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田峯のトラウマ

「面白かった~」


「鳩代ちゃんのお兄ちゃん、かっけぇ」


パチパチパチ


「うふふ。聞いてくれてありがとう」


百物語の幕開けを語った鳩代に拍手喝采する子供たち


「ブラコンのきみらしいエピソードだな(笑)


それじゃ 二話目は僕が語らせていただかこう」


「田峯ちゃんキターーーーーー」


「パパ~頑張って~」

子供たちとまとよともとよの声援に微笑みながら田峯は静かに語り始めた




僕はプールが苦手でね…子供の頃に体験したトラウマがあるんだ


あれは7歳くらいだったかな


家族でC地区の某ホテルのプールに行ったんだが


当時、僕はカナヅチでね、プールのへりにつかまって一生懸命バタ足の練習をしていたんだよ


一心不乱にバシャバシャとやっていると知らない女性が声をかけてきたんだ


「ずいぶん熱心なのね」


女は小麦色の肌にオレンジ色の水着でロングソバージュをかきあげながらニヤニヤして傍に来たんで女嫌いな僕は


なんだ、こいつ…馴れ馴れしいな…


と不快に思ってスルーしてバタ足の練習を続けたんだが


「泳げるようになりたいんでしょう。


そんなとこで練習してても上達しないわよ。もっと真ん中に行かないと…さあ…」


女は僕の腕を掴むと強引にグイグイ深いところへ連れて行こうと引っ張っぱろうとするので僕は怖くなり


「イヤだ! 離して!!」


女の手を振りほどいてプールのへりに掴まりながらさっきまで練習していた浅いところへ必死に戻ろうとしたんだけど女は尚もしつこく追いかけて来た


「意外と頑固なのね。いいからこっちにいらっしゃいよ」


そう言って僕の手首に爪を食い込ませて無理やり連れて行こうとしたから堪忍袋の緒が切れた僕は咄嗟に大声で叫んだんだ


「誰か~助けて! 助けて下さい! この人が僕を深いところに無理やり連れていこうとしてるんです!!」


僕の叫び声にびっくりした大人たちは一斉にこちらを見て傍に泳いできてくれてね


一緒に来ていた叔父も慌てて走ってくると「どうした? 大丈夫か? おいっ、貴様、うちの子に何やってんだ!!

誰かその女を捕まえてくれっ」と叫んだので女は「チッ」と軽く舌打ちすると長い髪を海藻みたいにモァーっと広げてブクブクブク…と水面にもぐって逃げようとしたんだ


その様子を見たプールの監視員が慌てて


「皆さん、暫くプールから出ないでください、あの女を捕まえます!」と周りに協力を頼んで全員がその女がプールから上がらないか見張ってくれたんだが


30分経ってもとうとう女はプールから出てこずに誰も彼女を見た者もいないまま忽然と姿を消してしまったんだ


帰りにホテルの支配人に詫びられたが小さかった僕は震えが止まらずその夜は眠れなかった


それから時は流れ…僕が高校生になった夏休み、友達と怪談をしていて当時の事を思い出してね


「そういえば、俺、ちっちゃい頃、某ホテルのプールでヤバい目にあってさ…」と語ると友人の一人がこう言った


「なんだ、お前、知らなかったの? あそこは出るんで有名だぜ」と言われてそれ以来、僕はプールがトラウマになり未だに入れない…というわけさ


田峯は語り終えると蝋燭の火を吹き消した


「怖かった~!!」


「やだ~プールにいるの怖くなっちゃったよ~」


「私も出たい~」


「僕も出る~ママ~」


「お待ちなさい。皆、うちのプールは100%安全よ。


なんたって女王の私と王のダンが子供たちを喜ばせたくて作ったんですからね。


ふふふ、悪い幽霊は近づけないわ」


「え~本当? ジニーちゃん」


「大丈夫だよ。ジニーの言う通り、結界もはってあるし怖いことは絶対におこらないから安心しなさい」




怯えて泣き出す子供たちにジニーとダンがなだめながら言い聞かせた


「パパ、ダメじゃん(笑)


