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きぃちゃんとハトモコの過去

ジニー家のお風呂は広い


なにしろ大所帯なのでちょっとしたホテルの温泉並みなのでミーモもキーモも大喜び


「気持ちいいねぇキーモ、弘ぐて泳げちゃう」


「ほんとだね、キーモ♪ それに窓からファーの丘の八重桜が見えて綺麗…」


「うふふ うちのお風呂、温泉みたいでしょう」


「二人とも、見て 娘吉野にあま~いチェリーがたくさんなってるさん」


「ほんとだぁ! 真っ赤で綺麗だね」


「お風呂から出たらもぎたてのチェリーでママが焼いたチェリーパイ食べようね」


「今夜は「田峯弘樹スペシャル」があるべ おら楽しみだ♪」


「あ~知ってる ミーモ、鳩代ちゃんに投稿したよ」


「そうそう、そういえばミーモちゃん達の体験談、怖かったね」


「じゅり じゅりり ママの夜食も楽しみじゅり」


そして男風呂では騎士の姿に戻った江戸とルディがまったりバスタイムを楽しみながら話している


「ここは優しい波動の家だね  穏やかで愛に溢れていてとても落ち着く…

ダン様とジニー様が築かれたピジョンタウンが平和で美しいのが頷けるよ」


「まあな、二人とも俺の幼馴染で子煩悩で穏やかでいいやつなんだよ」


「ところで江戸くん、きみはきぃ様の騎士なんだろう

何でまた魔性犬でもないのに柴犬の姿でいるんだい?」


「そりゃおめぇ、きぃ様に可愛がっていただきたいからだよ」


「え?」


「お可愛らしくてお優しくて姉妹想いで…きぃ様は前世、身体が弱くてハトモコ様と悲しい想いをされたんだよ…」


江戸が語るきぃちゃんとハトモコの過去はあまりにも悲惨でルディは言葉を失った


「昔からきぃ様はハトモコ様を慕われていてな、だが当時のハトモコ様はどこにでもいるクールなお姉さんで、いつも自分のあとをついてくるきぃ様を少しうざそうにされて面倒見も悪かったんだよ」


重度のシスコンのハトモコしか知らないルディは驚いた


「ええっ、あのきぃ様想いのハトモコ様がか…意外だ」


「ああ…その昔、我々は魔界に住んでいてな…ピジョンタウンのように平和じゃなかった


ある日きぃ様がハトモコ様に花冠を作ろうとしておひとりで草原で花を摘んでいらして…そこにたまたま運悪く日頃からダンと敵対しているやつが来て腹いせにと無防備なきぃ様を串刺しにしたんだ…」


「嘘…だろ…」


「…騎士だった俺もその日は戦いに出ていてお守りできなかったんだ

きぃ様を探しに来たハトモコ様は 小さな羽根に編みかけの花冠を持たれてぐったりされているきぃ様を見て取り乱され きぃ様を殺めたそいつに怒り狂い敵を討とうと泣きながら羽根を広げて向かっていったが小鳩の身でかなうはずもなく…


ダンとジニーが駆けつけた時には間に合わずに小さな娘達の亡骸を見下ろし薄笑いを浮かべていた鬼畜野郎を二人はその場で八つ裂きにしたが当時の彼らはまだ蘇生が出来ずにお二人は家の庭に埋葬された


その後、お二人は何度も生まれ変わったがなかなかジニーの子として転生されず貧しい孤児に生まれて苦労の連続で…お二人は路上で靴磨きをされて生計を立てていたが、病弱なきぃ様はハトモコ様を置いて亡くなられ…


ハトモコ様は自分が目を離した隙にきぃ様が殺されたことでご自分を責めて悔やまれすっかり心が病んでしまわれたんだ


ダンとジニーは二度とそんな悲劇を繰り返さないようにジニーの姉のピヨちゃん夫妻と共に魔界を出て、このピジョンタウンを争いのない平和でおだやかな国に築き上げた


そして、ようやっとジニーはハトモコ様ときぃ様を娘として身ごもることが出来たが


ハトモコ様は生まれてから言葉を話さず血の涙を流しながらジニーを見る度に「きぃちゃんを…はやくきぃちゃんを生んで…」と頼んでばかりでジニーも泣きながら胸を痛めていたよ

