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落語【声劇台本書き起こし】

落語声劇「野ざらし」

作者: 霧夜シオン
掲載日:2024/11/28


落語声劇「野(の)ざらし」


台本化:霧夜(きりや)シオン@吟囁亭喃咄(ぎんじょうていなんとつ)


所要時間:約35分


必要演者数:2名

      (0:0:2)

      (2:0:0)【性別準拠人数比率】

      (1:1:0)

      (0:2:0)


※当台本は落語を声劇台本として書き起こしたものです。

よって性別は全て不問とさせていただきます。

(創作落語や合作などの落語声劇台本はその限りではありません。)


※当台本は元となった落語を声劇として成立させるために大筋は元の作品

 に沿っていますが、セリフの追加及び改変が随所にあります。

 それでも良い方は演じてみていただければ幸いです。



●登場人物


八五郎(はちごろう):尾形(おがた)の隣(となり)に住む大工。

    夜中に尾形(おがた)と女性の会話をわざわざノミで穴を開けてまで盗み聞

    きし、なおかつそれをネタに金を貰(もら)おうと考える、

    ぶっちゃけ少し頭の足りないろくでなし。


尾形(おがた):尾形清十郎(おがたせいじゅうろう)。年配(ねんぱい)の武士。

   真夜中に訪ねてきた女性と語らっているところを八五郎(はちごろう)にのぞき見

   られる。


新朝:幇間持(たいこも)ちとはすなわち、太鼓持(たいこも)ちのこと。

   宴席などで盛り上げる芸者の男版。

   八五郎(はちごろう)の独り言を聞いて勘違いし、わざわざ祝儀をせしめよう

   と訪ねてくる。


釣り人1:向島(むこうじま)に釣(つ)りに来ていた釣(つ)り人。

     八五郎(はちごろう)のせいで散々な一日に。


釣り人2:向島(むこうじま)に釣(つ)りに来ていた釣(つ)り人その2。

     八五郎(はちごろう)のせいで散々な一日に。


語り:雰囲気を大事に。




●配役例


八五郎・釣り人2:

尾形・釣り人1・新朝・語り:



※枕はどちらかが適宜(てきぎ)兼(か)ねてください。



枕:世の中には道楽(どうらく)という言葉がございます。

  道を楽しむと、こう書くわけですが、本当に一つの事を楽しめるよう

  になるには全身全霊(ぜんしんぜんれい)全財産親戚(ぜんざいさんしんせき)の一軒くらい潰(つぶ)さないと、なかなか

  その境地(きょうち)には至(いた)らないことが多いです。

  何でもやれるよ、麻雀(まーじゃん)だろうがゴルフだろうが何だってできる、と、

  こういうのは大(たい)したことはないそうです。

  「何でも来いに名人なし」という言葉は、実によくできていますな。

  本当に一生懸命(いっしょうけんめい)やらないと楽しむという境地(きょうち)にはたどり着けない。

  大阪の方へ行くと道楽(どうらく)ではなく、極道(ごくどう)と言うそうで。

  もう語感(ごかん)からして命懸(いのちが)けだというのがビンビン伝わってきますな。

  道楽(どうらく)と言っても様々なものがありますが、釣(つ)りもその一つです。

  釣(つ)りと言えば有名なのが、古代中国にいたとされる太公望呂尚(たいこうぼうりょしょう)という

  人物です。

  この人は釣(つ)りをしながら自分の主君(しゅくん)になる人、文王(ぶんおう)というんですが

  その人と出会う事になります。

  太公望(たいこうぼう)はみごと自分の主君(しゅくん)という大物(おおもの)を釣(つ)り上げましたが、

  誰(だれ)でも思い通りのものを釣り上げられるかと言えばそうでもないよう

  で。


八五郎:【戸をドンドン叩きながら】

    おぅごめんよッ! ごめんよッ!! ごめんよッ!!!


尾形:~~うるさいな朝っぱらから。

   戸をドンドン叩いているのは、隣(となり)の八(は)っつぁんかい?


八五郎:【戸をドンドン叩きながら】

    そうだよッ、開けとくれよッ!


尾形:分かったよ、いま開けるから。

   【戸を開けながら】

   そうドカドカやって——!【手を一回叩きながら】あだっ!


八五郎:あ、いけね。


尾形:おい、なんだってわしの頭をぶつんだい!?


八五郎:いやだって、今ドンドン戸を叩(たた)いているとこをさ、

    先生がガラッと開けるもんだから、手がすっぽかしてポーンて

    いっちゃったよ。

    戸にしちゃぁ柔(やわ)らけぇと思ったね。

    でも別に痛かねえや。


尾形:そりゃあわしが言うセリフだよ。

   こんな朝っぱらからお前さん、いったい何事だい?


八五郎:何事もかに事(ごと)もねぇ。

    先生、黙ってお金を一両(いちりょう)くださいよ。


尾形:お前さんも変な人だな。

   いわれのない事言ったって、金はびた一文たりともやらないよ。


八五郎:いわれがねえ?

