素敵なお客さま
カランカラン♪
「いらっしゃいませ。ようこそパラレルワールドへ…素敵な一期一会がありますように」
雑貨屋パラレルワールドの看板娘の小鳩のトトちゃんに挨拶されてミーモは嬉しそうに微笑んでいる
「トトちゃん、ハトトコちゃん、こんにちわぁ! ミーモと合うわんわんのぬいぐるみさん、買いに来たの」
「あら、ミーモちゃん、いらっしゃい。ようこそパラレルワールドへ 今日はキーモちゃんはお留守番かな?」
「おうちでお昼寝してるよ」
パラレルワールドのオーナーでありトトの番い姉妹の姉、ハトトコは優しく微笑んでミーモをぬいぐるみコーナーへと案内してくれる
様々な犬種のふわんふわんのぬいぐるみがたくさん並んでいる棚を見てミーモはテンション爆上がりだ
「わぁぁ、たくさんいるぅ♪ どの子がいいかなぁ」
「ミーモちゃんの髪の毛を一本、抜いてね、うちに来てくれる子いる?って聞いてごらん」
「うん♪」
ハトトコに教わったとおりにミーモは髪の毛を一本抜くとぬいぐるみ達の上に落として
「うちに来る子はいますかぁ?」と聞くと…
シーン……
誰もミーモの髪を掴まない
「来てくれないんだ…」
しょんぼりしているミーモにハトトコは慌てて説明する
「ミーモちゃん、ごめんなさいね。いつもならその人と相性のいい子が髪の毛を掴んでくれるのだけれど…多分ね、まだここにはいないのね」
「ぬいぐるみさんとの出会いも一期一会です。うちの子達はみんな魂を持っているからミーモちゃんと合う運命の子はこれから来ると思うよ」
「そうなんだ…せっかく来たのに…」
トトに言われてミーモはしぶしぶ納得し「新しい子が来週入荷するから連絡するわね」とハトトコがお店のクッキーとドリンクを持たせてくれた
※
「ただいま…」
しょんぼり顔でうちに帰ったミーモは玄関先で思いがけないお客様と対面する
「わんわん わぉーん」
グレーと白の美しい毛並みの見事なハスキー犬のルディは尻尾を大きく振ってミーモを出迎える
「ママ、この子だれ?」
「おかえり、ミーモ。今日からスネイプ侯爵が奥様と泊りがけでお友達のお家へ行くことになってね、一週間この子を預かることになったのよ」
「そうなんだぁ、大きくてかっこいいね! ルディ、私はミーモ、よろしくね」
ミーモがもふもふのルディに抱き着くとルディは優しい瞳をミーモに向けた
「お、さっそく仲良くなったようだな。ルディは優しくてお利口さんな子だからよろしく頼むよ、寂しがり屋さんでミーモが帰ってくるまで
ピーピー鳴いてたんだよ」
パパがミーモの頭を撫でながら微笑んでいる
「おいていかれて寂しいんだね。可哀想…でも、この子、ミーモのポーポーを噛んだりしない?」
「大丈夫だよ。ルディは言葉がわかるからキーモとミーモの大事な子達に触らないようにパパが言い聞かせておいたんだ」
ミーモは半信半疑でルディを見つめて言い聞かせる
「聞いて、ルディ。私の鳩のポーポーとキーモのパグ犬のカナンを噛まないでね。とっても大切なの。お願いね」
ルディの瞳がキランと輝くと…「わん わんわん、くぉーん…(わかったぜ、さっきパパさんからも言われたからな。約束する)」
「よかった、パパ、ルディ噛まないって約束してくれたよ」
「そうだった、キーモとミーモは動物の言葉がわかるんだったな。なら安心だ」
「ミーモ、おかえり~あれ? ぬいちゃんお迎えしなかったの?」
キーモに尋ねられミーモはママが煎れてくれたホイップ入りのホットチョコを飲みながら訳を説明した
「そう、せっかく行ったのに残念だね…はいっ これ食べて元気だして」
ミーモ想いの優しいキーモはママの焼いたスコーンにクロテッドクリームをたっぷりぬって渡してくれる
「わぁい♪ ありがとキーモ」
ミーモは嬉しそうにスコーンを頬張るとルディが尻尾をふって傍に来る
「ん? ルディも食べたいの?」
