物語の始まりには出会いあり⑥
「あんた、何やってるの?」
そう、写本室に現れたフィーネにと問いかけられた。
「いや、こいつが俺に離れないから…」
「はあ?何言ってんの?あんた以外誰もいないじゃない」
「いやいやいや、いるだろ。俺の足元に羽の生えた人間が」
「エリアス。一度お医者様に診てもらった方がいいわ、きっと。とりあえず、散らばってる本は片付けておいてね」
部屋を見渡すと、この妖精が縋り付いてつき暴れた結果、部屋の本はまた散らばり落ちていた。
フィーネは、写本室を出ていく。
___フィーネには視えていない?
俺は、改めてレーチェを視る。
確かに、この妖精は目の前にいるのだ。それは、間違いない。
「ね?あたしのことは視えないし、声も聞こえてないでしょー?」
「そうみたいだな」
「ねえ、お願い。一緒に人探ししてよー。してくれるって言うまで、この腕は離さないからね!」
と妖精らしからぬ、言動をとる少女。
俺は、ため息を漏らす。
「わかったよ…。考えておいてやる。でも、まだ、手伝ってやるとは、決めたわけじゃないからな」
「ありがとうー!!!エリアス、君は最高の人間だよ!」
「そりゃ、どうも」
ただ、”考えてやる”と言っただけだが、彼女は大喜びした。
俺は、再び散らばってしまった本を拾い始める。
「で、そのリュミルの意志を継ぐ者ってなんなだよ」
「君は、知っているだろう?”堕ちた妖精”という昔昔話を」
「ああ、知っているよ。妖精に愛された少年と妖精姫が銀霧によって滅亡しかけたこの世界を救済する作り話だろ?」
「正解!でもねあれは、作り話じゃない。本当に起きた出来事なんだ。さぁ、歴史体験の時間だよ、エリアスくん!」
そういうと、彼女は俺の額にトンっとデコピンをした。
その瞬間、俺の何故か”空の上”にいた。
何で空の上に?
このままでは落ちるそうなんとか危機を脱しようと思考を巡らせる。
すると、隣からくすくすと笑い声が聞こえてくる。
「エリアスくん!慌てすぎだよー。安心して、落ちもしないし死んだりしないから」
そう俺に声をかけてきたのはレーチェだった。
「いったいなんなんだよ」
「さっきも言ったじゃん。”歴史体験”って。ここは、1000年以上昔のラディウスだよ。君にあの昔昔話を目撃してもらうから!」
そういうと、彼女は指を鳴らす。
次の瞬間、再び場所は変わる。
周りは、銀霧に覆われており、目の前にある村は、どこかしこから火の手が上がっていた。
「ここは?」
「リュミルが住んでいた村だよ。行こうか」
俺とレーチェは、村の中に進んでいくにつれてこの”銀の霧”は濃くなっていく。
何かが俺の横を通り過ぎた気がした。
そう思うや否や、またその感覚に襲われる。
その瞬間、目の前にあれはなんと表現していいのかわからないが、そいつが霧の中から現れ、俺の横を通り過ぎていく。
「何だよ、あれは…」
「あれは、影魔だよ。銀霧と共にこちらの世界に現れる化け物」
そう彼女は言うと、霧の向こう側を指差す。
「そして、これが全ての元凶。狭間の門。この門を潜りあの化け物たちはこのラディウスにやってくる」
彼女は”2度目”指を鳴らす。
次に対面したのは、松明を手に取り倒れそうになりながらも銀霧を払っている少年とその少年を支えている妖精の少女の姿だった。
「あの少年が、リュミル!そして、それを支えているのが妖精姫エディリーヌ様」
俺は、彼らが終わりまでの出来事を目撃する。
世界が救われ狭間の門が閉門される瞬間を。
彼女は”3度目”指を鳴らす。
そこは、さっきの場所とは違う雪に覆われた世界だった。
そこには、見覚えのない少女と見知らぬ妖精が一緒にいた。
その2人もリュミルとエディリーヌ同様に最終的に世界を再び救う。
彼女は、”4度目”の指を鳴らす。
再び知らない地にて、少年と妖精少女が世界を救う。
それを指を鳴らすたびに目撃するエリアス。
指を弾く音が聞こえる。
すると、今度は写本室に戻ってきていた。
「今まで見てもらったのは、あたしが記憶!この世界を救うために立ち上がる人間をリュミルの意志を継ぐ者と呼称しているの」
俺は、目まぐるしい記憶の旅に疲れたのか、椅子に腰をかける。
「俺が、そのリュミルの意思を継ぐ者を探さないと今回この世界はどうなる?」
目の前の妖精は、真剣な眼差しで俺の問いに答える。
「この世界は、確実に滅亡する。だから、君の力を借りたいんだ、エリアスくん」