    おう、じゃあ謂(いわ)れ因縁故事来歴(いんねんこじらいれき)、物語(ものがた)って聞かせようじゃねぇか

    。

    夕(ゆう)べの女、一体どっから連れてきたんだい?


尾形:夕(ゆう)べの女?

   八(は)っつぁん、わしは独(ひと)り者だよ。

   婦人(ふじん)はそばへも寄せ付けない、聖人(せいじん)のような暮らしをしてるんだ。

   お前さん、夢でも見たな?


八五郎:夢だァ?

    おう先生、夢じゃねえ証拠(しょうこ)を見せようじゃねえか。

    そこの壁の穴を見てくれよ。あっしが開けたんだ。


尾形:なに、穴を……?

   ぁあッッ…?!!【今気づいた】


   やりゃあがったね、アレぁお前さんの仕業(しわざ)か!

   それにしても大きな穴を開けたな。

   いったいなぜこんな良からぬ悪戯をしたんだ。


八五郎:したくもならァね!

    あっしァ夕(ゆう)べ、ごろっと横になってみたものの、なかなか寝付(ねつ)かれ

    ねえ。

    気が付きゃあ真夜中時分(まよなかじぶん)、寒いってんでひょいっと目が覚めると、

    ひそひそひそひそ男と女の話し声が聞こえてきた。

    長屋(ながや)三十六軒、独(ひと)り者はずいぶんいるが、

    夜夜中(よるよなか)に女ァ引っ張り込むような、そんな粋(いき)な野郎は

    どこのどなただろうってよ。

    よもや先生のとこだとは思わなかったねェ。

    声が聞こえて形が見えねえってなこんなに気になることはねえからよ、

    見てえ一心で無い知恵を絞ったね。

    ご存知のとおりあっしァ大工(だいく)だ。

    商売物(しょうばいもの)のノミで声を頼りに壁の薄いとこを見繕って、

    ガリガリガリガリ穴を開けてひょいっとのぞくってぇと

    文金(ぶんきん)の高島田(たかしまだ)よ。

    先生、あれァ良い女だねェ、年の頃(ころ)なら六、八だね。


尾形:…妙な数え方だね。

   しかもお前さんは、なぜそう半端(はんぱ)に省略(しょうりゃく)してものを言うんだい。

   十六、十八と、ちゃんと十を足さないと、わしがお縄(なわ)になるじゃな

   いか。

   しかもそれを言うなら十七、八だろう。

   十六、八じゃ七(しち)が抜けてる。


八五郎:へへ、七(しち)は先月流しちまったよ。

    今ごろどっかの質屋(しちや)に流れついてんじゃねぇかい?


尾形:何の話をしてんだい…。


八五郎:しかし覗(のぞ)いてて驚いたね。

    先生、わしは女はそばへ寄せ付けない、なんてこと言ってよ、

    あんなうめぇことやってる。

    色は白を通り越してちょいと青みがかってたがいい女だね。

    顔の小せえ、肩が小柄で抱くとぐっと中へ入るようなね、

    目のぱっちりして吸い付きたくなるような唇をしやがってね、

    何ともたまらねえ綺麗なほっぺただ。

    おかげでこっちは一晩中まんじりともしねえ。

    これでもまだ夢だってとぼける気かい?


尾形:…ん、んんッ。


八五郎:お?痰を切りやがったね?


尾形:…ならば八(は)っつぁん、夕(ゆう)べの婦人(ふじん)を御覧(ごろう)じたのかい?


八五郎:そりゃもう、気になって気になって御覧(ごろう)じ過ぎちゃったよ!

    先生、いったいどうしちまったんだい?

    白状(はくじょう)しねぇ!

    …今なら罪は軽いよ。


尾形:見たのであれば、いた仕方(しかた)がない。

   それなら聞かせてやるが、夕(ゆう)べの事を話すとなると、

   少ぉし怪談(かいだん)じみてくるぞ。


八五郎:やめてくれ先生、怪談(かいだん)抜きで頼むよ。嫌(きれ)ぇなんだ。

    あっしは臆病(おくびょう)でね、怖(こえ)ぇ話を聞くと、夜中に一人ではばかりへ

    行けなくなっちまうんだ。


尾形:話の順というものがあるからまぁ聞きなさい。

   実は八(は)っつぁん、こういうわけだ。


八五郎:おや、そういうわけですかい。


尾形:まだ何も言っちゃいないよ!

   …お前さんも知っての通り、わしは釣(つ)り好きだ。

   昨日も向島(むこうじま)へ行ったが、間日(まび)と言うのか雑魚(ざこ)一匹かからない。

   こういう日は、天が殺生(せっしょう)をしてはならんと戒(いまし)めているのだろう。

   釣(つ)り竿(ざお)に糸を巻き付けて帰り支度(じたく)をしているうちに、

   陽(ひ)がいつの間にか西に傾(かたむ)いていた。

   金龍山浅草寺(きんりゅうさんせんそうじ)で打ち出す鐘(かね)が陰(いん)にこもって物寂(ものさび)しく、

   ぼぉ~ん………、【←長さは演者次第だが、低音のまま延ばす。】

   と鳴るとね…、


八五郎:せんせぇ、もうちょっと陽気(ようき)にやってくんねえかい?