「わん♪(うまそうだぜ、お嬢ちゃん、俺にもくれるかい?)」
「ママ、この子、スコーン欲しがってるよ。あげてもいい?」
「魔性犬だから何を食べても大丈夫よ。ミーモ、ちぎって手の平にのせてあげてごらん」
ミーモはスコーンを小さな手でちぎり手の平にのせてルディに差し出すと
パクり♪
ひと口で食べると「わんわんわん♪(うまいっうまいぜ♪ もっとほしいよ)」
「ママのスコーン、気に入ったみたい。はい、どうぞ」
キーモもスコーンをちぎってルディにくれる
「わんわんわん♪(キーモちゃん、ありがとうな。嬉しいぜ)」
パクパク食べるルディをキーモとミーモは嬉しそうに見て撫でている
「パパ、ママ、ルディと一緒に寝てもいい?」
「いいわよ。ルディのベッドを奥様から預かっているんだけど…」
ふわんふわんの寝心地よさそうなシルバーのベッドを見てキーモとミーモははしゃぎだす
「可愛い♪この子のベッドなんだぁ」
「ルディ、可愛がられているんだねっ」
その途端…
「わんわん…わん、あぉーーん、ふにゅぅ…あおおおーん…(パパー、ママー、会いたいよ)」
悲し気な遠吠えが止まらなくなってしまう
「ベッドを見てホームシックになっちゃったんだ…」
「ねえパパ、スネイプおじちゃまにテレビ電話してもらってよ。ルディが可哀想」
「それがね…電波の届かないエリアでね…」
「あなた、水晶に映せば話せるわよ」
「お、そうか」
「さすがキニーママ♪ ルディ、おいで。パパとママとお話しできるよ」
「くぅん…んおぅ? (ほんと?)」
キニーが大きな水晶玉に手をかざすとスネイプと奥様の顔が映し出される
「スネイプ侯爵、聞こえる? キニーよ。ルディが寂しがって鳴いているの」
キニーの声を察知したスネイプの妻が水晶玉に手をかざし
「あなた、キニーさんが呼んでいるわ。ルディが寂しがっているって…」
「おお! ルディ、パパだよ、聞こえるかい?」
水晶に映るスネイプを見てルディは尻尾をブンブンふっている
「わぉーん、あぉあぉ、ふにゅーん…(パパ、ママ、会いたい、会いたいよ、はやく帰って来て)」
「あなた、ルディが心配だわ、わたしだけでも早めに帰った方が…」
さびしがっているルディを見てスネイプの奥様は涙ぐんでいる
「ううむ…わたしも胸が引き裂かれそうだが…クロロックが犬嫌いでな…仕方ない、予定を変えて明後日戻ろう
ルディ、それまで待っていておくれ」
「ルディ、明後日、帰っちゃうの?」
寂しそうに尋ねるミーモを見てルディは
「わん、わんわんわん、くぅーん(俺、一週間ここにいる、パパ、ママ、平気だよ)
「まあ! ルディ、なんていい子なの…大丈夫なの?」
心配するスネイプ奥様にルディは「わん♪ うぉーん、あんあん、くぅーん(心配しないで。ミーモとキーモと遊ぶんだ)」
「そうか…偉いぞルディ、お土産に干しイモとお肉をたくさん買って帰るからな。キーモちゃん、ミーモちゃん、ルディと仲良くしてあげてね」
「スネイプおじちゃま、大丈夫、うんと仲良くするから安心してね」
「そうだよ、一週間なんてすぐだよ」
ミーモとキーモに約束されてスネイプ夫妻は安心して水晶玉に手をかざして通話を閉じた
「ありがとうルディ、一週間うんとうんと遊ぼうね」ミーモとキーモはルディに抱き着いてもふもふタイムを楽しんだ
「わんわん♪(おう、よろしくな)」
※
ルディの歓迎会も兼て夕食はステーキだった
ルディはキーモとミーモの間で嬉しそうにパクパク食べている
おやつにはルディのママ手作りの干し芋とキニーママの手作りケーキを楽しみ夜も更ける頃、魔界で高視聴率の『心霊スペシャル』をキーモとミーモに
抱き着かれながら観ている
「大丈夫?ルディ、怖かったら抱き着いていいからね」
自分が抱き着きながら心配するミーモ
「そう言ってミーモが抱き着いてる(笑)ルディ、これはね~ぜんぶ実話怪談なのよ~」
