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銀霧のグレンツェ  作者: 鳥居賀風
不吉の島
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宝石術師の覚悟

ダリルはハルカゼの前に立ち、彼女に声をかける。


「ハルカゼさん。あなたは逃げなさい」

「あたしの刀が…」

「そう長くは時間を稼げない。なるべく遠くまで逃げてくれ」

「あたしは、正義の味方になりたかったのに…」

「ハルカゼさん」

「あたしは…」

「ハルカゼさん!!!!」


ダリルは、大きな声で彼女の名前を叫んだ。

その声が彼女にも届いたのか、虚な目はダリルの目視する。


「君は、逃げなさい」

「でも…」

「逃げていいんだ。正義の味方だって時には逃げたりすることもある。でも、ただ逃げるだけじゃ臆病者だ。逃げて逃げて立ち向かう力を蓄えるんだ。いつかその悪者を倒すための力を。逃げても諦めちゃ駄目だ。いいね?」


彼女は、その言葉に言葉は出さずに首で頷く。


「さあ、早く行きなさい」


ハルカゼは、必死に走り始める。

猪突猛進だった彼女の初めての戦略的撤退。

ただひたすらにその死神から逃れるために。


「逃すと思っているのかね?」


ダリアスの黒き手が彼女のことをどこまでも追いかける。

だか、その死神の手は届かない。

何故か。


そこには、たった一人その子の露払いをすると決めた男がいるからだ。


「私の命の全てをかけて、あなたをここから逃しません!」


___宝石術スファレライト


彼が今放てる最大火力の宝石術。


目の前に全てを焼き尽くしダリアスの姿が見えなくなる。

これで倒すなんて不可能だということはダリル自身もわかっていた。


___宝石術 トパーズ


この宝石の力によりダリアスの体力と傷を少し治癒させる。

そしてすぐさま、次の攻撃術を構築する。


宝石術は、魔法と異なり自身の魔力は消費することはない。

だが、手持ちの宝石が切れたらそこで攻撃の手段は失われる。

そして、ディメンションノズルによって宝石を掘り当てても、出てくる宝石は自身で選択することはできないため、ほぼ運試しみたいなものである。


だから、時間を稼ぐには残り手元にある宝石12個でなんとかしなくてはならない。

ひたすら、ダリルは宝石を放つ。

目の前にいるだろうと思われる死神目掛けて。


手元から宝石が、1つ2つと使用する度に砕け散っていく。


___残り6つになる。


___残り4つになる。


___3つ。


___2つ。


___1つ。



この1つが私の命の最後の宝石。

目の前に何事もなかったように立っている死神はゆっくりとこちらに近づいてくる。


ダリルは最後の宝石を解き放つ。


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