    ぼぉ~ん、じゃなくて、ぼぉーーん!てよぅ!

    鬼婆(おにばば)屁(へ)ェこいたなんてなァいいね!

    あっしぁね、見かけは弱そうだけど、芯(しん)も弱いんですよ!


尾形:【無視して重々しく】

   四方(よも)の山(やま)やま雪解(ゆきと)けて、水嵩(みずかさ)まさる大川(おおかわ)の、

   上げ潮(しお)南(みなみ)でざぶーりざぶりと岸辺(きしべ)を洗う波の音、


八五郎:ぅ、ぅわ、わわわ…。


尾形:辺りはうす暗くなってわし一人、

   風もないのに片江(かたえ)の葦(よし)がガサガサっ、ガサガサっと

   動いたかと思うと…中からすぅーーーっと…


   出ェェたぁぁアアア!!!


八五郎:わぁったったったッッァッッ!!


尾形:【↑のセリフに食い気味に】

   ってこらこらこらどこへ行くんだ、待ちなさいッッ!!


八五郎:ぃぃいえ待ちませんん、放してくださいぃッ。


尾形:放せないよ!

   いま、お前さんが驚いた拍子(ひょうし)にね、ここに置いといたわしの

   紙入(かみい)れが姿を消したんだが?

   よもや、自分の懐(ふところ)に入れてやしないかい!?


八五郎:あっしが?

    先生の?

    紙入(かみい)れを?

    冗談(じょうだん)言っちゃいけませんよ。

    あっしはそういう男じゃありませんよ。

    驚いた拍子(ひょうし)に人の財産を懐(ふところ)に捻(ね)じこんで、それで家へ帰っちまお

    うだなんてそんな、あっしは男の出来(でき)がねーー

    【胸をポンと叩くと紙入れが転がり落ちてくる】

    あっ。


尾形:…。


八五郎:…。

    ……これかな?


尾形:これかなじゃないよ!

   なんだって人のものを懐(ふところ)に入れてるんだ。


八五郎:いや、あのすんません…驚くとなんかうわーっと懐(ふところ)へ入れたくな

    って…。

    口惜(くや)しいけど返すよ。


尾形:持って行き損(そこ)ねて口惜(くや)しいとかなんだい、まったく。

   それにお前さん、足元が濡(ぬ)れてるぞ?


八五郎:へへ、ちびりと漏(も)らした。面目(めんぼく)ねえ。


尾形:面目(めんぼく)ねえじゃないよ汚いな!

   驚いてしょんべんとは、まるでセミだな。


八五郎:セミと一緒にしねえでもらいたいね!

    で、何が出たんです?


尾形:カラスが一羽。


八五郎:カラスだぁ!?

    なぁにを言ってやんでェ、さんざっぱら人を驚かしといて、

    カラスならカラスとお手軽(てがる)に言ったらどうだい。

    何が飛び出すかと思って、こちとら肝(きも)っ玉(たま)が上がったり下がった

    りしてらァ。

    で、そのカラスがどうしたんで?


尾形:ねぐらに帰るカラスにしては、ちと早すぎると思ってな。

   わしも物好き、なんの気なしに葦(よし)をかき分けてみると、

   そこに一つの生々しいどくろがあった。


八五郎:はぁ~、唐傘(からかさ)の壊(こわ)れたやつかい?


尾形:そりゃろくろだよ。

   しかばねだ。


八五郎:はぁ、赤羽(あかばね)か。


尾形:誰だよ。

   そうじゃない、人骨(じんこつ)、野(の)ざらしだ。


八五郎:あぁ、そうですかぁ、人骨(じんこつ)、野(の)ざらし?

    はははは……てなぁ、なんです?


尾形:何って…骸骨(がいこつ)だよ!


八五郎:あぁ、げぇこつか。


尾形:げぇこつとはなんだ。

   いずこの方かは知れないが、

   このような野(の)に屍(しかばね)をさらしていては浮かばれまい、不憫(ふびん)なもの、

   だ。

   そこでわしが上手(うま)くはないが、ねんごろに回向(えこう)をしてやったよ。


八五郎:回向(えこう)だって? つまらねえことやりやがったなぁ。


尾形:いや、手向け(たむ)をしてやったんだよ。


八五郎:はぁ、たぬきがどうしたんで?


