「氷河期世代」「ロスジェネ世代」とはどれぐらい不遇なのか? 「新ロスジェネ世代」は国民全員!?
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回は「氷河期世代」と「新たな悲劇世代」について個人的な解説をしていこうと思います。
質問者:
「氷河期世代」と言う用語はたまに聞きますけどどういった方々なんですか?
筆者:
氷河期世代とは、バブル崩壊後の1993~2005年にかけて社会人になった方々のことを言います。
「ロスジェネ世代」とも言い、2025年時点での年齢が43歳~55歳程度の方々で約1700万人いると言われています。
一体どれぐらい煽りを受けているのか? と言いますと、
マイナビの「就職氷河期世代の実情と就労意識」によると、2018年にも氷河期世代は他の世代と比べて大企業で働く人が少ないそうです。
また「正社員の仕事がないから」という理由で、不本意ながら非正規雇用で働く人も50万人と少なくありません。
2000年には大卒の有効求人倍率1.0を切った時すらありました。
質問者:
なるほど、雇用が少なすぎたがゆえに悲劇的な世代なんですね……。
筆者:
しかも、就職した時点だけでなく「今現在の賃上げ」すらも悪影響が出ています。
24年3月発表の2023年の賃金構造基本統計調査の概況では、
一般労働者の平均賃金は前年比+2.1%過去最高を更新したものの、世代別にみると年代別では35〜39歳で2.1%、40〜44歳で0.6%、45〜49歳で1.3%、50〜54歳で1.2%のマイナスだった。(一方で20〜24歳は3.0%、25〜29歳は1.6%増加)
※24年賃上げ率は平均で5.28%でもっと“格差”が広がる見込み。
と、氷河期世代は賃上げ率も低いのです。
と言うのも皆さん「若手争奪戦」に力を上げており、「退職間近」の人々に対してお金を払っている余裕が無いのです。
更に、粘って勤続を続けても上の世代と比べると退職金においてマイナスの影響があるようです。
勤続35年以上・大卒者の平均退職金額も、97年の3203万円から22年は2037万円と、1166万円も減り、退職金制度がある企業も89%から75%に低下しています。
さらに国は退職金課税も検討しており、ここまで悲惨な状況でありながら退職金への増税は「鬼」としか言いようがありません。
現在は転職をすることに対する抵抗感の無い時代になりました。
しかし、まだまだ終身雇用の時代だった氷河期世代の方々にとっては正社員で入社された方々にとっても非常に辛い状況になりつつあると言えます。
質問者:
なるほど……折角高い競争率ので正社員になれても賃上げ率は低く、退職金は少ないという悲惨な状況なんですね……。
◇しかし、動くのが10年以上遅い
筆者:
これはただ単に「産まれた年代」がたまたまこの10年だっただけと言うことでここまで酷い扱いとなっているのです。
是正は必須であると思います。
しかし、この政策は15年前どんなに遅くとも10年前に本格的な対策をしなければいかなかったと思います。
というのも氷河期世代の方々は「第二次ベビーブーム」や「団塊ジュニア世代」とも言われており、非常に数が多い世代でした。
つまり15年前に雇用の確保を効果的に行っていれば、確実に少子化対策にもなり、「第三次ベビーブーム」が起きていた可能性が高いです。
それでも新しい支援はやらないよりはマシではありますが、今のタイミングでは「生活を修復するための費用」になるだけで非常に効率の悪い支援と言えます。
質問者:
確かに、その世代をもっと早く支援していれば効果的でしたよね……。
最早子育て世代とは言えない年齢になってしまったために「焼け石に水」と言う形になってしまうんですね……。
国民民主党さんも「票を増やす」ための策という事ですね……。
ちなみに当時、どういう支援策をすればよかったんですか?
