物語みたいな出来事③
___貴方、怪我はない?
そう、視線の先にいた女に声をかけられる。
白銀の髪の少女は、俺よりも少し身長が低く動きやすいように改良されたブラウンチェックのロリータ服を身に纏っている。
彼女は、こちらに歩み寄りながら手に持っていた2丁の銃をホルスターにしまい、俺に手を差し伸べてくる。
「立てる?」
俺はその手を取り、立ち上がる。
「君のおかげで、助かったよ」
「礼には及ばないわ。これが私の使命だから」
この子もレーチェと同じような目的を持っているということか。
レーチェ?
俺は、ふと彼女のことを思い出し、倒れ込んでいるレーチェの駆け寄る。
「おい。レーチェ。大丈夫か?」
「えへへ。ちょっと痛いだけだから平気平気。ちょっと1人で起き上がりの辛いから手を貸してくれるかい?」
そういい、俺は彼女を起き上がらせる。
レーチェは、起き上がると目の前に転がっている影魔の死骸を確認する。
「とりあえずは、2人とも生き延びる事ができたみたいだね。エリアスくん。」
「そうみたいだな。でも、こんなのはもう懲り懲りだ」
レーチェと話していると、あの少女がこちらに声をかけてくる。
「貴方”たち”は、いったい何者なの?」
「”たち”って、君もレーチェのことが視えるの?」
「視えはしないけど、断片的に声を聞く事ならできるの」
「なるほど…。俺は、エリアス。普通の人間だよ。視えないと思うけど、横にいる妖精がレーチェ。俺たちは、偶然あの影魔と襲われ逃げているところに君が助けられた。改めて礼を言うよ」
「助けられたのは、偶然だったわ。貴方が、無謀ながらその影魔に立ち向かった。それによって生まれた時間によって私は、あいつを倒すことができたのよ」
俺のしたことは、無駄ではなかったのか。
俺は、少し誇らしく思えた。
力の無い俺にも”何か”ができたのだから。
「そういえば、君の名前は…」
「私の名前は、アルディア=F=ヴァーライン。みんなは、アルディアって呼ぶわ」
「じゃあ、アルディア。君はこの街の人じゃ無いみたいだけど、どうしてここに?そもそも何で影魔を知ってる?」
「ヴァーラインの血族は、昔からある脅威から世界を救うために使命を継承しているの。その使命とは、影魔を殲滅させるいう使命を」
彼女は、言葉を続ける。
「この世に生きている者たちは、マイナスなエネルギーを常に放出している。それを浄化しているのが、始まりの樹。名前くらい聞いたことあるでしょ?」
「聞いたこともあるも、この世界を守護するっていう伝説の古樹の名前じゃないか」
「そうそれ!その樹は、今も存在するの。で、始まりの樹が浄化できないほど、一気にマイナスエネルギーが放出されるとある現象が起きるの」
「ある現象?」
「その場所に銀霧が侵食し始め、どこからとも無く巨大な門が出現する。その門の名前が、狭間の門。こちらとあちらの境界線を曖昧にし繋げてしまう門。その門を潜り抜け、影魔はこの世界にやってくる」
「それが本当だとしたら、この街にもその門が出現しているってこと?」
俺に再び緊張が走る。
もし、まだ門が開門している状態なら影魔は、まだ近くに潜んでいる可能性がある。
「安心して。貴方たちがあいつと戦っている時に探したけど、門はこの街に存在しなかった」
ひとまず安心した。
この状況でまた襲われでもしたら、今度は確実に命はないだろう。
レーチェは俺から離れ、ゆっくりと影魔の死骸に近づき、”何か”を手にとる。
「人間は、よくこんな悍ましいモノを作り出したね」
「悍ましいモノ?」
俺は、レーチェが手に持っていた首輪のようなモノを目にする。
「エリアスくん。この首輪には”使役の魔法”が掛けられてる」
「ということは…あの影魔は誰かに操られていたってこと?」
「そういうことになるね。人の域を超えた力は、のちに自らを滅ぼすということがわからないのかな…」
レーチェは、残念そうにそう呟いた。