尾形:~~なぜそう話が分からないんだね。

   「月浮(つきう)かぶ 水に手向(たむ)けの 隅田川(すみだがわ)」   

   生者必滅会者定離(しょうじゃひつめつえしゃじょうり)、頓証菩提(とんしょうぼだい) 南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ) 南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)

   と唱(とな)えて、腰につるした瓢(ふくべ)の呑(の)み残しの酒を骨(こつ)にかけた。

   すると気のせいか、骨(こつ)がぼうっと赤くなったような気がしたので、

   あぁ良い功徳(くどく)をしたと、家へ帰って寝酒(ねざけ)を吞(の)んで横になった。

   さて何刻(なんどき)であろうか、ほとほとと、戸を叩(たた)いて訪(おとず)るる者あり。

   何者かと問(と)うてみると、かすかな声で「向島(むこうじま)から参りました。」。

   はて、向島(むこうじま)に親類知己(しんるいちき)の類(たぐい)は無し、となると、あれほど回向(えこう)してや

   ったはかえって徒(あだ)となり、狐狸妖怪(こりようかい)の類(たぐい)となって誑(たぶら)かしに参ったか

   !

   年は取っても腕に年は取らせぬつもり、

   この尾形清十郎(おがたせいじゅうろう)、身に油断(ゆだん)なく長押(なげし)の槍(やり)を小脇(こわき)にかいこみ、

   つかつかつかつかつかとーー


八五郎:【↑の語尾に喰い気味に】

    ちょちょちょ待ってくださいよ。

    先生の話はとても調子(ちょうし)がいいんですけどね、

    あっしは壁一つ隣(となり)ですよ。

    どうかするってぇと、朝昼晩と日に三度遊びに来る。

    だけどね、今までいっぺんだってこの家の長押(なげし)に槍(やり)が掛かってた

    のは見た事がねえ。

    槍(やり)どっから持ってきたんです?


尾形:…槍(やり)が無いから、ほうきを小脇(こわき)にかいこんだ。


八五郎:なんだほうきかよおい!

    ほうきと槍(やり)とじゃえらい違いだよ。

    第一ね、つかつかつかつかつかってね、

    この家そんなにないんだよ。

    あっしんとことおんなじじゃねえか。

    つかつっ、てぇともう裏へ抜けちまうだろ。


尾形:…まぁこれはもののたとえだから、黙ってお聞き。

   がらり戸を開ける、

   「乱菊(らんぎく)や 狐(きつね)にもせよ この姿」

   夕(ゆう)べの娘(むすめ)が音もなく、

   すーっとこれへ入ってきたと思いなよ八(は)っつぁん。

   「わたくしは、向島(むこうじま)に屍(かばね)を晒(さら)しておりました者。

   あなたの回向(えこう)によって今日(こんにち)初めて浮かぶ事ができました。

   行くところへ参る前に、お礼に参じました。

   おみ足(あし)なりともおさすりいたしましょう。」

   はるばる向島(むこうじま)から来たる者をすげなく帰すのも何とやら、

   足をさすらせ、肩(かた)を叩(たた)かせしていた。

   夕(ゆう)べのあの娘はそういうわけで、この世の者じゃないんだよ。


八五郎:ぇぇ…、この世の者じゃねえって事は、あの世の者ですか…。

    イイ女だったなァ…ああいうイイ女なら、あっしぁ幽霊でも何で

    もかまやしねえ。

    みっちり話がしてみてえと思うんですけど、

    その骨(こつ)ってのはまだありますかね?


尾形:それは分からんよ。


八五郎:わからんだなんてそんなしみったれた事言いやがってぇ。

    とぼけんなよ。


尾形:別にとぼけてるわけじゃないけどもな。

   まぁ行ってみればあるかもしれんよ。


八五郎:あ、そうすか。

    じゃ、なんとかかんとかって言う、

    その骨(こつ)の来る間抜(まぬ)けの句(く)ってのを教えてくださいよ。


尾形:間抜(まぬ)けの句(く)ではない、手向(たむ)けの句(く)だ。


八五郎:ぁそうそうそう、たぬきの句(く)。


尾形:【若干強調して】

   手向(たむ)けの句(く)!


八五郎:へへへ、手向(たむ)けね、手向(たむ)け。


尾形:「月浮(つきう)かぶ 水に手向(たむ)けの 隅田川(すみだがわ)」   

   生者必滅会者定離(しょうじゃひつめつえしゃじょうり)、

   頓証菩提(とんしょうぼだい) 南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)なむあみだこらこらこらこら!

   何をしてるんだ、人の釣(つ)り竿(ざお)をガラガラガラガラかき回して。

   おいおいおいいかんよ、おい、その釣(つ)り竿(ざお)は持ってってはいかん!

   だめだめだめ!それはわしが大事にしている釣(つ)り竿(ざお)だ、

   他のを持って行きなさい!


八五郎:てやんでぇ、ぐずぐず言うなィ!

    借りてくよォーーーいッ!


    【三拍】


    はははは、なぁに言ってやんでぇ唐変木(とうへんぼく)。

    「わしは聖人じゃからな、婦人(ふじん)は好かんよ。」なんてよぅ。

    あれでとぼけて釣(つ)りだ、釣(つ)りだって言っちゃ、

    女の骨(こつ)釣(つ)って歩いてやがった、いやらしいジジィだねまったく。

    人は見かけによらないね、ええ?


    おやァ? 今日はまた大勢(おおぜい)釣(つ)り師(し)が出てますよォ!

