ミーモちゃんにキーモちゃん ようこそ鳩バスへ」


「よかったわ 混んでいなくて…後ろに座りましょ」


「お花見でしょう? 虹桜が見頃よ」


「ねえねえ ポッポ子ちゃん、どうして虹桜っていうの?」


「ちょうどいいわ バスが出発したら教えてあげる」


「それでは出発しまぁす くるるっ 今日はお花見日和なのでピジョン公園の虹桜についてお話ししたいと思います」



ポッポ子はゆっくりと語り始めた



その昔…虹桜は薄紅色の花を咲かせる小さな桜でした


ある日 ルビィという名の小さな魔女が明日受ける魔女試験に受かるようにとその桜の下でお祈りをしていたのです


「桜さん、明日は試験なの


一生懸命 魔法書を憶えたけど自信ないんだ どうか受かるように見守っていてね」


ルビィがそう祈ると桜の木からふわふわの桜色の髪をした可愛らしい少女が出てきたのです


「あ、あなたは…誰…」


突然 桜の木の中から自分と同い年くらいの少女が姿を現したのでルビィはびっくりして動けずにいます


「脅かしてごめんなさい 私はレイン…この桜の精霊なの」


「レイン…ちゃんね 私はルビィ B地区に住んでる魔女だよ」


レインはルビィの顔をじっと見つめた


「大丈夫 あなた試験に受かると思うわ


でもね 守護の魔法の呪文を間違えやすいから気を付けて」


ルビィはびっくりした


攻撃の魔法は完璧に覚えたが守護の魔法がイマイチ覚えられないのだ



「そうなの 私、守護の呪文が苦手でどうしても間違えちゃって」


「大丈夫よ ルビィちゃん あなたは守りたいって思う人はいる?」


「うん! いるよ 生まれたばかりの私の妹」


「じゃあ…その子の顔を浮かべて試験に臨むといいわ 絶対に受かるから」


「わかったわ ありがとう!」


「レインちゃんは守りたい人、いるの?」


レインは少し寂しそうに頷いた


「私は家族はいないから…このピジョンタウンにいる人達かな」


「パパやママはいないの? 兄妹も?」


「いないよ…長老様が私の種をここへ埋められたけどパパじゃない」


悲しそうに応えるレインを見て悪いこと聞いちゃったな、と反省するルビィに気付いたようにレインは笑った



「ふふっ 心配しないでルビィちゃん


1人には慣れているから


それにね…まだ私は小さいけれど大きくなったら虹桜に変わるのよ」


「虹…桜?」


「そう…虹のように七色の桜になるのよ


その時が来たら花お越しの風男が現れて起きろよって声をかけるんですって


そして私が目を覚ますと…運命の風男と恋に落ちて虹色に輝く八重の花びらを咲かせる虹桜になるそうなの


だからそれまではひとりぼっちで寂しいけれどもう少しの辛抱なのよ」


ルビィは真剣な面差しで話を聞くとレインの小さな手を握りしめて言った


「そうなのね


わかった 私もレインちゃんが一日も早く大きくなって風男さんに会えるようお祈りする!」


「ありがとう ルビィちゃん


試験に受かったら会いに来てね」


「うん、絶対に来るよ」


二人はそう約束して翌日、ルビィはレインに教えてもらったとおりに自分が心から守りたい愛しい妹の顔を思い浮かべて試験を受けた


自分でもびっくりするほど落ち着いて受けられたので満点で合格しその足でピジョン公園に行くと…


昨日までいたはずの薄紅色の小さな桜の木はなくなっていた


そんな…


確かに昨日 ここでレインと会ってお話ししたのに…


「レインをお探しかな? お嬢さん…」


呆然と立ちすくんでいたルビィに公園の桜を管理している長老がそっと近づいてきて話しかけてきた


「あ、はい…昨日、約束したんです


試験に受かったらまたここで会おうって」


長老は深いため息をつくと…真っ直ぐにルビィを見つめて語り始める


