脱出③
エリアスがアルディアを助けに入る少し前の話。
ザックは、先ほどの子供が閉じこめらえている牢屋を目指し走っていた。
エリアスたちと一緒に脱出をしようとも考えたが、どうしてもそれを確かめたく、別々に脱出をする旨はエリアスに伝えてある。
それはあの実験を行なっていたリーダー格の男の正体を確かめるためだった。
あの時、遠くから見ていたからわからなかったが、俺には見覚えがあった。
けど、それを信じたくもなかった。
ザックがあの子供たちの牢屋にに辿り着くと、リーダー格の男と研究員がそこで何かをしていた。
俺は、恐る恐る身を潜めながらその男を観察する。
「ここ近辺の孤児は、もう少なってきています」
「そうか。ならもうここは用済みだな」
「しかし、どうして子供だけを媒体にあの石を生み出すんですか?」
「あの鉱石は、この世界で生み出されたものではないのだよ。人の負の感情にが重なり合って生まれた遺物。その負の感情は大人より子供の方が感受性が豊かな分、感じやすいのさ。まあ、詳しいことは言えんないのだがね」
「子供たちに少し同情してしまいます」
「何を言ってるんだ、君は?彼らは誇るべきなのだよ。歴史を変える力の礎になることができるのだから
リーダー格と研究員そう話していた。
その話にも驚きはあったが、俺は心は、それどころじゃなかった。
目の前にいたリーダー格の男は、紛れもなく”ブラック先生”だったからである。
___でもどうして?先生が
彼の頭には、疑問と不安が同時に身体を巡る。
あんなにエスト鉱石を反対していた先生がそれを作る研究をしている?
そのために子供達を犠牲に、しかもごく当たり前の道具のように話している。
俺の知っている先生とは明らかにかけ離れていた。
___やばい。
ここから逃げなくては、この組織は明らかにやばい。
俺は、その場から逃げようと動き始める。
「そこにいるのだ誰だ!」
先生は、隠れている俺に向かってそう叫んだ。
俺は、覚悟決めて姿を現す。
「…先生」
「君は…」
「助手のザックです。どうして…どうしてこんなことを酷いしているんですか?
「ああ、そうだザックくんだった。酷いことは一体なんの事を言ってるんだ?酷いことなんてこれっぽっちもしてないぞ」
「何を言ってるんですか、先生…。子供達が死んでるんですよ」
「それの何が問題なんだ?」
俺は、わからなくなってしまった。
嘘だと信じたい。
俺の知っている先生が記憶の中から塗り替えられていくような気がしていた。
「そうだ、ザックくん。君もこの実験に参加してくれ!ともにこの世界をよくしていこうじゃないか」
「…ごめんなさい。それはできません」
「なら、ここで死んでもらうしかないな」
ブラックが手を挙げると近くの軍服がやってきて銃を構える。
「俺は…俺の知っている先生は、こんな人じゃない」
「じゃあ、君の知っている先生とやらは死んだんじゃないのかな?これが本当の先生だよ」
その言葉とともに、俺は自作の煙幕を撒き散らす。
こういう”逃げる”はザックにとって得意分野であり、身につけざるおえないものでもあったのだ。
「おい、あいつを追うんだ!」
軍服たちは、視界の見えない中、俺を必死に探す。
が、見つからない。
次第に煙幕は晴れていき、そこにはもうザックの姿はなかった。




