ハトたろの体験
「ハトモコちゃんときぃちゃんの心温まる体験談でした!
続きまして…ピジョンタウンB地区のハトたろ先生の投稿です。
愛妻のきぃママ子さんに捧げたポエム『妻ヘよする』がベストセラーとなっているハトたろ先生がなんと!
今夜、奥様とスタジオにお越しくださいました。
皆さん、盛大な拍手でお迎えください。ハトたろ先生、どうぞこちらへ!」
パチパチパチパチ…
「パパ、ママ、頑張って~」
観覧席から手を振るハとたろの子供たち
ハトたろは満面の笑みできぃママ子と手を繋いで田峯の隣に座った
「いやいや、田峯くん、鳩代ちゃん、お招きいただいてどうも」
「相変わらずラブラブですね~お家でもそうなんですか?」
しっかと手を握り合っている二人に田峯は微笑んで質問する
「ああ、妻に見惚れない日はないよ。だからポエムを捧げているんだ、はっはっは」
「うふふ、ハトたろ兄さんはきぃママ子姉さんに下手惚れなのよね」
ツッコミを入れる鳩代にきぃママ子が応えた
「とんでもありませんわ…私のほうが主人に夢中なんです」
「これはこれは…当てられちゃうな~」
「それで兄さん、今回はどんな体験を?」
「ああ、先日、仕上げた原稿を出版社へ持っていった帰りにちょっと不思議な事があってね…VTRスタート!」
「いゃあ~はっはっは、勝手に申し訳ない、ぼく一度ね、これやりたかったんですよ~」
「あなたったら…可愛いでしょう?」きぃママ子に振られ微笑む鳩代
「本当ね。兄さん、ピュアだから、くすくす…では、ハトたろ先生、再現ドラマの紹介お願いします」
ハトたろはきぃママ子と手を握りながら一緒に「それでは改めまして、僕たちの恐怖体験をご覧ください…VTR、スタート!」
「パパったら仕切ってる(笑)」
「やっぱりマスコミ慣れしてるね~ほらコハちゃん、始まるよ~」
観覧席の子供たちは盛り上がりながらハトたろの再現ドラマに注目した
※
あれは先日、仕上がった原稿を出版社に届けた帰りの出来事でした
トタトタトタ…
ぼくは妻と子供たちにお土産を買っていこうと思い「鳩はお茶が好き」でやっているチーズケーキフェアに行くつもりだったのですが
いつもの道すがら、お好み焼きの屋台が出ていたので思わず足を止めたのです
おや…たこ焼きじゃなくお好み焼きの屋台か…珍しいな
グルメで食いしん坊なぼくはひとつ味見をして美味しかったら買おうと思いお好み焼きを焼いている店主に話しかけました
「いやいや、お好み焼きの屋台とは、きみ、珍しいね~ひとつ頂こうか。豚玉と海鮮焼きはあるかい?」
背の高い男性はうつ向いたまま返事もせず焼きたてのお好み焼きを一枚包むとぼくに渡したので
感じ悪い男だな…と思いながら値段を聞いたんです
「300円です…うちはミックス焼きしかありませんので…」
「ほぉ、こりゃまた随分と良心的な値段だね♪」
僕はあまりの安さに不安になったので割りばしでひと口味見をすると…
口の中に海鮮の香りとやわらかい豚肉と軽くてふんわりしたくちどけのいい生地が絶妙に絡み合ったえもいえない美味しさにびっくりしたのです
これは人数分、買っていかんとな…きぃママ子ちゃんも子供たちも喜ぶぞ~
ぼくは改めて人数分注文しようとすると…ついさっきまでいたはずの屋台は忽然と姿を消していたんです
そんな…バカな…ついさっき買ったばっかりなのに…
夢でもみたのかと一瞬自分を疑いましたがぼくの手元には温かいお好み焼きのパックが残っていました
あいつ、瞬間移動でもしたのか?
