物語みたいな出来事②
俺の頭上にいた影魔は、俺に襲いかかってくる。
俺より先に気がついたレーチェが俺を押し出し、なんとかその攻撃をよろめきながら回避する。
その攻撃を避けれたことに安堵するよりも俺は、すぐに影魔との距離をとる。
「…助かった。ありがとう」
「お礼は、この状況をなんとかできたらいくらでも言ってもらうからね」
「で、この状況をどうにかできる方法はあるのか?」
「足止めくらいはできるけど…。多分、どちらかはやられるかな」
と少し困った顔をしてこちらを見てくる。
両方救われる選択肢はないのかよ。
俺は、再び思考する。
どうすれば、この状況を打開できるのか。
俺が知識として持っている情報の中にその突破口があるはずだ。
「エリアスくん。君は逃げて。ここはあたしがなんとかしてみせるから」
2人で助かる方法を思考している中、レーチェが先に結論を出していた。
「そんなのは、ダメだ!何か…何か方法があるはずなんだ」
「力無き者を守れるのは、力を持っている者だけだよ、エリアスくん」
なんて表情をするんだよ。
___バイバイ。
そういうと彼女は、あの影魔に向かって駆け出した。
俺は、手を伸ばした。
先ほどまで掴んでいた彼女の手を。
しかし、もうその手は、振り解かれ掴む事ができない。
彼女は、片手を相手の方に向け、魔法を発動する。
___妖精魔法ソニックウィンド。
音速の刃を飛ばす妖精にしか使えない魔法。
その見えざる刃は、影魔の左腕を飛ばし、切り取られた腕が地面に落ちる。
影魔に痛みがあるのかそれは俺にはわからないが、明らかにレーチェを標的にした目つきをしているのは外野の俺にもわかった。
「エリアスくん!何してるの!!あたしが時間稼いでる間に逃げて!」
彼女は目の前の影魔から視線を外していないが俺に向かって叫ぶ。
その瞬間、影魔は、落ちていた左腕を取るなり、レーチェに向かって投げる。
レーチェは、その投石のように繰り出された左腕を防御壁のような魔法で対処するが、それはただの目眩しであり、背後をとった影魔は、彼女の背中に一撃を喰らわせる。
レーチェが生み出していた防御壁のようなものは、全身を包むようなものではなく、任意で提示したエリアに防御壁を生み出すものだったらしい。
攻撃を喰らった彼女は、近くのガス灯まで吹き飛ばされてしまう。
なんとか起きあがろうとするが、さっきの一撃が深く動けそうにない。
ゆっくりと着実に彼女を仕留めようと影魔は近づく。
___このままじゃ、レーチェが死ぬ。
俺は、走り出した。
思考をとっぱらい、何も策は無く、ただガムシャラにあの影魔に向かって走る。
彼女を救いたいそう思った。それだけが俺を動かした理由だった。
俺は、レーチェと影魔との戦闘で破壊されたガス灯の破片を手に取り、刃物のようにして攻撃を繰り出す。
影魔の背中にその刃物もどきが突き刺さる。
一瞬の間。
この間が、とても長く感じた。
走馬灯とはこういう体験のことをいうのかもしれない。
つまり、俺の力無き者の攻撃は意味がなかった。
影魔は、背後を振り返る
俺は、刺さっていた刃物もどきを手放し、逃げようと走り出そうとするが、逃げ出すことも許されなかった。
影魔は、俺の後頭部を人間から生み出された力とは到底考えられない力で掴み、捕獲する。
周りの景色がゆっくり流れていく。
倒れているレーチェが俺に何か叫んでいるが、何を言っているかわからなかった。
ごめん、やっぱり逃げればよかったかな。
所詮、力が無い人間には、何もできないのだろう。
___ああ。俺は、物語の登場人物みたいにはなれない。
全ての覚悟を決めた時、目の前のやつが、俺の首筋を喰ら付こうとする。
その瞬間、どこからか銃声が鳴り響く。
俺の首筋を食らいつこうとした影魔の額に風穴が2つ開き、倒れ込む。
地面に落とされた俺は、その銃声が聞こえた方に視線を向けた。
その視線の先には、2丁の銃を構えている少女がそこに立っていた。




