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DJバトル

カヅキは高校に入って野球部に入っていた。


頭の良かったカヅキは県内でも有数の進学校に進んだ。カヅキは中学では強打の4番打者として強豪校からもスカウトが来ていたほど野球は上手くなっていたけど、カヅキは進学校を選んだ。


カヅキは野球も変わらず頑張りたいと思った。そのために勉強も今まで以上にやって野球の練習もこれまで以上に取り組んだ。でもそれがカヅキを苦しめることになった。


ある日先輩から、「カヅキうちは弱小校だから練習なんて無駄だぜ。お前がいくら県大会優勝のエリートでもうちに入った瞬間お前の上手さなんて無駄なんだぜ。そんなに野球やりたいんなら他の高校行った方がいいぜ」と言われた。


「ありがとうございます。でも自分はもう少し練習していきます」


先輩は舌打ちをして言い放った。

「お前俺の事馬鹿にしてるだろ。馬鹿なのは無駄な努力している生産性が低いおまえだぜ」


カヅキはそこから野球に無駄な努力をする変わったやつというレッテルを貼られる事になってしまった。でもカヅキは自分を変えなかった。周りが練習をサボって塾に行こうが、決して練習に手を抜かなかった。


そんな時、テツにたまたま駅であった。

テツは中学校の頃から変わっていた。髪が伸びて派手な友達と楽しそうにしていた。しかも野球を辞めていた。僕より野球が上手くて才能があったのになんで簡単に辞められるんだ?それが疑問だった。


「俺は実は野球辞めたんだ。でも結構楽しんでるよ。じゃあ、またな。」


テツの軽い言葉に正直腹が立った。

僕は野球を辞めたくない。諦めたくない。そう強く信じて練習を続けた。


でも結局は試合に出してもらえなかった。しかも練習試合を含めて一度も勝てないまま無駄に時間を過ごしてしまった。でも、カヅキは自分の行動でいつか周りは変えられるとそう信じていた。


「中学の時は自分が結果を出した事で周りを変える事ができた。」


カヅキはそう信じて一人孤独な努力を続けていた。


でも環境は変わらない。いつも通りダラダラと練習して時間になったら当然のように帰る先輩や同級生。


自分が率先して背中を見せ続ければいつかみんなを変える事ができる。そう信じて頑張っているうちに次第にカヅキはすり減っていった。


「僕もみんなと同じように野球を諦めたら楽なのかもしれない。でもそれは僕じゃない」


カヅキの頭の中によぎる誘惑。でもカヅキはそれはできなかった。自分を裏切ると自分が自分ではなくなる。僕がこのチームを勝たせる。僕は変わらない。そう誓って一人練習を続けた。



僕はいつものようにナオと元町で待ち合わせをしていた。今日はテレビの横浜特集で紹介されていた最近流行っているハンバーガーを二人で食べに行く予定にしていた。


大きなハンバーガーが目の前に二つ。それをナオが小さい口をを大きく開けて頬張っている。それを僕は笑顔で眺める。


「ちょっとそんなに見ないでよ!そういえばクリから聞いたんだけど、テツって野球めちゃくちゃうまかったんでしょ?」


「中学の時は県大会で優勝したんだ。俺は1番ショートでスタメンだった。当時は天才って言われてたんだぜ」


その時何故か野球を辞めた後悔みたいなものが頭をよぎった。クリのサーフィン、ジュンのバンドそれに負けない趣味として選んだDJだったが練習してもそれを披露する場所が限られていた。


だから上達しているのか自分ではわからなかった。


「ふーんすごいなー。テツはクリとかジュンに比べてって思ってるかもしれないけどテツの野球は二人に負けない立派な才能だったと思うよ。でも今はDJ頑張っているか」


「練習しているんだけどなんかやる場所がなくて。クラブは未成年入店禁止って言われちゃうし、ナベくんに相談してもまだ練習が必要かだっで言われちゃうし…この前の文化祭楽しかったな」


「焦らなくていいんだよ。大学生になったらクラブも行けるしその時は有名なDJになってるよきっと」


僕はナオといるのは楽しかった。でもそんなナオは横浜でも有名で何度も一緒に歩いているときにスカウト受けたりしていて、僕と本当に釣り合ってるのか不安があった。それが僕を焦らせてもいた。


「ナオ実はねこんなのナベくんから貰ったんだ」


DJバトルのフライヤーをナオに見せた。


「俺これに出ようと思って。少しでもナオに釣り合いたいと思って」


「またそんな事言って。私はそのままのテツが好きって言ってるじゃん。あっもうこんな時間になっちゃった。英会話のレッスン行かなきゃ。」


ナオと別れた後、ナベくんの店に行った。このバトルでいい成績を出す事がナオに釣り合う男になると信じていた。


僕はナベくんの店で練習に明け暮れた。

同じ音が出るレコード2枚をターンテーブルに乗せてループさせる。スネアの音を使いスクラッチして音を繋げて行く。わずか10分間の間にどうそれを構成するのか構成力も試される。


ナベくんは必要以上のアドバイスは絶対にしない。ポイントだけ伝えてあとは僕に考えさせる。


中学校の頃の野球のコーチに教え方が似ていた。

基本的には自分で考えさせる。そういうスタイルだった。でも僕にはそれが心地良かった。


練習を見ていたナベくんが伝える

「おし!結構いいんじゃないか?構成もバッチリだし大きなミスも無くなってる。やっぱテツお前センスあるよ。あとは細かいところまで磨き上げる事だな。」


「本当に?やった!本番まで練習するよ」


「おう頑張れよ。何かあったらいつでも来い。うちの店暇だしな」


その言葉を聞いたギターコーナーにいた社長から厳しい視線が届いているような気がした…。

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