森の野獣
スネイプ夫妻がルディとキニー家に滞在したのをきっかけにスネイプの愛妻ミーナとすっかり仲良くなったキーモとミーモは
ミーナ特製のショコラを飲みながらルディとスネイプ夫妻の出会いを聞いていた
「ふぅん、じゃあルディとはパピーのおうちで出会ったんだ」
「そうなの、魔性犬の子犬のショップパピーのおうちを通りかかったらルディがウインドウに顔をこすりつけてね、愛らしい声でキャンキャン泣いて私を呼び止めたのよ」
「私も夫も運命に導かれたようにお店に入るとルディが走って来て尻尾をブンブン振りながらスネイプに飛びついたの
あまりの可愛らしさに私達夫婦はその場でルディを家族に迎えようと即決したのよ」
「ルディのパピー時代かぁ…見てみたいな」
「うふふ、これよ」
ミーナが携帯にあるパピー時代のルディの写真を見せてくれた
「わあぁ可愛い!!」
ピーン…ミーナが魔法でミーモの携帯に送ってくれる
「ミーモちゃんの携帯に送っておいたわ うふふ」
「嬉しい♪ ありがとうミーナちゃん」
「だけどさぁ、ミーナちゃんのショコラ、すっごく美味しいね♪」
「ん! 飲むと元気になるね~」
「よかったわ
たくさん飲んでね ショコラは身体にとてもいいのよ」
「うん、いっぱい飲んで明日の魔女試験、頑張らなくちゃ」
「まあ、二人とも明日試験なの?」
「うん、防御と攻撃の魔法なの」
「でも…可哀想なんだ…試験に使われる野獣さん
魔女の試験がある度に怪我していつも傷だらけで…」
「キーモちゃんは優しいのね…でもね、それが野獣さんのお仕事だから仕方ないのよ
魔女の試験で小さな魔女たちに役に立つのを条件にピジョンタウンの女王であるジニー様が野獣さんの命を救ったんですもの…
「ええっ、ジニーちゃんが野獣さんを助けてあげたの?
どうして? 教えてミーナちゃん…」
「その昔、魔界に悪戯好きの野獣がいてね…エメラルド色に光る憎しみに満ちた瞳と鋭い爪を持ち、揺らめく炎の髪に獅子の身体を持つ彼は魔界の嫌われ者で 森の奥深くに暮らしていたの
彼は孤独な日々送りながら森を通りかかった使い魔たちや魔法使いや妖精たちを魔力で道に迷わせては脅かしては憂さ晴らしをしていたそうよ
そんなある日…野獣は羽根の折れた真っ白い鳩が血を流しながら森の泉の近くに倒れていたのを見つけたの
気の荒い魔鳥に襲われ、胸から出血して酷い怪我で動けない鳩は 野獣が近づいてくる気配に気づくと震えながらもうダメだ…
自分はこの野獣に襲われてしまう…と覚悟して気を失ってしまったわ
ところが 野獣はその鳩をそっとくわえて家に連れて帰り、ハーブを煎じて手当をしてすりつぶした木の実や薬草を与えて看病したのよ
でも 鳩は野獣の恐ろしい姿が怖くて毎日、手当をされる度に今に、自分は殺されて食べられてしまうのではないかと怯えながら暮らしていたの
野獣は鳩が自分を見る度に羽根を震わせて怖がるから 鳩が怯えないように魔力で青年に姿を変えて手当をしていたそうよ
毎日毎日、つきっきりで看病したおかげで一週間も絶つと傷はすっかり癒えて その鳩は飛べるようになるまで回復したわ
そして鳩は気付いたの
自分の世話をしてくれた野獣の瞳はとても優しくて慈愛に満ちている…と
そんな時…
鳩が使い魔として仕えていた女王のジニー様が野獣のもとへと尋ねて来たの
「私の大切な使い魔を助けてくれてありがとう
お前は心根が優しい…だが今まで魔界で悪さをし過ぎた報いでこのままではお前は処刑されてしまう…」
「そうか…構わないよ…どうせ俺は嫌われ者でこの先、生きながらえたって意味がないんだ
俺を醜い怪物だと恐れて罵り蔑んだ奴らに悪戯して仕返ししてやったが虚しいだけだった…」
「待ってください! くるるっ 女王様、この方は…私を助けてくれました くるるっ
最初は手当される度に殺される…と怯えていましたが…彼は私を怖がらせないように魔力で青年の姿にその身を変えて毎日手当してくれたんです
私は、この方に助けられなければとうに儚くなっていました くるっ」
小さな羽根を震わせて懸命に説明している鳩の頭を優しく撫でながらジニー様は頷いたの
「わかったわ ぽっぽこ
この者の命を救い、我が国に連れて行きましょう
でもね…彼はこれまで何百人もの精霊や魔法使いや使い魔たちに悪さをしたから 無条件で連れて行くわけにはいかないのよ
我がピジョンタウンに魔法の試験に使う野獣として迎え 百年、働いてもらいましょう」
その条件をのんで野獣は魔界から女王様と共にピジョンタウンにやって来たの…
「そんなの…ひどい…
使い魔の小鳩を助けてくれたのに…可哀想…」
話しを聞き終えたキーモは涙をポタポタと流している
「キーモ、ジニーちゃんに頼みに行こうよ
野獣さんをもう試験に使わないようにって…ミーモも一緒に行く!」
「お待ちなさい、二人とも
いくらジニー様があなた達のおばあちゃんでも…いきなりそんなことを頼むのは無謀だわ」
「大丈夫!」
ピーン…
キーモはワンドを振って壁にどこでもドアを出すと…
「心配しないで、ミーナちゃん 教えてくれてありがとう!
私達が戻ってくるまでパパとママには言わないでね」
わんわん おぉぉーん、おおーん「おい、待て! 俺も行くよ! ママは心配しないでここで待ってて」
キーモとミーモはルディと共にドアを開け、ピジョンタウンの女王ジニーのもとへと向かっていった
どうしましょう…私があんな話をしたばっかりに…あの子達に無茶をさせてしまったわ…
あの人に…スネイプに知らせなくては…
ミーナはキニー家の庭園で薔薇を愛でている夫のスネイプ伯爵に知らせるべく真紅のドレスの裾を翻して部屋を出て行った




