魔法使い
エリアスとレーチェも他のみんなとは別に襲撃地点へと向かっていた。
「レーチェ、さっき偶然できた魔法だけどさ、もしかしてアレもできるんじゃないかな」
「多分、できるような気がする!!後でやってみよー!」
すると、近くで爆発音のような大きな音が聞こえ、空に煙が舞い上がる。
俺たちは、急いでその場所へと駆けつける。
あたりは、建物に火がまわり地獄とかしている。
まだ、襲撃が始まったばかりらしく、影魔から人々が逃げ回っている。
俺たちは、奴らと対抗しようと急ごうとするが、レーチェが動きを止める。
「待って…なんかやばい気がする」
レーチェが指差した方向にいる人間。
それは、影魔が擬態した人間ではなく、明らかなる人間だった。
だが、その人間から溢れ出ている邪悪な雰囲気を放っている。
「でも、ここで俺たちが出ていかないと!」
様子を伺っていると、再び大きな音と共にあたりは砂煙が舞い上がる。
そして、次第に師な煙から一人の女性が姿を現す。
「あんたが、この襲撃の首謀者だよな?」
この高圧的な言い回しは、ハルカゼのものだった。
その彼女からの挑発を受け、その紳士はこちらに軽く会釈をする。
「首謀者なんかじゃありませんよ。ただの一般人です」
「いいや。あんたは一般人なんかじゃない。あんたからはみたことのないぐらいの悪の匂いがするからさあ」
「悪じゃないですよ。正義とも違うかもしれませんが」
「御託はいいよ。”悪速斬”これがうちの師匠からの教えでね」
「なら、かかっておいで」
その瞬間、風より速いスピードで、その男の懐に入り込み、刀を抜く。
そこまでは、俺も目撃した。
が、次の瞬間、ハルカゼが宙を舞い地面へと落ちる。
ユキカゼの腹部から赤黒いモノが地面へと流れ落ちていく。
物陰に隠れている俺は、それを潜めてみていた。
あれは、なんだ。
あんな人間をどうやって倒せばいい。
そもそもあいつは本当に人間なのか。
今だった何が起きたのか分からなかった。
突然、ハルカゼがやられた。
”魔法”のような一瞬の出来事。
”魔法”
この言葉が頭の中に残る。
あれは魔法なのだとしたら、俺たちが知っている本当の魔法使いなのか。
俺は、怖気付き立ち向かうことができない。
力を手に入れたとしても心はそう簡単には強くなれないのだ。
まさに、命がかかっているのならば特に。
「どうする?エリアスくん…」
レーちぇが俺に問いかけてくる。
俺は思考する。
どの選択肢が間違っていないのか。
このままいけば、ユキカゼも街の人々も危ない。
でも。…でも。
「あたしは、そう簡単に負けやしないよ。正義の味方だから、ね」
ユキカゼが、ボロボロの身体を起こし立ち上がる。
「勝負は、ここから、だ!」
エリアスは、その痛ましい姿が、羨ましくもあった。




