家族の絆
「あれ、ママ、きいママ子ちゃんは?」
ミーモがキッチンに来ると朝食を作り終えたキニーママがテーブルに食器を並べている
「きいママ子ちゃんはコハのところだよ」
きゃっきゃっ♪
子供部屋から楽しそうなコハの笑い声が聞こえてくる
ルディの言ってた通りだ
きいママ子ちゃんはちゃんとわかっているんだな
でも…
「ハトたろちゃん…あの、ミーモね、お話があります」
「もうすぐ朝ご飯よ ミーモ」
「いやいや、かまわんよ それじゃお庭に出て話そうか?
キニー、先に食べてておくれ」
「わかったわ 兄さん」
キニー家の庭園は小さいがパステルカラーの春の花々が太陽の日差しを浴びて気持ちよさそうにそよいでいる
庭園の白いベンチに腰掛けるとハトたろはミーモの頭をそっと撫でた
「コハのことだね…ダメだな僕は…
きいママ子ちゃんに甘えすぎてあの子の寂しさをつい忘れてしまう」
「ハトたろちゃんは…わかっているのにどうして?」
「ああ…きみも知っての通り きいママ子ちゃんは母性豊かな優しい人でね
ついついその暖かな愛情を独り占めしたくなってしまう」
「大人なのに? でも娘が寂しい想いをしてるんだよ」
「コハは僕が嫌いでね…気持ちはわかるんだ
あの子は生まれてすぐにジロやサブロやシロ…次々と弟たちが生まれてきいママ子ちゃんに甘えそびれちゃってね…
僕はこの通り甘えんぼうの雛みたいな父親だからきいママ子ちゃんにいつも媚びて甘えてばかりいたからある日、コハに言われたんだ」
「大人のクセにいっつも甘えてバカみたい! パパなんか大嫌いって…」
「ショックだった きいママ子ちゃんを独り占めして知らない内に僕はコハを傷付けていたことに気付いて
素直に甘えられないあの子の気持を何度も聞こうとしたが…コハは心を閉じてしまってとうとう僕とは口もきかなくなってね…
子きいママ子とコキマとピュルが母親代わりのようにコハを愛して可愛がってくれてな…」
「ねえ…ハトたろちゃんはどうしてそんなに甘えたいの?」
「そうだね…あれは…ぼくがミーモちゃんくらいの年頃だった
リンバロストの森に兄弟の雛たちと探検に行って道に迷ってしまってね
皆で帰れなくなって泣いていると…目の前に大きなクマが現れたんだ」
「ええっ、クマが!!」
「今、思えば女王の息子の僕らにピジョンタウンの者は手出しはしないが雛だった僕はそんな事はわからずに身動きできないで震えていたら…」
「そこのクマ!! どきなさい!!
私の弟たちに近寄らないで!!」
大きな黒い鳩が翼を広げて飛んできてクマを鋭い嘴でつつくとクマは驚いて後ずさったんだ
すると…次の瞬間、黒い鳩は真紅の瞳を光らせ一陣の風を起こすと一瞬にして大きなクマを吹っ飛ばしてしまったんだよ
びっくりして腰を抜かしていた僕らにその黒い大きな鳩さんは近づくと…スッと姿を小さな魔女に変えてにっこり笑って手を差し伸べてくれたんだ
黒い鳩は 僕らの姉のきいママ子ちゃんだった
「雛なのにこんなところに来てはダメよ…
もう大丈夫…ジニーママには黙っておいてあげるから、みんな、私の背中に乗りなさい」
半ば放心しながら僕らは彼女の背中に乗って家まで送り届けてもらった
「みんな、怪我はしていない?見せてごらんなさい」
彼女は弟たちの擦りむいた膝や手や足を診てくれて怪我をしていないか確認すると魔力で手当てをしてくれた
「きいママ子ちゃん…あ、ありがとう」
「こ、怖かったよ…おねーちゃん」
泣きながらお礼を言った僕らを彼女はふんわり包み込むように抱きしめてこう言った
「いいのよ
このことはパパとママには内緒だからね
二度と子供たちだけで危険な場所に行かないって約束してね」
「はいっ」
返事をする僕らの頭を撫でるときいママ子ちゃんはにっこり微笑んで頷いたんだ
弟たちは泣きながら家に戻ったが僕は彼女の強さとカッコよさと優しさに恋に落ちてしまったんだよ
「そうだったんだ…でも、二人は姉弟だよね…平気だったの?」
「僕ら鳩人間はこの国の王のダン・セフィロスと女王ジニーの子供で大魔王だからね
悪魔なので姉弟で愛し合っても問題はなかった」
きいママ子ちゃんを愛した僕は決心したんだ
いつか立派な大人になってこの人を守りたいと…
「なのに彼女の母性に夢中になり過ぎた僕は月日と共に考え方が変わっていった
きいママ子ちゃんに可愛いって思われたくて僕は自分が成長するにつれて外見がどんどん変わって大人になっていくのがイヤだった
可愛い雛じゃなくなったらもう抱っこしてもらえない…
きいママ子ちゃんに甘えられなくなっちゃうって」
「あの…でも…ハトたろちゃんは…どこからみても雛にしか見えないよ?
