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銀霧のグレンツェ  作者: 鳥居賀風
炭鉱の研究者
31/87

弱者の鉱石

俺たちが、再び中央エリアに戻ると実験が開始されていた。


あの中央に存在するショーケースの中に先ほどの子どもたちは入れられていた。

子どもたちは、この後何が起きるのかをわかっているらしく、天に祈りを捧げている。


白衣を着た研究者たちが集まり始め、大装置の最終調整を行っている。

その中のリーダーのような研究者が指示を出し、その装置が起動し始める。


次第にその大装置の稼働とともにショーケース上部に光の球体のようなものが生まれる。その球体は、側面に雷のようなものを宿しバチバチと音を響かせた。


その出来事は、唐突に起こった。

不意をつくようのその光の球体から一本の光の線がショーケース内に落ちる。

と同時にショーケースの中は、全方向真っ赤に染まる。

研究員が装置を停止させ、その光の球体は消滅した。


俺たちは、何が起こったか理解できていない。

とにかくわかっているは、目の前の子供達が殺されたという事実だけである。


俺は、急激な吐き気に襲われる。

こんなこんな残酷なことがあっていいのか。

アルディアの方を見ると、彼女もその残酷さに動けずにいた。

それは、ザックも同様であった。


リーダー格の男はショーケースの中に入り、地面に落ちている小さな”何か”を拾い戻ってくる。そして、その”何か”を他の研究員に預け別の場所に運ばせていた。


しかし、俺たちにはその”何か”が”何なのか”ということを残念なことに知っていた。


___あれは、赤い鉱石。エスト鉱石だった。


「ねえ、ザック。あれって…エスト鉱石じゃないよな?」

「あれは…残念だけどエスト鉱石だ。エリアス…」

「そんな…」


4人は、その残虐さに言葉を失う。

しかし、俺たちが驚かせるのは、それだけじゃなかった。


「そして、信じたくはないんだがおふたりさん…。あのリーダー格の男が、先生だ…」


俺とアルディアは、2人して、ザックの方を見る。

ザックも信じられないような表情をしている。


「でも、ブラック博士はエスト鉱石のことを否定していたはず。なのにどうしてこの実験に協力を」

「そんなの俺にもわからんーよ。でも、あれは先生のようで先生じゃない。あんな残虐な人じゃないんだ、本当は」

「じゃあ、あれは一体誰なの?」


謎が謎を呼び始める。

その謎は、より深い闇をも引き込む。


「みんな…嫌な予感がする。早く逃げたほうがいいよ」


レーチェがそういった途端、全身に恐怖を帯びる。

この感覚、俺は知っている。

あのセレーノで影魔(ファントム)に襲われた時、同じ感覚に襲われる。


銀霧がこの場に次第に立ち込め始め、大きな門が顕現しそこから1体のあの悍ましい影魔(ファントム)が姿を表す。


「よお、久しぶりだな。ネルファ」

「ああ、ようやくこっちの世界に戻ってこれたぜ」


驚いたことにその影魔(ファントム)は言葉を話し、そして次第に人間の形態へと変化を遂げる。

20代くらいの背広を着た青年に姿を変えた影魔(ファントム)はニヤリと笑う。

門は次第に閉門していき、銀霧も消えていった。


「やっぱり、この程度の銀霧(ネガー)じゃ狭間の門(リトルノゲート)を完全顕現できないか」

「まあ、焦ることはなさ。じっくり痛ぶりながらこの世界を楽しもうぜ」


___あの喋る影魔(ファントム)はやばい。



俺の身体がSOSを発していたのだが、隣にいるアルディアの様子がおかしい。

彼女はいつも冷静であり、いっとき感情にも左右されないと思っていた。

しかし、今の彼女は違った。

怒りに駆られた表情をしている。

そして、両脇のホルスターに仕舞い込んでいた銃を引き抜くと、あの影魔(ファントム)めがけて走り出した。


「ネルファー!!!お前は絶対私が殺してやる」

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