筆者:
15年前にやるべき国の施策は、民間企業が雇えないのであれば、公務員を増やし、雇用を新たに創出することでした。
特に農業分野などは人手不足がその頃から言われていましたから「国営農業」をすれば良かったのです。
農業は豊作すぎても不作過ぎても農家が困ってしまうのが現状なので本来であれば公務員化するのが一番適していると言えます。
しかし、2000年代と言えば「小泉構造改革」と言う旗印のもと「民営化」「公務員削減」「非正規雇用の推進」がしきりに行われました。
実際に仕事量が減るのであれば良いのですが、仕事量はほとんど減ることはなく行われたことは「実質的な非正規雇用に格下げによる賃下げ」若しくは「残る正社員へのしわ寄せ」でした。
このように本来やるべきこととまったく真逆のことをやっては良くなる筈は無いのです。
今でこそ小泉氏・竹中氏の非正規雇用に舵を切った政策が批判されるようになりましたが、当時は「小泉旋風」と言う言葉があったようにむしろ「もてはやされていた」のですから恐ろしい限りです。
それでも郵政民営化などは「選挙の争点」とされていただけ今の移民問題などと比べてマシではありますけどね。
いずれにせよ「人災」とも言っていい悲劇の世代なのです。
質問者:
なるほど……まったく真逆の政策を展開されてはたまりませんね……。
ちなみに氷河期世代に対する支援として今としては具体的にはどのようなことが挙げられるのでしょうか?
筆者:
現在行われている政策では、
特定求職者雇用開発助成金の「就職氷河期世代安定雇用実現コース」では、要件を満たす企業が、同じく要件を満たす氷河期世代の人材を正規雇用すると、60万円(大企業は50万円)の助成金が支給されるようです。
非正規雇用で働く氷河期世代の人材に対して、正規雇用へ転換するときに必要な知識・スキルを習得させるときに役立つ助成金として、訓練にかかる経費の70%と、訓練中の賃金について1人あたり1時間760円(大企業は380円)の助成金を受けられます。
会社に給付ではなく、本人に対する給付タイプが増えると良いですね。
◇「新ロスジェネ世代」は「国民全員のほとんど」
質問者:
タイトルの「新ロスジェネ世代」と言うのはどういう事なんですか?
筆者:
これは完全に僕の造語なのですが、簡単に言えば「コロナの支援・補償を受けられなかった」人たちです。
諸外国においては100ヵ国近くの国が消費減税などの財政出動を行い、アメリカに至っては2年で1000兆円の財政出動を行ったんですね。
ロシア・ウクライナの問題から円安になりましたが、「コロナ対策に財政出動をしなかった」ことから、全世界円安になっているんです。
この円安の影響から物価高になり、「値上げをしていいという風潮」を作りつつ「大会社は利益を毟り取る」と言った方策を取っており、賃上げ以上の物価高が生じています(過去最低の労働分配率になっていることから)。
これは、日本にいるだけでは分かりにくいことのために指摘している人が非常に少ないのですが、ある意味全ての現役世代が「コロナ対策不足世代」とも言えるんです。
質問者:
なるほど……「コロナ貯金」がそのまま「物価高対策」に消えたという話もありますし、日本だけとりわけ支援金が少なかったという事ですか……。
(エンゲル係数が過去最悪の状況になっていることもあります)
筆者:
ほとんどのコロナ対策支援は医療従事者に対するものですからね。
一般国民へは一律10万円の給付と失業対策の拡充ぐらいですからね。
その上で物価高ラッシュが始まったわけですから
早期に減税、社会保険料負担減を行わなければ更に少子化が進んでいくことは間違いないと思います。
(氷河期世代はそれも被っており更に悲しいことになっていますが……)
質問者:
政府のやることは「子育て支援策」であり、「少子化対策ではない」と言うのが筆者さんの論調ですよね……。
筆者:
そうです。大卒までの子育て費用2000万円を超える3000万円ぐらいの支給があれば話は別ですが、そのインセンティブには程遠いです。
働いても、働いても、手取りが増えない様相で結婚して子供を持とうという気持ちにはなりません。
消費減税と社会保険料の階層的減免を行わなければ予想されたペースよりもさらに加速して少子化が進むでしょう。
まだ、この状況になってから3年ほどですから、取り返しがつく段階です。
国民全体を「失われた」状況にしないためにも僕は今後もこうした真水(国債返済を不要とした)の財政出動を訴えていきたいと思います。
という事でここまでご覧いただきありがとうございました。
今回は、
・「氷河期世代」はバブル期以降国が雇用を創出せずむしろ派遣推進に舵を切ったことによる「悲劇の世代」であること。
・今の現役世代は全てにおいて「コロナ支援不足世代」であり、放置すればさらなる少子化になってしまうが、まだ3年程などで今なら間に合うこと。
をお伝えしました。今後もこのような政治・経済について個人的な意見を述べていきますのでどうぞご覧ください。