なんとも何かに化かされたような気がして結局、予定通りに「鳩はお茶が好き」でチーズケーキを買って家に帰りさっそく妻に話してみると意外な答えが返ってきたのです
「まあ、うふふ、あなたったらそんなことおっしゃって…ちゃんと人数分、入ってますわ」
人数分? そんなはずは…
「ええっ、きぃママ子ちゃん、からかっちゃいかんよ~」
妻は笑いながら人数分のお好み焼きを食卓に出したのでぼくは心臓が止まるかと思い冷や汗が出ました
「パパ、どうしたの?」
「あなた、どうなすった? 震えておいでよ…」
「ぱぱ、大丈夫?」
妻と子供たちに心配をかけたらよくないと思いながらも戸惑いを隠せなかった僕は半信半疑でお好み焼きをもう一度食べてみました
美味しい…さっきより熱々で味も断然よくなってる…
「ぼくも食べよう~♪」
「コトハも~」
「ピュルル♪」
妻の煎れてくれた緑茶と食べたのですがその美味しさたるや! 信じられないほど極上のお好み焼きでした
「まあ…なんて優しい味なのかしら…こんな口どけのいいふわふわの生地、生まれて初めてですわ」
「エビやイカさんも大きくてプリプリ~♪お肉もたくさん入ってる」
「ぼくのはチーズがいっぱい入ってるよ」
「私のはホタテがいっぱいある」
「どういうことだ? 店主は一種類しかないと言っていたのにそれぞれ具材が違うとは…」
そうなんです
ミックス焼きしかないと言っていたのに我々のお好み焼きは各自の好きな具材がたっぷり入っていて…ぼくはシーフードとキャベツとチーズ
妻は豚肉たっぷり、コハはホタテとチーズ、イチロはチーズとベーコン、サブロはエビ、イカ、豚肉がたっぷりピュルはジャガイモとチーズと全員が好きな具材が
たっぷり入ったお好み焼きでした
あまりの美味しさに虜になった私達家族はもう一度そのお好み焼きが食べたくて昨日の場所に行ったのですが、どこにもあの屋台はありませんでした
それから一週間近く、通い続けましたがとうとうあのお好み焼き屋さんは見つからず…もしかしたら店主の気まぐれでいろんな街に現れるのかもしれません
そういう今もきっと何処かで美味しいにおいを漂わせているのかも
もしもあなたがお好み焼きの屋台を見かけたら…絶対に買うことをお薦めします
※
パチパチパチパチ…
「わぁ面白かった~ミーモも食べたい」
「キーモも~」
「いゃあ~、実に気になりますね~その謎のお好み焼き、ぜひとも取材してみたいな」
「本当ですね~食べてみたいわ~」
すると…いつも無口な妖怪正面ジジイがニヤリとしながら
「実は…今朝、見かけましてね、店主さんに焼いてもらいました。スタジオに用意しています! 皆さん、お召し上がりください」
ワーワーワー♪
スタッフが熱々のお好み焼きを観覧席とスタジオにいる田峯、鳩代、ハタたろ、きいママ子に配っている
「これは美味い! こんなの初めてだ…」
「なんなの…この美味しさ…兄さん、兄さんが食べたのはこれなの?」
「うん、間違いない! あの日に食べたのとまったくおんなじ味だよ」
「本当ですわ、具材もそのまま…」
「彼は数百年に一度、会えるか会えないかの幸せのお好み焼き屋さんなんです」
「妖怪くん、どういうこと?」
「スタジオには出ないのを条件に取材させてくれてね…魔法使いの彼が奇跡の粉で焼き上げるお好み焼きは食べる人によってそれぞれの好みで具材が
変わり食べた者は生涯、無病息災で変わらない愛情に育まれるという幸せ焼きだそうです」
「凄いわね、妖怪さん、よくまぁタイミングよく会えたわね」
「美味しいさん♪ここにこなければ食べられなかったさん」
「本当だわ、招待してくださった田峯さんに感謝しなくては…」
「奇跡の幸せ焼きか…そういえば子供の頃におばあちゃんに聞いたような気がする…まさか本当にいたなんて…」
「私も聞いたことがあるわ、ダン…それにしてもとろけそうに美味しいわね」
「妖怪くん、きみのお陰で奇跡のグルメを味わえたよ、ありがとう!
皆さん、素晴らしいサプライズをプレゼントしてくれた妖怪くんに拍手を…」
ワーワーワー パチパチパチパチ…
皆から拍手喝さいを浴びてとびきり優しい笑顔を見せる妖怪正面ジジイだった
「スタジオに来てよかったね、キーモ♪、ルディ」
「ほんとだね~ミーモ。美味し過ぎるよ~」
「俺は…この味、忘れられそうにありません…」
騎士のルディもあまりの美味しさに目を白黒させ、観覧席やスタジオにいる誰もが虹色のオーラに包まれながら最高の笑顔でお好み焼きを味わっていた