「わんわん、わん、ふにゅ~ん(ちょっと怖いけど楽しいぜ、二人とも怖かったら抱き着いてな)」
「うん、あ~ちょっとこの話、怖いよ~」
子供たちはキャーキャー言いながらルディに抱き着いてそのままベッドで三人仲良く寝てしまう
「おやおや、ベッドは必要なかったな」
気持ちよさそうに寝ている娘たちとルディの寝顔にコージュパパが目を細めている
「本当ね…すっかり仲良しになって…」
それから毎日、お散歩したり、お花見したり、絵本を読んだり、怪談を見たり、パパに伝説を語ってもらったり、キーモとミーモはルディと遊んでいるうちに瞬く間に一週間が過ぎて行った
「ただいま、ルディ。いい子にしていたかい?」
「お留守番できて偉かったわね」
迎えに来た優しいスネイプ夫妻に抱きしめられてルディは尻尾をふって喜んでいる
「わんわんわん♪ あぉーん♪わんわん、くぅーん(パパ、ママ、会いたかったぜ、嬉しいぜ、嬉しいぜ)」
「ルディ、元気でね 私達のこと忘れないでね」
ミーモは今にも泣きたくなるのをこらえてルディの頭をそっと撫でる
「くぅーん…ふにゅゅぅ…くぅーん…(ありがとう、ミーモ、忘れない、俺も忘れないぜ…)」
ルディはミーモに抱き着いてペロペロ舐めてくれる
「やだ、離れたくないよぉぉ」我慢できずに泣き出すミーモをコージュが抱き上げる
「ありがとうね。ミーモちゃん、キーモちゃん、ルディを可愛がって仲良くしてくれて。今度うちに遊びにおいで」
スネイプ侯爵は切なそうな表情で泣いているミーモの頭を撫でてくれた
「元気でね。ルディこれあげる。ミーモと編んだんだ」
キニーママに教わってミーモとキーモが編んだルディのお洋服をキーモが渡すとルディは涙をポロポロ流して遠吠えした
「あおーん…あんあん…ぴーぴー…おおーん…(ありがとう、ありがとう、嬉しいよ。ふたりとも離れたくない)」
「また一緒に遊ぼうね」
手を振るキーモとミーモを何度も何度も振り返りながらルディは帰って行った
※
「帰っちゃったね…」
トゥルルルル♪ ミーモの携帯が鳴る
「もしもし、あ、ハトトコちゃん、うん、うん、わかった、すぐ行くね」
「ママ、ハトトコちゃん、パラレルワールドに新しいぬいぐるみが来たって教えてくれたの。行ってもいい?」
「いいわよ、どこでもドアでいってらっしゃい」
「待って、一緒に行くよ」
ママが出してくれたどこでもドアでキーモとミーモはパラレルワールドに来店する
「ミーモちゃん、待ってたわ。こっちよ」
「あっ!!!」
新しく入荷したぬいぐるみの中にルディにそっくりな大きなハスきー犬がいた
ハトトコはにこにこして「気に入った子はいたかな?」と聞いてくれる
ミーモは迷わず自分の髪の毛を一本抜くとその子めがけて落としながら言った
「ミーモとおうちに来てくれる子~」
ハシッ!
ルディそっくりなハスキーの手がミーモの髪の毛を掴んで見つめる
「わん(俺がいくぜ♪)」
「ハトトコちゃん、この子!!」
「でもミーモ、この子大きいから高いんじゃない…ミーモいくら持って来たの?」
心配性のキーモが訪ねる
「どうしょう…慌てて500円…しか持ってこなかった」
ハトトコは泣きそうなミーモを見て優しい微笑みを浮かべる
「500円でいいわよ」
「えっ…でも…」
「うちの店はね、本人の意志を尊重するの。この子はミーモちゃんのお家に行きたがっているからね」
「この子のお洋服も包んでおくね」
ウインクしながらハトトコは会計してくれた
「素敵な一期一会、よかったね」微笑むトト
「ありがとう、ハトトコちゃん」
「よかったね。ミーモ♪」
「いいのよ、可愛がってあげてね。どこでもドアで帰りなさい」
ハトトコが魔法で出してくれたどこでもドアでミーモはルディそっくりな大きなハスキー犬を抱きかかえてキーモと一緒に嬉しそうに帰って行った
「ようこそパラレルワールドへ…。あなたに素敵な一期一会を…」