死なない存在
___奴は、いったいなんなんだ。
ハルカゼとダリルの目の前にいるダリアス=クーパーという魔法使いは、首が切断されても尚生きている。
あれはもう、人間ではない”本物”の化け物だった。
「…人間なら普通、首を切断されたら死ぬんだけだね。なんであんた生きてるの?」
ハルカゼは少し動揺しながらも、奴に問いかける。
「ああ。それは簡単なことだよ。私は、人間を辞めたのだ」
「人間を辞めた?」
「正確には、半分人間で半分影魔だが。狭間の門の向こうに行ったことにより、俺の中に影魔の因子が入り込み、双方の存在を手に入れた。結果的な話だがね。だから、私はたかだか首を切られたくらいでは死なない」
「化け物が…」
ハルカゼは、刀を構え直し次の一手をどうするか探っていた。
「ハルカゼさん。私が隙を作り出します」
ダリルがそういい、宝石術で防御盾を作り出し奴に向かって走り出す。
防御盾の形成と共に、同時に攻撃術も繰り出す。
防御盾の存在によって、目の前にいたハルカゼの場所は死角により奴は、わからなくなる。
そして、同時に攻撃術も展開する。
___宝石術 カーネリアン。
オレンジ色に輝く12本の剣が形成され、奴に向かって放たれる。
ダリアスは、その攻撃を何事もなかったように跳ね除ける。
が、このダリルの無駄とも言える攻防がハルカゼが一撃を与えるには十分な時間だった。
「これで、終わりだー!!」
そう叫びながら、今度は奴に心臓を刀で貫く。
首は切断され、心臓は貫かれて生きていられるわけは無い。
が、奴は、自身に刺さった刀の切先を優しく自身の指でなぞる。
自身の心臓付近から流れ出た血液が刀をつたって切先まで流れ落ちる。
それを、楽しそうに見ているダリアス。
「あーなるほど。この身体は、ここまで人間を超越してしまっていたわけか。これはこれで研究しなくては。君たちのおかげで、この身体のことをより知ることができたよ。心から感謝を」
ダリアスがそういうと、自身の刺さった刀を切先を持ち、自身で引き抜く。
血液が大量にこぼれ落ちる。
が、そんな液体などこの化物には、意味などなかった。
「この刀は、邪魔ですね」
奴がそういうと、刀を木っ端微塵に破壊する。
「私の、刀が…」
これはやばい。
ダリルは防御姿勢に入る。
もう勝ち目などなく、確実に殺される。
なら、どちらかが必ず生き残れるようにしなくてはと、思考していた。
刀を失ったハルカゼは、その刀が自身の魂であったかのように絶望の顔をしている。
彼女はもう戦えない。
なら、私がやる気ことは一つだけだ。
私がハルカゼを逃す。
これが私の最後の戦いになると、ダリアスは覚悟を決めた。