パパはね、未だにプール入れないんだよ~」


「あなた、子供たちを泣かせちゃダメじゃないの」


「すまんすまん」


「すまんで済むなら警察はいらないさん」


きぃちゃんがにっへぽりしながらハトモコと江戸と田峯の背後に忍び寄る


只ならぬ空気を感じた田峯はプールに落とそうとニヤニヤしているきぃちゃんに引きつりながら必死に謝った


「悪かったよ、きぃちゃん。田峯スペシャルセットあげるから落とさないで」


「スペシャルセット? 本当?」


きぃちゃんの表情がふと和らいだ


「そうそう。番組の誇るスペシャセットだよ。一年分のお菓子とケーキとアイスとグルメセットの詰め合わせが入ってて全て非売品なんだ。

それをハトモコちゃんと二つずつあげるから落とさないでくれ」


「きぃちゃん、パパを許してあげて。パパは本当にプールダメなの。


昔、ふざけてまとよが落としたら気絶しちゃって大変だったの」


「本当なの。見て、パパ、唇が震えてるよ。パパの代わりにもとををプールに落として」


必死に自分を庇う子供たちに田峯はひどく反省してプールに向かうと


「まとよにもとよ、ありがとう…きぃちゃんの言う通りだ、皆の気持も考えずにKYな怪談を話した僕が悪い…」


そう言うと田峯は自らプールに落ちて…気を失った


「おい、でぇじょぶか!! しっかりしろっ」


ブクブクと沈んでいく田峯を江戸が飛び込み慌ててプールから上げて助け起こす


「あなた、あなた、しっかりして!」


「パパ、死なないでぇ~まとよともとよとママを置いてかないで~」


失神している田峯にハトたろが近づくと小さな羽根をクルクル回した


バサバササ、バサバサ、「あーっはは、あーははは、それっ」


パチリ…


「ん…俺は…どうしたんだ…まとよ、もとよ、鳩代…何で泣いてるんだい?」


「ごめんなさい。そんなに怖かったんだね。きぃのせいでこれ、飲んでさん」


きぃちゃんは田峯に温かいホットミルクを差し出しながら謝った


「きぃちゃん! あなたは悪くないわっ。とめなかったこのハトモコが悪いのよ。ごめんなさい。田峯さん。


我が愛しの半身を許してください、罪はこのハトモコが…」


真剣に謝る二人に田峯は微笑んだ


「君たちは何も悪くないよ。僕が大人げなかったんだ。


でもね、お陰で失神したけどここのプールは怖くなくなったよ。お礼に田峯スペシャルセットはちゃんと君たちに送るからね」


「まあ、あなた。怖くないの?」


「ああ、もう平気だ。まとよにもとよ、おいでパパと入ろう」


「パパ~」


抱き着く幼い娘達と田峯はそっとプールに入ると微塵の恐怖心もなくなっていた



「ほぅら、怖くないぞ~もう大丈夫だ~」


「あぁーん、よかったぁ」


まとよともとよに泣かれ妻の鳩代に心配されとんだ人騒がせな田峯にダンが微笑みながら揚げたてのアメリカンドッグをくれる


「よかったな、田峯くん。ピヨちゃんが揚げたピヨドックだ、熱々で美味いぞ~


ほら、まとよちゃんともとよちゃんもお食べ♪」


「お父さん、ありがとう」


「ありがとうパパ。よかったわね、あなた…」


「きいちゃん、ハトモコちゃん、江戸くん、きみたちのお陰でトラウマを克服出来たよ。これでこの子達と一緒にプールで泳げる。

本当にありがとう」


「あ、はとたろさん、ありがとうございます」


「いやいや、雨降って地固まるだなぁ。家族愛は素晴らしい♪


きぃちゃんはいい事したんだぞ~はーっはっはっ」


「そうですわね。きぃちゃん、元気を出して」


「そっか、きぃのおかげさんね♪」


ハトたろときぃママ子のひと言で立ち直れたきぃをハトモコが抱きしめる


「きぃちゃん、素晴らしいわ!!」


わあぁぁぁぁ パチパチパチ


何故か拍手喝さいが起こり、いったん中断されるかと思われた百物語はますます盛り上がっていくのであった










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