    陽気(ようき)がいいから、…みんな骨(こつ)釣(つ)ってやんのかね?

    みんなでそんなに釣(つ)られたら、俺の釣(つ)る骨(こつ)が無くなっちゃうよ。

    まぁた年寄(としよ)りばっかりだよこれ。

    近ごろの年寄(としよ)りは色気(いろけ)づきやがったねまぁ。


    うぉぁーーーいッッ!!

    骨(こつ)釣(つ)れるかァ?骨(こつ)骨(こつ)ゥ!

    骨(こつ)は釣(つ)れるかァ骨(こつ)はよ!


釣り人1:…はぁ?骨(こつ)ぅ??

     今みんなでもって、お魚ァ釣(つ)ってます。


八五郎:てやんでぇこの野郎とぼけやがって。

    隠そうったってそうはいかねェぞ。

    ネタは上がってんだネタは。

    どんな骨(こつ)を釣(つ)りに来やがったてめぇは!

    新造(しんぞ)か年増(としま)かァ?

    乳母(おんば)さんか子守りっ子かァ?

    泡ァ喰(く)らってオカマなんか釣(つ)るな!

    どんな女だァーーーーッッ!!?


釣り人1:何ですかねあれ、土手(どて)の上で女の事ばっか口走ってますよ。


釣り人2:目が血走ってますね。

     夕(ゆん)べかみさんにでも逃げられたんじゃないですか?


釣り人1:そんな気味(きみ)の悪いものは釣(つ)ってませんよ。

     今みんなでもってね、仲良くお魚を釣(つ)ってんですよ。


八五郎:なぁに言ってやんでェこの野郎ォ。

    魚釣(さかなつ)るってツラかおめぇは。

    首でも吊(つ)れェ!


釣り人1:な、なんだありゃ…。


八五郎:俺も今そこへ行くぞォ!


釣り人1:ぇっ来るよ、来るって!


釣り人2:困りましたなぁ、あぁ降りてきましたよ。


釣り人1:すいません、そちらお膝送(ひざおく)りを願いますよ。

     あぁ結構結構(けっこうけっこう)。


八五郎:スチャラカチャンチャン、スチャラカチャン♪っとォ!

    さぁどいてくれどいてくれ!

    どっこいしょのしょっと!


    あたしゃ年増(としま)が~っ、好きなの、よォ~~♪


釣り人1:なんか釣(つ)りしてるようじゃないよこの人。


釣り人2:湯でも入ってるみたいだよ。


釣り人1:それもいいけどこの人…ぷっ。


八五郎:あん? 噴(ふ)き出しやがったな。

    人の顔見て噴(ふ)き出すツラかよ!

    吹けば飛ぶようなツラぁしやがってこの唐変木(とうへんぼく)のあんけらそォ!


釣り人1:餌(えさ)ァつけてないってのは乱暴だね。

     ちょっとあなた、失礼ですがね、餌(えさ)を付けないと

     お魚は釣(つ)れっこござんせんよ。


八五郎:何をォ?

    餌(えさ)ぁつけなくっちゃお魚は釣(つ)れっこござんせん?

    ほざいたぬかした、こいたねこのバカ。

    てやんでェ、連れっ子もままっ子もあるかィ。

    こうやってたらそのうち日が暮れて、

    鐘(かね)がごぉーんっと鳴るだろ。

    で、葦(よし)がガサガサってやってカラスがパッと飛びゃあこっちのも

    んだ。


    【※サイサイ節の替え歌です。】

    鐘(かね)がボンとなァりゃサァ♪

    上げ潮(しお)ォ 南サ♪

    カラスがパッと出りゃ コラサノサ♪

    骨(こつ)がある サーイサイ♪

    スチャラカチャンたら スチャラカチャン♪


釣り人1:しょうがないねこの人は。

     もしもし、もしもしあのですね、その、浮かれて騒(さわ)がないで

     もらえませんかね?

     せっかくお魚が寄って来てるんですよ。

     あなたの声聞いてみんな魚が逃げちゃうじゃないですか。


八五郎:何ィ!?

    俺の声を聞いて魚が逃げるゥ?

    アゥ!

    魚に耳があんのかい? どこについてんだ、教えろ、見せろ!


    【※サイサイ節の替え歌です。】

    そのまた骨(こつ)にとサ♪ 

    酒をば掛(か)けりゃサ♪

    骨(こつ)がべべ着て コラサノサ♪

    礼に来る サーイサイ♪

    そらスチャラカチャンたら スチャラカチャン♪


釣り人1:ぁぁ水をかき回しちゃ困りますよ!

     水をかき回さないでください!

     しぶきがかかるじゃないですか!


八五郎:ハァ? 誰がかき回してんだよ誰が!

    しぶきがかかるゥ!? 天龍下(てんりゅうくだ)りだと思って諦(あきら)めろィ!

    おめえの国じゃ何か、こういうのをかき回すってのか?

    かき回すってのはな、こぉぉぉやるんだよ!


