勇気
彼は立ち上がった。
この絶望的な状況の中、彼だけが"勇気"を出し、相手と対峙する。
その姿は、あの頃の何もできないエリアスとは違っていた。
「君も私に何かようかね?」
「あの…俺は」
「用がないなら、さっさと殺されてくれませんかね?時間の無駄なので」
そういうと自信の持っているステッキを地面に叩きつける。
と同時にその叩きつけた地面から地割を起こし、その割れ目から真っ黒な手がエリアスを襲う。
が、その手はエリアスに届かない。
何故なら、レーチェが防御壁を発動していた。
「大丈夫?エリアスくん!」
「ああ、ありがとうレーチェ」
真っ黒な手は地割れの中へと戻っていく。
距離と時間制限があるみたいだった。
「ほう。妖精魔法とはなんとも珍しいですね」
「あなたの真っ黒な手も初めてみましたけど」
「そうおっしゃっていただけて嬉しい限りです、妖精様。私の魔法は、影魔法なのですよ」
「影魔法?」
俺は、影魔法なんてことは知らなかった。
正確には、影魔たちが使う魔法によく似ているとは思っていたけど、まさか。
「君もこの魔法は見たことあるのかな?」
「でも、その魔法は…」
「君の思っている通りだよ。これは影魔たちが使う魔法と同じモノだよ」
「なんであんたがそれを使えるんだよ」
このラディウスの世界には存在しない魔法なのだ。
まさか、向こうの世界で生まれたのか。
俺は、思考を巡らせるか分からない。
情報量が多すぎるのだ。
「安心してください。私は、こちらで生まれた人間ですよ。あなたは私のことを知らないのですか?」
「あんたのことなんて知らないよ」
「では、自己紹介を。私の名前は、ダリアス=クーパー。元炎の魔法使いです」
その名前を聞き、俺は思い出した。
「まさか、あんたが禁忌の魔法使い…」
「今は、そのような名前で呼ばれてるのですね。さて、少しはお喋りが過ぎたかもしれません。終わりにしましょうか」
ダリアスは、杖を持ち直し俺の方に向ける。
___影魔法 ナイトダンス
地面の割れ目から、今度は全身真っ黒何かが這い寄り始める。
それは、まさに影魔のようにも見える。
「エリアスくん。どうする?」
レーチェは覚悟を決めたようだ。
一人だと怖かったけど、隣で一緒に立ち向かってくれる人がいる。
それだけで、もっと勇気は湧いてくる。
防御壁が真っ黒何かによって推し壊されたその時。
そいつらは、白き槍で身体の中心をぶち抜けれ消滅する。
___フェアリーエンゲージ ver.エルメス
白き槍を持つ、エリアスがそこに立っていた。