「あの子は…身体が弱くてのぉ なかなか育たずに本来ならとっくに大人になり虹桜に変貌しているはずなんじゃが


何年たっても小さいままで…


お花見の季節が来ても小さな薄紅桜を目にとめる者がなくあの子は孤独じゃった

いつも寂しさと戦いながらいつかは大きくなって運命の人が自分を虹桜にかえてくれると信じて待っておったのじゃが…


どんなに肥料をあげても大きくなれず…花数も年々減ってしまい今年が最後じゃった


きっと自分に話しかけてくれたお嬢さんの役に立ちたくて最後の力を使ったのじゃろう」


長老の話を聞き終えるとルビィはポロポロと涙を零した


「そんな 嘘 嘘よ だって言ってたの 今に大きくなって運命の風男さんに会えるんだって…


もう少しで大人になれるから…それまで頑張るって…」


自分のためにただでさえ弱い身体に鞭打って力を使ってしまったレイン


「ごめんね…ごめんね…私がここに来なければよかったのに…そしたらレインは…大きく…なれたかもしれないのに…」


ルビィはレインと話した場所に蹲り何粒も何粒も涙を零した


「それは違う…お嬢さん あの子は弱くていずれは枯れる運命じゃった


最後にあんたのような優しい友達が出来て嬉しかったんじゃろう 見てごらん」


「え?」


ルビィの涙が落ちた土から小さな芽がピョコンと顔を出している


「これ…」


「虹桜の芽…じゃよ お嬢さんの優しさか通じてあの子の魂が新芽として蘇ったんじゃ


お嬢さん、お願いがあるんじゃが…


たまにでよいのでここへ来て話しかけてやっておくれ


今度こそ 丈夫な桜に育つように」


ルビィは涙を拭うと長老に約束した


「わかりました


私、明日から毎日来ます


パパとママ、妹も連れてレインに会いに絶対に来ます」


それから毎日毎日 ルビィは約束通りその場所に訪れては桜の木に話しかけていた


やがて…その芽は立派な樹に成長し翌年の春…


部屋で寝ているルビィの枕もとから桜の香りと共に声が聞こえた



ルビィちゃん…ありがとう…


びっくりした飛び起きると目の前に虹色の長い髪をなびかせた美しい女性が嬉しそうに微笑んで佇んでいた


「あなた…レインちゃん…なの?」


あなたのお陰で運命の人と出会えました


本当にありがとう


そう言うと彼女は虹色の桜の花びらの髪飾りをルビィの手にそっとのせて消えていった


翌朝…寝ている自分の手の中にレインがくれたであろう虹色の桜の花びらの髪飾りが握りしめられていて夢ではないことを確信したルビィは朝食もとらずに急いでピジョン公園に行くと…


それはそれは大きな虹桜が甘い香りを漂わせ艶やかに虹色の八重の花をたくさん咲かせていていたそうです





キキー


ポッポ子が伝説を語り終えると



「くるるっ バスがピジョン公園に到着しました


それでは皆様、虹桜をお楽しみくださいませ」



「ありがとう ポッポ子ちゃん」


「うふふ どういたしまして 今度遊びに行くわね」


「うん、待ってる♪」


「パパ、ママ、はやくはやく~!」


色とりどりに迎えてくれる艶やかな桜たちを潜り抜け



ミーモとキーモはパパとママと手を繋いで大きな虹桜の木に駆け寄った



まさに満開といわんばかりの虹桜は太陽の光に花びらが透けてキラキラと輝いている


溢れんばかりに咲いている虹色の桜に誰もがため息を零して見惚れずにはいられない


「わあぁぁぁ~すごいすごい!! レインちゃんだぁぁ」


「すごぉぉい!! 本当に虹みたい…キラキラしてる」


「今年は一段と見事だなぁ」


「夢のような光景ね…来年もまた来ましょうね」



そして…華やかに咲いている虹桜の隣には まるで寄り添うように10cmほど背の高い緑色の花を咲かせた風桜が佇んでいた











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