大人じゃないよ…」
ハトたろちゃんは ふふ…と笑うと小さな羽根を広げ一瞬で背の高い黒髪のイケメンに姿を変えた
えーーーーー!!
嘘!! だれ?? この人…だれっっ!!
「ごめんごめん、僕の本当の姿だよ
可愛くないだろう?
だから魔力でふだんはモフモフの雛でいるんだ…」
ミーモはびっくりして開いた口がふさがらない
そして…その様子を影から見ていたキーモとルディも驚きのあまり固まっていた
ミーモが心配でふたりは後を付けて様子を伺っていたのだ
「そのほうが…かっこいいじゃない…コハちゃんも絶対にそのほうが喜ぶと思うよ…」
「僕はね…可愛いって思われたいんだ
この姿じゃ抱っこしてもらえないだろう?
可愛くなければ…生きていけない…」
ハトたろちゃん…病んでいたんだ…
放心するミーモ
「でもね…コハを傷付けたのも寂しさに気づかないふりをしていたのも父親失格だ
この性格だからサブロやシロやゴロにロクロ…いやいや、皆ときいママ子を取り合ってるが子供たちは僕がいくらきいママ子ちゃんに甘えても
気にしないで一緒に鳩ポッケに入って遊んでくれる
本当にみんな心優しい子供たちでね…コハだってとっても優しい子なのに悲しませて…悪いパパだ…」
そう言って泣き出すハトたろちゃん…
「嫌いじゃないよ…パパ…」
ハトたろとミーモがその声に振り替えるとコハがきいママ子に抱っこされてハトたろを見つめていた
「コハ、きいママ子ちゃん…」
きいママ子に大人の姿を見られて焦って雛に戻ろうとするハトたろにきいママ子が優しくキスをした
「あなた、どうなすった?
私はあなたのすべてを愛していますわ
大人でも雛でも私には可愛くて愛しくてたまらない旦那様なのよ」
「きいママ子ちゃん、嘘だ…こんなに大きくて可愛くない僕を可愛がれないだろう?」
きいママ子はハトたろのおでこを美しい指でパシッと叩くと強く抱きしめ囁いた
「愛しています おバカさんね…ハトたろ…私は
あなたの存在そのものが可憐で可愛いから…体の大きさなんかどうでもいいのよ」
「きいママ子…ちゃん…ご、ごめんなさい…うう…」
コハがきいママ子の腕からピョンと降りる
「そうそう…パパはもっと自信を持ちなよ
異常な甘えん坊なだけでいい父親なんだから
それにね…パパの書いたママへの愛のポエム…コハも全巻持ってるよ…」
「コ、コハ!! 本当かい?お前が「妻へよする」をよんでくれていたのか…」
「だって…コハはパパ嫌いじゃないもん
パパがママを愛しているからコハはたくさん姉弟がいてさみしくないもん」
「コハ…コハ…バカなパパを許しておくれ」
「だからパパはバカじゃないってば…」
「いい子ね…コハ
パパに愛してるって言ってあげなさい」
コハはきいママ子を見てコクリと頷くとハトたろの手をキュっと握った
「大好きだよ パパ」
「あっ、ありがとう…コハ!! パパもパパもコハが大好きだ
愛しているぞ!!」
「じゃあ全巻にサインしてね」
「ああ、ああ、新しい妻ヘよするを全巻用意してサインしような
愛蔵版にしておくれ」
「まあ、コハ、よかったわね」
「うん」
抱き合う三人を見ているミーモの頭をルディがポンと叩いた
「な? だから言ったろう?」
「ミーモはわりとお節介なんだよね~」
ルディとキーモに言われミーモは
「そうだね
ハトたろちゃんによけいなこと言っちゃった…
でもね…ミーモ、ハトたろちゃんのこと見直したよ
きいママ子ちゃんは素敵な人だね コハちゃんもすごくいい子」
「ねえ早く戻って朝食、食べようよ
お腹ペコペコ~」
「俺もだ~今朝はバイキングだぜ~」
「あ~!! ごめんね
ミーモもお腹空いちゃった
ハトたろちゃんときいママ子ちゃん、コハちゃん、ご飯食べに戻ろっ」
「あらあら ごめんなさい
さあ、行きましょうか」
「パパ、ママ、いこっ
あ、ミーモちゃん、心配してくれてありがとう」
ミーモの耳元で囁いてウインクするコハ
そして気付くとハトたろはいつものモフモフの雛の姿に戻っていた
あれれ? ハトたろちゃん…きいママ子ちゃんの言ってたこと、わかってないよ…
やれやれ…でも
そのほうがハトたろちゃんらしいかもね
何はともあれ きいママ子ファミリーがますます大好きになったミーモだった