釣り人1:ぁあぁあ、ホントにやっちゃったよおい…。


釣り人2:ダメだこりゃ、今日はもうお魚ぁ釣(つ)れませんな…。


釣り人1:しょうがねぇ、面白(おもしろ)いから見てましょう。


八五郎:だけど、先生んとこ来た女は、ちょいと年が若すぎたね。

    若い方が水っぽくておもしれェって言うけどよ。

    痛がるばかりで面白(おもしろ)くねえことの方が多いって言うね。

    遊んでて面白(おもしれ)ぇのは、二十七(にじゅうしっ)、八(ぱち)、三十凸凹(さんじゅうでこぼこ)、

    乙(おつ)な年増(としま)の骨(こつ)がいいってな。

    どんな形とらしても嫌がらねぇし、脂(あぶら)が乗ってたまんねぇよ。

    【自分の妄想に浸っている】

    やってきますよォ、カラコンカラコンカラコンカラコン~。

    「こーんばーんわァー」

    なぁんでェお前、待ってたんだよ、こっち入りなァ。

    「うまいこと言って、お前さんそばに角(つの)の生える人かなんかいる

    んじゃないの?」

    んなもんいるもんかい、一人もんだよ。

    いいからこっち入ってくんねぇ。

    「そう?じゃあたし、お前さんのそば行って座ってもよくって?」

    いいから座りなぁ。

    「そぉう?」

    なんてやってね、

    骨(こつ)が、ツツツツと上ってきて、くくっ、あっしの脇(わき)へ、くっ、

    ペタッと座って…。


釣り人1:水たまり座っちゃったよ。

     頭(ここ)、あんまりよくないんじゃないの?


八五郎:【自分の妄想に浸っている】

    「だけどお前さん、あたしが若いからってかまってくれるんだ。

    あたしがおばあちゃんになると若い女と浮気をするだろう?」

    浮気なんかするもんか、おめえを可愛がるよってんで、

    手を取ってやると待ってましたとばかりに、よろよろって倒れる

    ね!

    膝(ひざ)の上に乗っかる、いい匂いがしてたまらないねちきしょう!

    どっから攻めようか、上から下から攻めようかね。

    三所攻(みところぜ)めてェやつでひぃひぃ言わしてやりたいね!

    「たまんなくなっちゃった、なんとかしておくれ!

    収めておくれよ!」

    ってんで、

    心配するな、ゆっくり楽しむんだ、今日からおめえと夫婦(めおと)だ。

    「うまいこと言ってお前さん、その口でもってあたしを騙(だま)すんだ

    よ、ちきしょう。お前さんのその口が憎らしい。

    あたしを騙(だま)すお前の口が、

    【泣きながら】おまえの口がぁあぁぁ、にぃくらしいィィ…!」


釣り人1:痛い痛い痛い痛い!

     痛いね! 人のほっぺたつねるなよ!

     そういうこたァてめぇ一人でやってろぃ!


八五郎:へへ……妬(や)くなよォ。


釣り人1:妬(や)きゃしないよ!

     嫌な奴だねこいつは。


八五郎:【自分の妄想に浸っている】

    「だけどお前さん、浮気(うわき)したらくすぐるよ!」

    よせやい、俺ぁくすぐられるのはダメなんだよ。

    「そんなこと言わないでさ、ちょっとくらいくすぐらしておくれ

    よ。」

    なんてね、骨(こつ)が優しい手を出してあっしの脇(わき)の下を、

    こちょこちょこちょこちょっと、

    何するんだ、ダメだって、やめて、くすぐったいから……あっ。

    【鼻に釣り針が引っ掛かる】

    …痛い。

    あたたた……!


釣り人1:あの人、魚ァ釣(つ)らねえで自分の鼻を釣(つ)っちまったよ。

     どうしましたァ!?


八五郎:【鼻に釣り針が引っ掛かってる】

    っこれ、取ってくんない?

    誰かこれ取ってくれよ、取ってくれってんだ。


    ちきしょう、みんな手を叩(たた)いて笑ってやがる。

    薄情(はくじょう)な連中だイテテテテ、

    どういうわけでこんなとこへ針が引っ掛かりやがんだ。

    ぁでぇッ!

    うわぁいてぇ…鼻から血が出て来ちゃったよ。

    バカバカしくて鼻血(話と掛けてる)にならねえな!

    こんなものが付いてるからいけないんだよ。

    捨てちまえ!そりゃッ!


    さあ来い!


釣り人1:あの人、釣(つ)り針(ばり)投げ捨てちゃったよ!

     それじゃ魚は釣(つ)れないよ!


八五郎:魚ァ釣(つ)りに来たんじゃねェ、俺ァ女を釣(つ)りに来たんだ!

    竿(さお)一本ありゃ何とかなるんでェ!