ダンにも鳩姉妹にも心を閉じてひたすらきぃ様が生まれるのを待ちわびておひとりで膝を抱えていたハトモコ様をいつも抱きしめて優しく元気づけていたのが、姉のきいママ子様だった」


「はとたろ様の奥方のきいママ子様か…」


「ああ、母性豊かな彼女はいつも泣きながらきぃ様を恋しがっているハトモコ様が不憫で少しでも早くきぃ様が転生されるよう毎晩願っていたんだ

そして…ようやっときぃ様がジニーの娘として誕生された時、ハトモコ様の喜びようは尋常でなく…生まれたばかりのきぃ様がハトモコ様の羽根をキュっと握るとハトモコ様は涙を流しながらきぃ様を抱きしめて 『きぃちゃん、きぃちゃん、やっとやっと、会えた…きぃちゃん、ごめんねごめんね…もうずっと一緒だよ…』とおっしゃって朝から晩まで眠らずにつきっきりできぃ様をあやしていたよ」


「ジニーは前世病弱だったきぃ様を誰よりも健康で魔力の強いお子として生んだんだ

だからきぃ様は鳩姉妹の誰よりも強くて無敵なのさ」


「そうだったのか…それでハトモコ様は…」


「ああ、面倒見の悪かった前世を悔やまれトラウマになったハトモコ様は異常なほど姉妹愛が強くなり、きぃ様を激愛され、離れ離れになってしまった前世の生まれ変わりの番い姉妹を見かけると放っておけずに捜して何百人もの番い姉妹を再会させ姉妹の(えにし)を結んでいる内に鳩の長老様から褒められ、番い大魔王の称号を頂いたんだ


そんなきぃ様想いのハトモコ様に憧れる小さな雛鳩ちゃん達が今のお取り巻きなんだよ」


江戸が語り終えるとルディは涙を流し号泣する


「話してくれてありがとう…正直、俺は心のどこかでハトモコ様が何故あそこまで異常にきぃ様を愛しておいでなのか疑問だった

いつもきぃ様の態度に一喜一憂されているのが…よく…わかったよ

お可哀想に…どんなに辛かったことか! 」


「ありがとよ おめぇはいいやつだな…

俺もハトモコ様と同じさ…きぃ様を守れず自害しちまって転生を繰り返して、ようやっときぃ様の騎士として生まれ変われたから命をかけてお守りして二度とお傍を離れたくないぜ」


「ああ、わかるよ だが江戸くん、どうして犬になってるんだ? 騎士としてお仕えしていれば…」


江戸は頬を染め本音を語る


「きぃ様はお小さくて可憐だが母性が強くてな、面倒見がすっげぇいいんだよ

お茶を淹れてくださったり、なにかと気遣ってくださる度に


『江戸はイケメンでかっこいいさん♪ 江戸がワンコだったらいつも抱っこできるのに』っておっしゃって…

だから俺、嬉しくて、可愛がっていただきたくて犬になっちまったんだ

きぃ様は毎日、俺にアイシャドウを塗ってくださるんだぜ」


「アイシャドウ…ってお前、メイクされてるのか?」


「おう、そうよ。24色の特注のアイシャドウだぜ♪


『江戸、今日はパープルにしようさん』なんて言ってなぁ…へへっ うらやましいだろ?」


「そうだな、愛されてよかったなぁ 江戸」


こんなに呑気で明るい江戸も心に深い闇を抱えていたのか…

だからこそジニー様とダン様はこの平和なピジョンタウンを大切にされているんだ


ジニー家ご自慢の美味しい夜食に喜んでいるミーモ達を見ながらきぃちゃんとハトモコ姉妹の壮絶な過去に胸を痛めるルディだった









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