あなたは誰?
再現ドラマが終わると割れんばかりの拍手がスタジオを包んだ
「すごいなぁ。お二人とも貴重な体験をなさいましたね~、その後マリアさんはどうなったのでしょうね…」
「フランソワさんと幸せになったのか気になりますよね」
田峯と鳩代の質問にハトトコはにっぽり微笑んで応える
「実は…後日談があるんですよ」
「是非お聞かせください!」と瞳を輝かせる田峯
「お二人が再会され一週間後くらいに一通のハガキが届きまして…彼女と惹きあわせて下さり本当にありがとうございます。
今は魔城で二人ひっそりと幸せに暮らしております」と…
「素敵ね~」
「ええ、ええ、ロマンティックだわ」
観覧席の鳩娘達からため息が零れ再び拍手が起こった
「素晴らしい投稿、ありがとうございます!」
「めでたくハッピーエンドを迎えられ良かったです! 素晴らしい投稿をしてくださったパラレルワールドのハトトコさんとトトさんにもう一度拍手をお願いします」
わ~! パチパチパチ…
トトとハトトコは優雅にお辞儀をするとをするとスタジオを後にして観覧席へと戻って行った
※
「ハトトコちゃん、トトちゃん、かっこよかったよ~ミーモ、感動したぁ」
「キーモも泣いちゃった…二人が再会できてほんと良かったね」
客席に座る二人にさっそくミーモとキーモや姉妹たちがワチャワチャと話しかける
「ありがとう…最初、緊張しちゃって大変だったわ(笑)」
「姉さん、あがって震えてるから(笑)」
「トトちゃんに羽根を握られていつもの姉さんに戻ったのよね…姉妹愛に感動したわ…」
「ねーさん、感動したのそこさん?」
「いいじゃねぇか♪ハトモコちゃんらしいぜ」
「心に残る体験談だわ…ママも感動しちゃった」ハンカチで涙を拭うジニー
「本当ですわ…私、パラレルワールドに行きたくなってしまったわ」感動するきぃママ子
※
「さて…続きましてはピジョンタウンB地区のハトモコちゃんときぃちゃん姉妹の投稿です!」
「いつもありがとうございます。このお二人にも是非出演していただきたかったのですが…きぃちゃんが可愛すぎて心配だとハトモコさんがおっしゃるので
再現ドラマでの紹介だけになります、うふふ」
田峯と姉の鳩代に話を振られ満足げに頷くハトモコと瞳をキラキラさせるきぃちゃん
「毎回、上質な恐怖を届けてくださる大切なリスナー様ですね」と妖怪正面ジジイ
「ねーさん、妖怪さんが褒めてくれたよ」
「流石は叔父様、パパに似て紳士だわ…」
※妖怪正面ジジイは父、ダン・セフィロスの弟である
「それでは参りましょう…VTR、スタート!」
※
あれは…三年前に魔女箱根へ私達が家族旅行に行った時でした
「着いた着いた~ねーさん、プールに行こう~♪」
「ええ、ええ、きぃちゃん水着に着替えましょうね♪」
二人に雰囲気の似た俳優がきぃちゃんとハトモコ役を演じている
「二人とも、お菓子とお茶飲んで少し休んでからになさいな(笑)プールは逃げないわよ」
「はぁいママ」
「いつ来てもここからの眺めは最高ね~」テラスに出て山の景色を楽しむ鳩姉妹
コンコン…ノックの音
「失礼致します…」
「どうぞ」
ノックと共に私達の部屋に入って来た仲居さんは明るくて綺麗なピジョン富士ホテルに似つかわしくない沈んだ感じの人でした
「お部屋係のハトミと申します、宜しくお願い致します」
「あら、ポッポンさんじゃないの?」毎年来ている為、ジニー家付きの仲居さんは私達と仲のいいポッポンさんと決まっていたので
違和感を覚えたポキキ姉さんが訪ねたんです
「…ポッポンさんは…体調を崩しておりますので…申し訳ございません…」
暗く俯きながら頭を下げる彼女に家族全員がどんよりしました
「まあまあ、そうなのね。お大事にってポッポンちゃんに伝えてくださいな。これ…」
ジニーママがそう言うとお心付けを仲居さんに渡したのですが…
「いいえ…わたくしは頂けません…失礼致します」
「えっ…」
驚いているママの心付けを拒んでその仲居さんは部屋を出て行ってしまいました
パタン…
「暗くて感じ悪いわ…あの人、変えてもらえないの?」文句を言う娘達
「そうよ、だいたい、チップを断るなんて失礼じゃない」
「まあまあ、いいじゃないの。きっとまだ不慣れなんでしょう。ほらほら、みんな、プールに行ってらっしゃいな」
「そうだな、お前たちの水着をパパに披露しておくれ」
「いやだ~パパったら」
「パパ、いこうさん♪きぃ、ママに可愛い水着、買ってもらったの」
「パパ、私のセクシーなビキニも見て」
パパとママと一緒に私達姉妹は水着に着替えてホテルのプールへと向かいました
ここのホテルのプールは広くて水温も丁度良く屋外にある為、泳ぎながら緑の木々や山の景色を楽しめ、陽射しが差し込んで水面がキラキラし、
少し離れたところでは魔女ハワイのハワイアンが演奏されて心地いいので私達のお気に入りでした
パシャパシャパシャ…
「ふぅ~気持ちいいわ」
「まあ、パパのビキニ、かっこいい♪」
「キン、お前なんて水着を着てるんだ…」
貝殻のビキニ姿でパパの前でポージングするキン姉さんに楽し気に泳いでいる姉さま達でしたが…きぃと私はその時、ふと妙な視線を感じたのです
「ねーさん、あのひと…」
「…! どうしてここに?」
さっき部屋に挨拶に来た陰気な仲居さんがプールから少し離れた木陰に佇んで食い入るようにじいっと私達を見つめていたのです
「気味が悪いわね…ママ、ねえママ、あの人…」
「どうしたの?ハトモコ?」
「あの仲居さんが見てるの、気持ち悪いさん」
「え?」
ママが振り返った時にはもう彼女の姿はありませんでした
そんな…確かにいたのに…
「誰もいないじゃない、あなた達の気のせいじゃないの?」
「そうよ、ハトモコ。こんなところに仲居さんが来るわけないじゃない、くるるっ」
「だって、本当にいたんだもん!」
「きぃちゃん…私も見た…」姉妹のトトちゃんが傍に来てそっと耳打ちしました
「でもね、ハトマ姉さんには見えないの」
「じゅり、じゅりり、私も見た…ずっとこっち見て怖かったよ」
「おらも見えたべ」
そうなんです…何故かその仲居さんは私達、子供にしか姿が見えませんでした
「お部屋に来たときは皆に見えてたのにおかしいさん…」
「ねえ、江戸、江戸はあの人、見た?」
「さっきの仲居さんだろ? 見えたぜ…」
年頃の鳩姉さんたちやパパとママ、ピヨちゃんも彼女を見ていませんが私達の騎士の江戸だけは彼女の姿をはっきり見たそうです
「でもな、今はその話、しないほうがいいぜ…」
神妙な面持ちの江戸に私ときぃちゃんは只ならぬ雰囲気を察し黙り込んでしまったのです
「どうした?お前たち、ほぉら、トロピカルドリンクとアイス、クレープや焼き鳥もあるぞ~」
パパがホテルの売りの従業員さんが作る屋台フードを持って来てくれて場が和み、私達はその仲居さんのことを忘れて飲んで食べてプールで遊んだんです
けれどその夜…あんなことが起こるなんて…私もきぃちゃんも思いもしませんでした