釣り人1:なんだねこりゃ、もう行きましょう。

     これ以上関わり合いになるのは止(よ)した方がいいですな。


八五郎:へっ、やぁっと邪魔なのがいなくなった。

    ぱーぱーぱーぱー色んなこと言って、うるせぇったらないね。

    なまじ色(いろ)には連れは邪魔、ってのを知らねえのかよ。

    …お? ありゃあ弁当だ。忘れて行きやがったんだね。

    ありがてぇ、腹減ってたんだよ。

    おっ、こいつァ焼き豆腐(どうふ)の煮(に)た奴だ。

    へへへ、いただこうじゃねえか。

    【食べながら】

    うまいねぇ、こういうのを釣りに来ていただけるとは思わなかっ

    たね。

    うん、うまい。

    これで夜になると女が来るんだ。

    昼間はありがとう、わざわざ豆腐(遠くと掛けている)の方から

    参りました、ってな。


語り:などと相(あい)も変わらず八五郎(はちごろう)の頭の中には、獲(と)りもしない狸(たぬき)の皮だけ

   がうず高く積まれていく。

   とやっている間にも、ついに待ち焦(こ)がれた金龍山(きんりゅうざん)浅草寺(せんそうじ)の鐘(かね)の音。


八五郎:おっ、鳴ってる鳴ってる、鳴ってますよォ。

    ここで葦(よし)をガサガサってやってカラスがパッとぉっとっと!

    出た出た!…出たけどカラスじゃねえなあ…椋鳥(むくどり)だ。

    カラスじゃねえと本寸法(ほんすんぽう)じゃねえんだけどなァ。

    まぁいいや、今日はカラスは風邪っ引きでむくちゃんが代演って

    やつだな、うん。

    さて、骨(こつ)は~どこ~に~…おっ、あった!ありましたよ。

    ありがてえ…?あれ、こっちにもある…ってあそこにもあらぁ。

    え、こっちにも?…ここ骨(こつ)だらけだぁ。

    どの骨(こつ)がいいかって目利(めき)きなんざできねぇよ。

    当たりハズレあったらやだな…。

    ま、いいや、みんなこうやってね、酒をまんべんなく振りかけと

    いて…先生みたいに飲み残しじゃねえ、わざわざ買って来たんだ

    よォ、聞いてる?

    俺んとこはね、浅草門跡様(あさくさもんぜきさま)の後ろ、八百屋(やおや)の横丁(よこちょう)入って角(かど)から

    三軒目(さんけんめ)、腰障子(こししょうじ)に丸に八の字、丸八(まるはち)としてあらぁ。頼むよォ。


語り:呑気(のんき)なもので八五郎(はちごろう)、とくとくとして続ける。

   妄想(もうそう)に夢中で気づかなかったが、葦(よし)の影に屋根船(やねぶね)が一艘(いっそう)、

   中には客待(きゃくま)ちをしている野良(のら)の太鼓持(たいこも)ちがいた。

   あんな大きな声で独(ひと)り言を言うもんだから、話はすべて筒抜(つつぬ)け。


八五郎:あーそうだ、骨(こつ)の来る間抜(まぬ)けの句(く)なんかあったね。

    えーっと、えーと…あ、

    「野(の)を肥(こ)やす 骨(ほね)に形見(かたみ)のススキかな」

    いや違うな…えーと…あ、

    「隅田川(すみだがわ) …狸(たぬき)が出てきて… ぽんぽこぽん」

    だっけか…?


新朝:おやおやおや、妙(みょう)な事を聞いちまったね。

   こんなとこで女と再会の約束なんかしてる乙(おつ)な奴がいるよ。

   えーっと、浅草門跡様(あさくさもんぜきさま)の後ろの八百屋(やおや)の横丁(よこちょう)入って角(かど)から三軒(さんけん)目、

   腰障子(こししょうじ)に丸に八の字、丸八(まるはち)としてあるって言ってたな。

   こんな所で「おや、お二人さん」なんてのも野暮(やぼ)ってもんだ。

   ようし、夜分(やぶん)にお宅の方へ、うかがい之助(のすけ)っ!


八五郎:まぁいいや、こんだけ丁寧(ていねい)に回向(えこう)したんだ、大丈夫だろ!

    んふ~、待ってるよォ!


語り:野良(のら)の太鼓持(たいこも)ちに聞かれていたともつゆ知らず、八五郎(はちごろう)、すっかり

   いい心持(こころも)ちで支度(したく)を進めていた。

   しかし待てど暮(く)らせど誰(だれ)も来ず、そのうち響(ひび)く丑(うし)の刻(こく)の鐘(かね)。


八五郎:なぁにやってんのかねぇ、さっきから鐘(かね)がゴンゴンゴンゴン鳴っ

    てんのによォ、来ないね。

    酒の燗(かん)をつける支度(したく)もできてんだ。

    まぁそうしてるうちに来るだろ。

    「こんばんわ、あたしよ、向島(むこうじま)から来たの」

    なぁんてねェ、へへへ!


新朝:こんばんわ!

   こんばんわ!


八五郎:?…ちょっと声が違うんじゃねえかい?

