出発前夜
アルディアは、1人この町を探索していた。
正確には、警戒して情報を探っていた。
軍服の奴らが先にこの町に包囲網を張っている可能性も存在するからである。
ひときり確認を終え、今のところ無事だということもわかった頃には薄暗くなっていた。
アルディアは、人気の少ないところへ移動して、1人訓練を開始した。
ダルクでの一件で、自分に力が足りていないことを改めて痛感させられた。
一刻も早く強くならなければ。
一刻も早くこの銃に認められなければ。
その焦りが彼女の心を蝕んだ。
影魔を殺すのが私の使命で、それができないと私だけが生き残ってしまった意味がない。
私は、あの人たちの分も殺すために生きなきゃいけないんのだから。
「こんな時間まで、訓練ですか?」
ダリルが声をかけてきた。
「はい。この前の戦闘の復習をしようと思いまして」
「アルディアさんは、偉いですね。でも、身体を休めるのも修行の一つですよ。万全の状態に常にしておくのが、戦士の心構えというものです」
「わかってはいます。でも…私は強くならないといけないので」
「わかりました。でも、無理はなさらないでくださいね」
そういうとダリルは、その場から去っていった。
薄暗い闇の中で1人訓練しているモノ音だけがひたすらに聴こえた。
ザックの酒がらみからなんとか解放された俺は、再び自分の部屋に戻った。
そこには、俺のベットの上で寝ているレーチェがいた。
レーチェは妖精なのだが、俺たちと同じような体型なため、そのなんというか無防備でいられると目のやりどころに困る。
本当に、羽さえなければ、普通の女の子だと思ってしまう。
先ほどまで寝ていたレーチェがモゾモゾと動き出し、起きる。
「はあー。あれ、エリアスくん。おはよー」
「ああ、おはよう…」
あ、駄目だこれ。
服が、寝ていたせいが微妙にはだけている。
目のやり場に困り、違う方向を全力で向いた。
それに気がついたレーチェは、ハッとした顔をしたのちに恥ずかしいそうな声で、
「ごめん…」
と俺につぶやいた。
なんか今までバタバタしていたせいか意識してなかったけど、こう改めて意識すると緊張してしまう。
男女が一つ屋根の下にいるこの状況はいいものなのか。
久しぶりに無駄な思考を巡らせるエリアス。
ふと彼女を方を見ると、不安そうな顔をしていた。
そりゃそうだ。
思いだせば、彼女はこの世界を救う者を探して旅に出たわけだ。
時間だって限られているんだ。
俺は改めて自覚した。
「レーチェ、アルディアはリュミルの意志を継ぐ者じゃないのか?」
「彼女は、おそらく違うと思う。あたしの姿を見ることができないし、それになんか…」
「なんか?」
「いや、勘違いだと思うから気にしないで」
「ダリルはレーチェのことが視えるし、あんなに強い。彼ってことはないか?」
「どうだろ…でも、本当のリュミルの意志を継ぐものと出会った場合は、すぐわかるはずなんだよ。それは異質なはずだから」
「そっか」
何か声をかけなきゃと思った。
女の子に悲しい顔はさせちゃいけないってそう思えた。
「大丈夫だよ。俺も一緒に探すから。心配すんなって!」
「うん、そうだよね!ありがとう、エリアスくん!!」
___曇っていた空から月明かりが少しこぼれ落ちた。




