弱者の鉱石
俺たちが、再び中央エリアに戻ると実験が開始されていた。
あの中央に存在するショーケースの中に先ほどの子どもたちは入れられていた。
子どもたちは、この後何が起きるのかをわかっているらしく、天に祈りを捧げている。
白衣を着た研究者たちが集まり始め、大装置の最終調整を行っている。
その中のリーダーのような研究者が指示を出し、その装置が起動し始める。
次第にその大装置の稼働とともにショーケース上部に光の球体のようなものが生まれる。その球体は、側面に雷のようなものを宿しバチバチと音を響かせた。
その出来事は、唐突に起こった。
不意をつくようのその光の球体から一本の光の線がショーケース内に落ちる。
と同時にショーケースの中は、全方向真っ赤に染まる。
研究員が装置を停止させ、その光の球体は消滅した。
俺たちは、何が起こったか理解できていない。
とにかくわかっているは、目の前の子供達が殺されたという事実だけである。
俺は、急激な吐き気に襲われる。
こんなこんな残酷なことがあっていいのか。
アルディアの方を見ると、彼女もその残酷さに動けずにいた。
それは、ザックも同様であった。
リーダー格の男はショーケースの中に入り、地面に落ちている小さな”何か”を拾い戻ってくる。そして、その”何か”を他の研究員に預け別の場所に運ばせていた。
しかし、俺たちにはその”何か”が”何なのか”ということを残念なことに知っていた。
___あれは、赤い鉱石。エスト鉱石だった。
「ねえ、ザック。あれって…エスト鉱石じゃないよな?」
「あれは…残念だけどエスト鉱石だ。エリアス…」
「そんな…」
4人は、その残虐さに言葉を失う。
しかし、俺たちが驚かせるのは、それだけじゃなかった。
「そして、信じたくはないんだがおふたりさん…。あのリーダー格の男が、先生だ…」
俺とアルディアは、2人して、ザックの方を見る。
ザックも信じられないような表情をしている。
「でも、ブラック博士はエスト鉱石のことを否定していたはず。なのにどうしてこの実験に協力を」
「そんなの俺にもわからんーよ。でも、あれは先生のようで先生じゃない。あんな残虐な人じゃないんだ、本当は」
「じゃあ、あれは一体誰なの?」
謎が謎を呼び始める。
その謎は、より深い闇をも引き込む。
「みんな…嫌な予感がする。早く逃げたほうがいいよ」
レーチェがそういった途端、全身に恐怖を帯びる。
この感覚、俺は知っている。
あのセレーノで影魔に襲われた時、同じ感覚に襲われる。
銀霧がこの場に次第に立ち込め始め、大きな門が顕現しそこから1体のあの悍ましい影魔が姿を表す。
「よお、久しぶりだな。ネルファ」
「ああ、ようやくこっちの世界に戻ってこれたぜ」
驚いたことにその影魔は言葉を話し、そして次第に人間の形態へと変化を遂げる。
20代くらいの背広を着た青年に姿を変えた影魔はニヤリと笑う。
門は次第に閉門していき、銀霧も消えていった。
「やっぱり、この程度の銀霧じゃ狭間の門を完全顕現できないか」
「まあ、焦ることはなさ。じっくり痛ぶりながらこの世界を楽しもうぜ」
___あの喋る影魔はやばい。
俺の身体がSOSを発していたのだが、隣にいるアルディアの様子がおかしい。
彼女はいつも冷静であり、いっとき感情にも左右されないと思っていた。
しかし、今の彼女は違った。
怒りに駆られた表情をしている。
そして、両脇のホルスターに仕舞い込んでいた銃を引き抜くと、あの影魔めがけて走り出した。
「ネルファー!!!お前は絶対私が殺してやる」