    なんだか下っ腹(ぱら)に力が入ってる感じだよ。

    まぁいいんだよ、来てくれりゃあこっちのもんだ。

    あいよ!今日からおめぇの家(うち)だよ!そこ開けて中ぁ入ってくれ!


新朝:へぇい!こんばんぅわッ!【←挨拶しながら驚いている】

   【つぶやくように】

   うわァ~~…国破(くにやぶ)れて山河(さんが)ありなんて言うけど、

   障子(しょうじ)破れて桟(さん)ばかりだねこの家(うち)は。

   突き当たりのあれ、仏壇(ぶつだん)でげすか?あのみかん箱。

   乙(おつ)なお仏壇(ぶつだん)でげすなぁ。

   サザエの壺(つぼ)のお線香立(せんこうた)てに、アワビっ貝(かい)のお燈明立(とうみょうた)て。

   江の島みたいな家(うち)でげすなぁ。


   うわァ~、結構(けっこう)なお家(うち)でげすなぁ!

   居ながらにして月見(つきみ)ができるなんざ、風流(ふうりゅう)でげす!

   貧乏(びんぼう)してもこの屋(や)に風情(ふぜい)あり!

   質(しち)の流れに借金の山ときたでげすねぇ!ヨーイヨイヨーイッとォ!


八五郎:なっなっなッ、なんなんだよこいつは!

    何だお前は!?


新朝:へい、あっしでげすか?

   あっしァ新朝(しんちょう)って太鼓持(たいこも)ちでげす。

   へへ、今夜の為にこの太鼓(たいこ)も、新しく馬の皮ァ張り直して新調した

   でげすよ!


八五郎:なに、太鼓持(たいこも)ちィ!?


    しまった、昼間の骨(こつ)は馬の骨(こつ)だった。




終劇



参考にした落語口演の噺家演者様等(敬称略)


三遊亭圓楽(五代目)

古今亭志ん朝(三代目)

立川談志(七代目)

柳家小三治(十代目)

春風亭柳好(三代目)



※用語解説


謂(いわ)れ因縁(いんねん)故事来歴(こじらいれき):謂(いわ)れ、と因縁(いんねん)、と故事来歴(こじらいれき)の三つの言葉を組み合わせ

         たもの。物事がたどって来た歴史や由来。


文金高島田(ぶんきんたかしまだ):根を高くした島田まげ。高尚(こうしょう)で優美(ゆうび)。婚礼(こんれい)の時などに結(ゆ)う

      女性の髪形。


はばかり:便所のこと。


間日(まび):前後に仕事などがあるその間の日。


金龍山浅草寺(きんりゅうざんせんそうじ): 東京都台東区浅草にあるお寺。


紙入れ:財布。


生者必滅会者定離(しょうじゃひつめつえしゃじょうり):生あるものは必ず滅び、会う者は必ず離れる定めにあ

         るという意味。


頓証菩提(とんしょうぼだい):仏教において段階的な修行を経(へ)ずにただちに悟(さと)りを得る事。


葦(よし):水辺(みずべ)に群生(ぐんせい)する、ススキに似た穂(ほ)をつける多年草(たねんそう)。


瓢(ふくべ):熟したひょうたんの実の中身を取り去って乾燥させ、酒器や水筒の

  容器として用いた。


回向(えこう):お経などをあげることで積んだ「徳」を故人に回し(与え)、

   故人が浄土へ行けるようにすると同時に、お経を唱えた人にも

   浄土への道を開くという意味。


新造(しんぞ):町家の若い妻。転じて、妻。時には、娘。身分の低い武士の妻にも

   言った。この噺(はなし)には関係ないが、遊里(ゆうり)で客を取るようになったばか

   りの若い遊女を指す場合もある。


年増(としま):この時代の年増(としま)は数え年20の女性を指し、25で中年増(ちゅうどしま)、

   30で大年増(おおどしま)といった。


乳母(おんば):うば、の別読み。


あんけらそ:大阪弁でぽかんとしている様、またその人。

      「あんけ」はぽかんと口を開けているさま。


さいさい節:野ざらしの中でのさいさい節は替え歌。

      古典落語「野ざらし」においてもっとも難しい部分。


二十七(にじゅうしっ)、八(ぱち)・三十凸凹(さんじゅうでこぼこ):江戸庶民の年増(としま)の表現方法。

           凸凹とは、三十を基準に出たり引っ込んだりして

           いる事を指す。


三所攻(みところぜ)め:本来であれば相撲(すもう)の決まり手の一つで、足手の右足を内、

     または外掛(そとが)けして、もう片方の足を手ですくい、頭で相手の胸

     を押して浴びせ倒す勝ち方…であるが、この噺(はなし)の場合は…うん

     、皆様のご想像にお任せします。

     さすがは故・立川談志(たてかわだんし)師匠である。


本寸法(ほんすんぽう):本来の状態、あるべき姿、といった意味で用いられる表現。

    特に落語の用語として、型を崩していない・正統派である、

    という意味合いを込めて用いられることが多い。


浅草門跡様(あさくさもんぜきさま):東本願寺(ひがしほんがんじ)の事。




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