最初の1ページ②
___窓の外から月明かりが差し込む。
俺は、今日あった出来事によりなんだかうまく寝付けなかった。
色々とありすぐたものだ。
本の中から妖精が出てきたり、影魔という化け物が現れ襲われたり、その影魔を倒す少女と出会ったり。
俺にとっては、物語みたいな現実が今日にはあった。
なんで俺は、アルディアの提案をすぐに受け入れることができなかったのだろう。
俺は、影魔に襲われている時、実感したはずだ。
”力無き者”と”力有し者”の違いというものを。
俺は、登場人物の外にいる街人Aに過ぎない。
街人Aに過ぎないけれど、俺だってアルディアやレーチェと肩を並べ旅に出ている姿を夢見ちゃいけないのだろうか。
部屋の窓を開け、月をぼんやりと眺めていると、声をかけられる。
「エリアスくん。寝れないのかい?」
振り向くとレーチェがそこに立っていた。
「なんだか、目が覚めちゃってね。レーチェも?」
「まあ、そんな感じだよ」
レーチェは俺の隣に来て、月を見上げた。
「エリアスくん。君は、どうしたい?」
「どうしたいって何が?」
「このままでいたいか、こことは別のところに足を踏み入れたいかかな?」
レーチェが俺の方を見る。
隣にいるのもあって距離が近い。
「あたしはね、エリアスくんにはエリアスくんの役目があるような気がするんだ」
「俺の役目?」
「そう。だって君は、あたしのことをはじめて見つけてくれた人間だもん。最初にも言ったけど、視えるって大事なことなんだからね」
彼女は話を続ける。
「あたしはリュミルの意志を継ぐ者を探し出すという役目がある。アルディアちゃんは影魔を殲滅するという使命がある」
「俺にはなんもそういった運命のしがらみはないよ」
「しがらみはないけど、あたしとの”縁”が生まれたよ。君は、力を持っていない人間。だけど、あたしを助けようとしてくれた。あたしを守ろうとしてくれた。それが、私にとってどんなに嬉しかったか…」
俺は、彼女の方を振り向いた。
レーチェは興奮したように話していたが、自分が何を言っているのかを理解したのか、恥ずかしそうに頬を赤らめる。
「だからね、もしもだよ…もしもエリアスくんがいいっていうのなら、あたしたちの旅に一緒に来てほしい」
俺は、情けない人間だと思う。
彼女からのその言葉がなければ、多分今までと同じ選択肢をとっていただろう。
物語の始まり方とは、どんな物語にも勇気をくれるきっかけがある。
だから、このレーチェのお願いが僕の物語の1ページ目を刻む勇気を与えた。




